立てば芍薬、座れば牡丹、歩けば咲くは百合の花

鍵谷 雷

文字の大きさ
4 / 43
恋花と愛那

恋花と愛那の場合 4ー1

しおりを挟む
  六月になった。一学期の主なイベントは終わり、浮かれた空気も薄くなる。残すは定期試験だけとなった。

こいちゃ~ん、助けてくださいお願いします!」
「そんなに叫ばなくても聞こえるから。で、今日は何?」
「テストだよ!  テ・ス・ト!」
「ああ、そういうこと」

  愛那曰く、高校からは試験で平均点以上を採らないとお小遣いが無くなることを十分もかけて話した。今がお昼休憩でなかったら途中で話を遮っただろう。

「と、いうわけで!  明日は勉強会しまーす!」
「なにが、というわけでよ」
「良いじゃん、恋ちゃんの家でもうち来てもいいからさ」

  軽くため息をつき、愛那の家に行かせてもらう方を選ぶ。休日に他人を招くことを大沢家はあまり好まない。働きづめの両親が休めるという時に自分の勝手でうるさくするのは申し訳ないと思う。


  翌日、待ち合わせした駅に到着するとすでに愛那がいた。こちらに気づき子どものように走ってくる。

「あ!  恋ちゃん、おっはよー!」
「おはよ」
「ちょっとそこのスーパー寄っても良い?」
「良いよ」

  彼女は大量かつ様々なお菓子と、ペットボトルのジュースを買い物かごに入れた。恋花はそこで自分が手土産も何も持参していないことに気がつく。

「ごめん、お菓子とかそういうの何も持ってきてないや」
「いいよいいよ、気にしないで。あたしが頼んだんだから」

  愛那は笑いながらフォローする。流れるように商品をかごに入れながら、余計な道を通らずレジに向かう姿はいつもの岡田愛那からは想像出来なかった。
  スーパーから出て十分ほど歩くと、一軒家とマンションしかないような住宅街にだった。半歩前を歩いていた愛那が突然立ち止まった。

「この中にあたしの家があります!  どれでしょう?」
「遊ぶなら帰るから」

  恋花はわざとらしく来た道を戻ろうとする。

「待って、ごめん!  ここ!  私の家ここ!」

  二階建てらしき一軒家を指差しながら言う。外観はまだ綺麗で、白い外壁に目立った汚れはない。なぜか、愛那の家と思うと妙に納得出来た。

「さ、入って入って」
「お邪魔します」
「愛ちゃん、お帰り~!  あなたが"恋ちゃん"ね。いらっしゃい」

  ドアを開けるなりすぐに、優しそうな婦人が出迎えてくれる。白が混じった髪と顔のしわが目立つ。恋花は自分の母と祖母の間くらいだろうかと推測した。老けてはいるが、確かに遺伝子の繋がりを感じた。愛那の四十年後と言った感じだろうか。

「愛那の母の由紀恵です」
「大沢恋花です」

  由紀恵さんが微笑み、恋花は反射的に軽く頭を下げる。
  愛那がお構いなしに腕を引っ張ってくる。

「愛ちゃんのことよろしくね」
「え、ええ……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

モヒート・モスキート・モヒート

片喰 一歌
恋愛
主人公・翠には気になるヒトがいた。行きつけのバーでたまに見かけるふくよかで妖艶な美女だ。 毎回別の男性と同伴している彼女だったが、その日はなぜか女性である翠に話しかけてきた。 紅と名乗った彼女は男性より女性が好きらしく、独り寝が嫌いだと言い、翠にワンナイトの誘いをかける。 根負けした翠は紅の誘いに応じたが、暑い盛りと自宅のエアコンの故障が重なってしまっていた事もあり、翠はそれ以降も紅の家に頻繁に涼みに行くようになる。 しかし、妙な事に翠は紅の家にいるときにだけ耐え難い睡魔に襲われる。 おまけに、ほとんど気絶と言って言い眠りから目覚めると、首筋には身に覚えのないキスマークのような傷が付いている。 犯人候補は一人しかいない。 問い詰められた紅はあっさり容疑を認めるが、その行動の背景には翠も予想だにしなかった事情があって……!? 途中まで恋と同時に謎が展開しますが、メインはあくまで恋愛です。

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

クールすぎて孤高の美少女となったクラスメイトが、あたしをモデルに恋愛小説を書く理由

白藍まこと
恋愛
あたし、朝日詩苑(あさひしおん)は勝気な性格とギャルのような見た目のせいで人から遠ざけられる事が多かった。 だけど高校入学の際に心を入れ替える。 今度こそ、皆と同じように大人しく友達を作ろうと。 そして隣の席になったのは氷乃朱音(ひのあかね)という学年主席の才女だった。 あたしは友好的に関わろうと声を掛けたら、まさかの全シカトされる。 うざぁ……。 とある日の放課後。 一冊のノートを手にするが、それは氷乃朱音の秘密だった。 そして、それを知ってしまったあたしは彼女に服従するはめに……。 ああ、思い描いていた学校生活が遠のいていく。 ※他サイトでも掲載中です。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...