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子守唄~序章~
しおりを挟むこの物語をお聞きなさい。
この物語をかたりなさい。
この物語をお聞きなさい。
この物語をかたりなさい。
むかし狂った男がおりました。
男はなにももとめずにほしがらずに
ただ生きておりました。
もとめるものなどなにもない。
ほしいものなどなにもない。
さびしさもない男は毎日そう言っていました。
けれど、ある日、男はもとめるものができたのです。
ほしいものができたのです。
それは太陽にあいされてかがやくひとりの少女。
笑顔をしらなかった男は笑うことをしりました。
楽しさをしらなかった男は楽しいということをおぼえました。
男は少女に愛をささやきました。
はじめはこまっていた少女も男のまえでは笑顔になるようになりました。
いっしょにいてほしいとさしだした手を、少女はとりました。
狂った男は、もう狂ってはいませんでした。
少女がいれば狂わない。
だからこそ男はおそれました。
少女がいなくなったときを。
でも、少女はどこにもいきませんでした。
ずっとずっと男のそばにいたのです。
男のそばにいつづけたのです。
この物語をお聞きなさい。
この物語をかたりなさい。
この物語をわすれなさい。
『作者 不明』
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