立てば芍薬、座れば牡丹、歩けば咲くは百合の花

鍵谷 雷

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二葉と早苗

会長と副会長の場合 3

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  六月、進路に関する個人面談が行われる。面談は四月にもあったが、その時はやりたいこと、行きたいとこは決まっているか、という程度を軽く聞かれただけだった。しかし、今回は違う。生徒の希望を詳しく聞き、成績という生々しい事実を踏まえて具体的に考えることになる。

「早苗、面談はいつだ?」
「今日の三時半からよ」

  時計を見ながら言う。二葉は驚きながら続ける。

「初耳だぞ」
「だって聞かれてないじゃない」
「まあ、そうだな……」

  そもそも、二葉は早苗の進路など聞いたことが無かったことを思い出した。そして、早苗も二葉に対してそういう話を振ったことはない。
  二時五十分のチャイムが鳴る。普段なら五限目の終わりの時間であるが三年の授業はお昼までだった。

「おっはよーございまーす!」

  それから少しして、元気な声とともに生徒会室の扉を開けるものがあらわれた。生徒会書記で二年生の東海林しょうじ桃子だ。星女の生徒会OGの姉がいるそうだが、三年前のことで二葉と早苗も知らない。

「こんにちは、桃ちゃん」
「おう、ふすまちゃん」
「しろちゃん先輩、ふすまじゃなくてしょうじですよ~」
「しろちゃんって呼ぶな」

  半年間続くやり取りの終わりを見計らって早苗が声をかける。

「桃ちゃん、来てすぐに悪いのだけれど、この仕事お願い出来る?  私、これから進路面談なの」
「お任せください!  如月先輩が帰ってくるまでに終わらせてみせます!」
「無理しないで良いのよ、急ぎじゃないから。それより丁寧にお願いね。」
「はい!  先輩も頑張って下さい!」
「うるさいぞ、ふすま」
東海林しょうじです!」

  軽く笑いながら早苗は生徒会室を出ていく。二葉は気にも止めずに仕事に戻っていた。

「しろちゃん先輩はもう面談終わったんですか?」
「いや、まだだ」

  『しろちゃん』という呼び方を気にもせず返事をする。

「如月先輩と同じ大学に行こうとか考えてるんですか?」
「いや、別に」

  依然として頭を下げたまま答える。

「二人って、実はそんなに仲良くない……?」
「口に出てるぞ」
「聞こえるように言ったんですよ」
「いいから手を動かせ」
「さっきのが最後ですから、答えてくださいよ~」

  二葉は顔を上げて天井を見つめる。桃子は興味津々に会長の返事を待つ。

「学校で一番話してるのは早苗だな」
「なんでちょっと間があったんですか?  というかその程度ですか?」
「……別に良いだろ」

  ここまで全く変わらなかった二葉の表情が少し緩む。怒っているような、照れているような顔だ。
  桃子が壁にかかっている時計を見ながら言う。

「如月先輩そろそろ戻ってきますかね?」
「どうだろうな。まあ、早苗がどこに行って何をしようと私たちには関係ないだろ」
「あー、またそうやって冷たいこと言う!」
「トイレに行ってくるけど、ちゃんと仕事しとけよ」

  二葉ははそういった後、桃子に睨まれながら生徒会室を出た。扉を開けてすぐ、早苗と鉢合わせた。

「お、早苗。面談お疲れ」
「お待たせ。私も仕事に戻るわね」 

  軽く言葉を交わした後、二人は反対方向へ歩いていった。
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