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恋花と愛那
恋花と愛那の場合 2
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入学式後、事前に知らされていた自分のクラスに向かう。同じ中学校からの進学者はおそらくいない。不安となんとかなるだろうという気持ちを半々に''1-2''と書かれた教室に足を踏み入れる。教室に入ると、すでに十数名ほどの生徒がいた。ほとんどが何らかのプリントを見ている。黒板のほうを確かめると、
『各自プリントを1枚ずつ取り、自分の席で目を通しておくこと』
と書かれている。プリントを四種類取り、黒板に掲示されていた自分の席に着く。プリントにざっと目を通すが、これというほど大事そうなものは無い。それらはこれから担任が持ってくるのだろう。
騒がしくなったと思い、顔を上げると教室に生徒が増えている。知ってる顔はいないな。そんな事を考えていると目の前に人が現れた。
「えーと、大沢さんで合ってる?」
「あ、うん」
急な返事でそっけなくなってしまった。気にする様子もなく、彼女は私の真後ろの席に座った。
戸の開く音がする。OLのような格好をした若い女性が教壇に立った。両手には重そうな紙袋を持っている。
「一年二組担任の北条香梨だ。担当は生物だ、よろしく。早速だが配るもんあるから、出席番号順に取りに来てくれ」
冷たそうだという印象を受けた人が多いだろうが、私はサッパリとしていそうでむしろ好感を持った。
北条先生はすぐにプリントを配布し始めた。こちらは個人情報などの記された重要なもののようだ。生徒が全員着席したことを確認すると、プリントの説明を簡潔に行い始めた。
「ねえ」
背中を指でつつかれて、小さく声をかけられた。私は体を少し回して後ろを見た。
「ボールペン持ってない?」
持ってきていないのか、色々と入り用になるのは分かっていただろう。などと内心思いながら、
自分の持っていた黒のボールペンを彼女に渡した。私は筆箱から三色ボールペンを取り出す。その場でいくつかのプリントに必要事項を記入して提出させられた。
「今日はこれで終わり。三日後から授業だから遅れないように」
といって先生は教室を出て行った。流石にそっけなさすぎではないかと思う。教室がまた騒がしくなる。また背中をつつかれる。先ほど貸したボールペンを返してくれるのだろうか。
「これも何かの縁だし、少しお話しない?」
「え、あぁ……。良いけど終わったならボールペン返してくんない?」
「あ! ごめんごめん。ありがと~」
何かの縁とはどいうことだろう。全てそちらから話しかけてきて一方的にこちらに縁を作っただけではないのか。ボールペンを受け取りながらそう思う。
「あたし、岡田愛那。大沢恋花ちゃんだよね? よろしく~。」
「よろしく。''こいばな''じゃなくて''れんか''ね。」
「え!? アハハごめんね~」
ドヤ顔で人の名前を間違えた挙句、バカにしたような謝罪。この女は頭が弱いのか、たちの悪い天然なのだろうか。結局、そのまま一緒に帰ることになった。出身中学とか、趣味とか、好きな食べ物とかの他愛のない話をしながら最寄り駅に向かう。駅も目の前のところで岡田愛那が聞く。
「恋ちゃんはどっち方面?」
「私は電車使わないから」
「じゃあどこなの?」
「あっちの方」
いきなりニックネームをつけられたことに内心困惑するが聞き流し、左の方に指を向けながら言った。言葉で説明するのが面倒だったのだ。
「すごーい! じゃあ家近いんだ。今度遊びに行っても良い?」
「休日じゃなければ」
駅の横にある踏切が鳴り始める。
「あ! 電車来ちゃう。じゃあね、恋ちゃん」
「じゃあ、また三日後」
彼女は数回大きく手を振った後、小走りで駅に入っていった。
「岡田愛那か……。」
私は無意識に彼女の名前をつぶやいていた。あんな子が近くにいたら三年間退屈はしなさそうだ。
『各自プリントを1枚ずつ取り、自分の席で目を通しておくこと』
と書かれている。プリントを四種類取り、黒板に掲示されていた自分の席に着く。プリントにざっと目を通すが、これというほど大事そうなものは無い。それらはこれから担任が持ってくるのだろう。
騒がしくなったと思い、顔を上げると教室に生徒が増えている。知ってる顔はいないな。そんな事を考えていると目の前に人が現れた。
「えーと、大沢さんで合ってる?」
「あ、うん」
急な返事でそっけなくなってしまった。気にする様子もなく、彼女は私の真後ろの席に座った。
戸の開く音がする。OLのような格好をした若い女性が教壇に立った。両手には重そうな紙袋を持っている。
「一年二組担任の北条香梨だ。担当は生物だ、よろしく。早速だが配るもんあるから、出席番号順に取りに来てくれ」
冷たそうだという印象を受けた人が多いだろうが、私はサッパリとしていそうでむしろ好感を持った。
北条先生はすぐにプリントを配布し始めた。こちらは個人情報などの記された重要なもののようだ。生徒が全員着席したことを確認すると、プリントの説明を簡潔に行い始めた。
「ねえ」
背中を指でつつかれて、小さく声をかけられた。私は体を少し回して後ろを見た。
「ボールペン持ってない?」
持ってきていないのか、色々と入り用になるのは分かっていただろう。などと内心思いながら、
自分の持っていた黒のボールペンを彼女に渡した。私は筆箱から三色ボールペンを取り出す。その場でいくつかのプリントに必要事項を記入して提出させられた。
「今日はこれで終わり。三日後から授業だから遅れないように」
といって先生は教室を出て行った。流石にそっけなさすぎではないかと思う。教室がまた騒がしくなる。また背中をつつかれる。先ほど貸したボールペンを返してくれるのだろうか。
「これも何かの縁だし、少しお話しない?」
「え、あぁ……。良いけど終わったならボールペン返してくんない?」
「あ! ごめんごめん。ありがと~」
何かの縁とはどいうことだろう。全てそちらから話しかけてきて一方的にこちらに縁を作っただけではないのか。ボールペンを受け取りながらそう思う。
「あたし、岡田愛那。大沢恋花ちゃんだよね? よろしく~。」
「よろしく。''こいばな''じゃなくて''れんか''ね。」
「え!? アハハごめんね~」
ドヤ顔で人の名前を間違えた挙句、バカにしたような謝罪。この女は頭が弱いのか、たちの悪い天然なのだろうか。結局、そのまま一緒に帰ることになった。出身中学とか、趣味とか、好きな食べ物とかの他愛のない話をしながら最寄り駅に向かう。駅も目の前のところで岡田愛那が聞く。
「恋ちゃんはどっち方面?」
「私は電車使わないから」
「じゃあどこなの?」
「あっちの方」
いきなりニックネームをつけられたことに内心困惑するが聞き流し、左の方に指を向けながら言った。言葉で説明するのが面倒だったのだ。
「すごーい! じゃあ家近いんだ。今度遊びに行っても良い?」
「休日じゃなければ」
駅の横にある踏切が鳴り始める。
「あ! 電車来ちゃう。じゃあね、恋ちゃん」
「じゃあ、また三日後」
彼女は数回大きく手を振った後、小走りで駅に入っていった。
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