立てば芍薬、座れば牡丹、歩けば咲くは百合の花

鍵谷 雷

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恋花と愛那

恋花と愛那の場合 4ー2

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  由紀恵さんの言葉に生返事しか出来ず階段を昇らされる。二階の廊下の一番奥の扉に木の板が掲げられており、カラフルな色、ポップな字体で『愛那の部屋♪』と書かれている。

「これがあたしの部屋だよ!」
「思ったより綺麗……」
「ひどーい!」

  恋花が漏らした言葉は本音そのものだった。部屋には本や衣服が散乱しており、隅の方にはホコリがたまっているようなものを想像していたからだ。

「いや、ごめん。あんたの学校での生活態度からは考えられなくて……」

  机の中とロッカーには教科書とプリント類がぐちゃぐちゃと詰め込まれていて、その中から宝探しでもするかのように必用なものを取り出す。よく恋花も手伝わされていた。そのような光景が愛那の当たり前かと思っていたからだ。

「だって、片付けないとお母さんに怒られるもん!」
「そこは威張るとこじゃない」

  由紀恵さんが怒るところは想像がつかないが、穏やかな人ほど怒ると恐いともいう。学校での生活態度は家での反動なのかもしれない。

「で、何をどこから教えたらいいわけ?」
「理数系全部と英語をお願いします!!」
「素直に日本史と国語以外全部と言え。というか、生物化学だと生物とってないから教えらんないよ」

  試数学I、数学A、国語、英語、日本史は一年生全員が試験対象だが、理科系科目は選択式で、生物、物理、化学の中から二つ選ぶことになっている。愛那は生物と化学だが、恋花は物理と化学をとっていた。

「あ~、あたしも物理化学にしとくべきだった~」
「はいはい、どれからでも良いけどさっさと始めるよ」
「あ~い。じゃあ数学からお願いします!」

  愛那の集中力は大したものだった。ただし、最初の一時間だけだが。

「恋ちゃん、あたし疲れた!  遊びに行こう!」
「は?」
「ごめんごめん、そんなにマジで睨まないでよ~」

  一時間を過ぎた辺りでこのような愚痴が出てくるようになった。恋花は時間が経過するに連れて愛那が幼児後退しているように感じた。

「しょうがないなー。五時まで黙って勉強したら遊びにでも何でも好きなことしたげるから」
「本当!?」

  今は午後三時前。二時間の間集中が続くとは思わなかったが、少しでも静かになればと考えた恋花はこう提案した。愛那は少し考えるような素振りを見せたあと、ひらめいたという表情をして、

「じゃあ、お泊まり会したい!!」

と言った。 
  予想外の発言に、恋花の目と口は開きっぱなしだった。
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