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二葉と早苗
会長と副会長の場合 5
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「ふぅ……、終わった」
星女生徒会長、城田二葉はわざとらしく大げさに言う。生徒会室には自分以外に誰もいないからである。
副会長の早苗は祖父母の家に行っている。残りの生徒会メンバーをわざわざ呼ぶ必要も無いと思ったので、独りで仕事を進めていた。一息つくために生徒会室を出る。すると、見覚えのある顔に出会った。
「お、バスケ部の姫」
「あ、城田先輩。お疲れさまです」
彼女は島津絵美李。その可愛らしい見た目からバスケ部の姫と呼ばれる。去年委員会が同じだったこともあり、二葉と親しく話せる数少ない後輩だ。
「王子は一緒じゃないのか?」
「フランスに行ってます……」
その一言で彼女の気持ちが手に取るように分かる。
「今日は特別講習か?」
「はい」
「少し良いか?」
「え? はい、良いですけど」
絵美李からは緊張が伝わってくる。同じ委員会に所属していた当時はそれなりに会話をしていた。だが、その当時ですら二葉から話しかけるということはほとんど無かった。無愛想とすら思われていてもムリもない。そのような、上級生かつ生徒会長がいきなり話をしようと言い出すのだ。緊張するに決まっている。そのことは二葉自身にも分かっていた。
その一方で、今から自分が話したいことに関して、絵美李ほどの適任者はいないとも思っていた。
「コンビニ行こうか」
「はい……」
こんな時、早苗だったら上手く話題を切り出せるのだろう。いや、このような事を他人に相談するだろうか。すると、絵美李の方から話題を切り出してきた。
「もしかして、先輩も私と一緒ですか……?」
「ああ、多分ね」
「何か足りないんですよね」
「連絡のひとつでも入れればいいだけなのにな」
二葉は苦笑いしながら言葉を絞り出す。たったあれだけ会話の間にコンビニに着いてしまっていた。
「何か奢ってやるよ」
「そんな、いいですよ」
「気にすんな。呼びつけたのはあたしなんだからさ」
パピコのホワイトサワーを二人で半分こすることになった。
「良い子だな、ホントに。王子が羨ましいよ」
「素直に褒め言葉として受けとりますね」
そう言われて初めて皮肉ともとれることに気が付く。絵美李は既に気にも留めていないように口を開く。
「あ、そうだ。折角だから二人で写真撮りましょうよ」
「ツーショットを送りつけるのか」
「お互いに冗談で通じる相手だと分かるじゃないですか」
二人は写真を撮った。家に帰ってから送るという取り決めで別れた。
帰宅後、LINEで早苗とのトーク画面を開く。最後に連絡したのは五日前にした生徒会についてのものだった。早苗が旅行に行ってからは一度も連絡していない。
まず文章を考える。『バスケ部の姫とツーショット♪』と打って削除する。浮かれているようで気持ち悪い。
「ん……」
五分ほど悩んだ末に、無理せず今思っている一言を送ろうと決めた。写真にひとことを添えて送信のボタンを押した。
星女生徒会長、城田二葉はわざとらしく大げさに言う。生徒会室には自分以外に誰もいないからである。
副会長の早苗は祖父母の家に行っている。残りの生徒会メンバーをわざわざ呼ぶ必要も無いと思ったので、独りで仕事を進めていた。一息つくために生徒会室を出る。すると、見覚えのある顔に出会った。
「お、バスケ部の姫」
「あ、城田先輩。お疲れさまです」
彼女は島津絵美李。その可愛らしい見た目からバスケ部の姫と呼ばれる。去年委員会が同じだったこともあり、二葉と親しく話せる数少ない後輩だ。
「王子は一緒じゃないのか?」
「フランスに行ってます……」
その一言で彼女の気持ちが手に取るように分かる。
「今日は特別講習か?」
「はい」
「少し良いか?」
「え? はい、良いですけど」
絵美李からは緊張が伝わってくる。同じ委員会に所属していた当時はそれなりに会話をしていた。だが、その当時ですら二葉から話しかけるということはほとんど無かった。無愛想とすら思われていてもムリもない。そのような、上級生かつ生徒会長がいきなり話をしようと言い出すのだ。緊張するに決まっている。そのことは二葉自身にも分かっていた。
その一方で、今から自分が話したいことに関して、絵美李ほどの適任者はいないとも思っていた。
「コンビニ行こうか」
「はい……」
こんな時、早苗だったら上手く話題を切り出せるのだろう。いや、このような事を他人に相談するだろうか。すると、絵美李の方から話題を切り出してきた。
「もしかして、先輩も私と一緒ですか……?」
「ああ、多分ね」
「何か足りないんですよね」
「連絡のひとつでも入れればいいだけなのにな」
二葉は苦笑いしながら言葉を絞り出す。たったあれだけ会話の間にコンビニに着いてしまっていた。
「何か奢ってやるよ」
「そんな、いいですよ」
「気にすんな。呼びつけたのはあたしなんだからさ」
パピコのホワイトサワーを二人で半分こすることになった。
「良い子だな、ホントに。王子が羨ましいよ」
「素直に褒め言葉として受けとりますね」
そう言われて初めて皮肉ともとれることに気が付く。絵美李は既に気にも留めていないように口を開く。
「あ、そうだ。折角だから二人で写真撮りましょうよ」
「ツーショットを送りつけるのか」
「お互いに冗談で通じる相手だと分かるじゃないですか」
二人は写真を撮った。家に帰ってから送るという取り決めで別れた。
帰宅後、LINEで早苗とのトーク画面を開く。最後に連絡したのは五日前にした生徒会についてのものだった。早苗が旅行に行ってからは一度も連絡していない。
まず文章を考える。『バスケ部の姫とツーショット♪』と打って削除する。浮かれているようで気持ち悪い。
「ん……」
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