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1話のみ
陽菜と美月の場合
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どこにでもあるような高校の、どこにでもあるような授業風景。その中で窓側の一番後ろの席に座る"私"遠野美月は、廊下側一番前の席に座る沢田陽菜を見つめていた。化学の授業だが、何も頭に入ってこない。こんな状態が一週間ほど続いている。全て席替えのせいだ。
四月、担任は二か月に一度席替えを行ってよいと言った。そして六月、一度目の席替えが行われていた。その結果がこれだ。まだ出席番号順の初期配置の方が近かった。
とは言っても、沢田さんとは決して仲が良いわけではない。一方的に好意を持っているだけだ。最初は入試の日、筆箱を開けたときだった。
「あっ。消しゴム忘れた……」
思わず口に出してしまった。すると、
「良かったらどうぞ。貰い物なので返さなくていいですよ」
目の前に消しゴムが差し出された。塾の名前が入ったカバーが着けられた新品だが、そんなことはどうでもいい。綺麗な声。それだけが印象的だった。
次は入学式のとき。新入生代表で壇上に立った黒髪ロングの美人が口を開くと、消しゴムをくれた彼女だとすぐに分かった。名前は"さわだ ひな"というらしい。
それ以来、彼女に何とか声をかけたいと思った。しかし、私と違い交流も多く、誰とでも裏表なく接する彼女にいざ話しかけようとすると足が震えた。
「と……のさん……、遠野さん」
名前を呼ばれてハッと我に返る。授業はいつの間にか終わっており、目の前には沢田さんがいた。
「校内アンケート終わった? まだ出してないの遠野さんだけなんだけど……」
「ごっ……ごめん!」
校内アンケートとは学校内の風紀や授業などを生徒が評価するものだ。とっくに終わっていたが、提出を忘れていた。わざわざ教室のもっとも遠いところに来てくれたのだと思うと申し訳なく思う。カバンの中からプリントを取りだし、沢田さんに渡す。
「ありがとう」
彼女は私からプリントを受け取り、自分の席に戻ろうとする。私はその背中に声をかけた。
「沢田さん!」
「?」
沢田さんは軽く首をかしげている。
「入試のとき、消しゴムくれたよね? ずっとお礼が言いたくって。……ありがとう」
彼女は優しく微笑みながら綺麗な声で言った。
「どういたしまして」
四月、担任は二か月に一度席替えを行ってよいと言った。そして六月、一度目の席替えが行われていた。その結果がこれだ。まだ出席番号順の初期配置の方が近かった。
とは言っても、沢田さんとは決して仲が良いわけではない。一方的に好意を持っているだけだ。最初は入試の日、筆箱を開けたときだった。
「あっ。消しゴム忘れた……」
思わず口に出してしまった。すると、
「良かったらどうぞ。貰い物なので返さなくていいですよ」
目の前に消しゴムが差し出された。塾の名前が入ったカバーが着けられた新品だが、そんなことはどうでもいい。綺麗な声。それだけが印象的だった。
次は入学式のとき。新入生代表で壇上に立った黒髪ロングの美人が口を開くと、消しゴムをくれた彼女だとすぐに分かった。名前は"さわだ ひな"というらしい。
それ以来、彼女に何とか声をかけたいと思った。しかし、私と違い交流も多く、誰とでも裏表なく接する彼女にいざ話しかけようとすると足が震えた。
「と……のさん……、遠野さん」
名前を呼ばれてハッと我に返る。授業はいつの間にか終わっており、目の前には沢田さんがいた。
「校内アンケート終わった? まだ出してないの遠野さんだけなんだけど……」
「ごっ……ごめん!」
校内アンケートとは学校内の風紀や授業などを生徒が評価するものだ。とっくに終わっていたが、提出を忘れていた。わざわざ教室のもっとも遠いところに来てくれたのだと思うと申し訳なく思う。カバンの中からプリントを取りだし、沢田さんに渡す。
「ありがとう」
彼女は私からプリントを受け取り、自分の席に戻ろうとする。私はその背中に声をかけた。
「沢田さん!」
「?」
沢田さんは軽く首をかしげている。
「入試のとき、消しゴムくれたよね? ずっとお礼が言いたくって。……ありがとう」
彼女は優しく微笑みながら綺麗な声で言った。
「どういたしまして」
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