立てば芍薬、座れば牡丹、歩けば咲くは百合の花

鍵谷 雷

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二葉と早苗

会長と副会長の場合 2

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 四月四日、ついに入学式が明日に迫った。三階の生徒会室で二人の生徒が話している。

「ふー、いよいよ明日ね。しろちゃん」
「と、言っても私達はほとんど何もしてないが」
「そうね、準備は先生方やボランティアがやってくれたのはありがたかったわ」

  生徒会の仕事と言えば、生徒会長からの言葉と、式が終わったあとの誘導くらいだ。

「しかし、明日が終わればすぐに新歓や部活紹介がある。授業も始まるし忙しくなるぞ」
「三月半ばからコツコツ準備しておいて良かったわね」
「ああ、出来れば今日中に終わらせてしまいたいな」

  如月早苗は二週間前に城田二葉から言われたことがいまだに気にかかっていた。決して詮索したいわけでは無いが、何かを抱えているなら話して欲しいとは思う。

「……なえ……早苗?」
「はっ、はい!?」
「大丈夫か?調子が悪いなら帰っていいんだぞ」
「あ、いえ、大丈夫よ。ちょっと考え事していただけだから」
「なら良いが。明日、休まないでくれよ」

  こう言って心配してくれる。「あなたのせいよ」なんて言ったらどうなるのだろうか。はぐらかされる?それとも何か話してくれる?複雑化した感情が早苗の中で渦巻く。
  二葉はとっくに仕事に戻っていた。申し訳ないと思いながら、時分も仕事に取りかかる。

「終わったー」
「お疲れさま、しろちゃん」
「お疲れ、ありがとな」
「二人で何とかなったわね」
「ああ、皆のイベントが重なると聞いたときは驚いたな」

  他に書記が一人、会計が二人いるが、彼女らは部活や旅行などが重なりほとんど参加出来なかった。


  新歓、部活紹介のプログラム等を職員室に提出して、二人は学校を出た。

「早苗、何か食べていかないか?」
「それは良いわね」
「駅前の喫茶店はどうだ?  うちの星女生からも人気が高いらしいぞ」
「あそこ前から行ってみたかったの」
「決まりだな」

  駅前の小さな喫茶店に着いた。席は半分ほど埋まっており、空いている二人用の席に座る。店員がお冷やとメニューを持ってきてくれた。

「後輩の話だと、アップルパイとチョコパフェが美味しいそうよ」
「ふうん、じゃありんごのパフェにするかな」
「そんなのがあるの?」
「ほら」

  メニューを指差す。チョコパフェの二つ下にりんごパフェと書かれていた。他にも、いちごやバナナのパフェもあるらしい。
  早苗が店員を呼んだ。

「ご注文はお決まりですか?」
「ミルクレープとコーラフロートをお願いします」
「りんごパフェ一つ」

  オーダーを聞いた店員は三品を復唱した後、そそくさと裏へ戻っていく。

「……ねえ、しろちゃん。何か悩み事とかある?」

  早苗はいつかの事を意識しながら、かつ自然に切り出した。

「あるよ、沢山ある」
「例えば?」
「明日の昼食から将来の進路まで」
「それは多いわね」

  冷めた笑いの後、少しの間沈黙が流れた。しかし、店員がすぐにそれを破ってくれる。

「お待たせいたしました。りんごパフェ、ミルクレープ、コーラフロートでございます」

  二葉はパフェを黙々と食べ始めたが、三分の一ほど無くしたところで

「少し食べるか?」

と聞いた。早苗は角切りのりんごとアイスをまとめてスプーンでひとすくい貰う。

「しろちゃん、口開けて」
「ん?」

  口を開けた二葉にコーラフロートを一口つっこむ。驚きの表情が満足気な顔に変わる。

「空が赤いわね」
「そうだな、ぼちぼち行くか」

  お皿を空っぽにして二人は席を立った。二葉は一番、早苗は三番のホームに向かう。

「じゃあ」
「また明日ね」

  軽く手をあげた二葉に対して、早苗は小さく手を振った。
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