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二葉と早苗
会長と副会長の場合 6-1
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夏休みが終わった。生徒会は九月二十日に行われる生徒会選挙の準備に追われていた。会長の城田二葉、副会長の如月早苗、書記の東海林桃子、会計の伊東由羽と加藤陽子。夏休み前以来の生徒会総動員での仕事だ。
「桃ちゃん、そっちの準備は大丈夫?」
「はい! あとは演説の原稿を書くだけです!」
「そう、頑張ってね」
「ありがとうございます!」
桃子は生徒会長に立候補するので、現在は二つの意味で選挙の準備を行っている。
「まさか、ふすまが生徒会長とはなあ」
「東海林です! しろちゃん先輩に出来て私に出来ないわけないじゃないですか」
「誰がしろちゃんだ、シバくぞ」
そんなやりとりをしていると、生徒会室の扉をノックする音が聞こえる。
「すみません、選管ですけど」
「はーい」
早苗がすぐに対応する。候補者と応援演説者のリストがまとまったようだ。
「会長、確認とサインをお願いしますね」
「はいはい」
リストにサインが入る。これで候補者たちはPRを行えるようになったのだ。
「良かったな、次期会長」
「はい?」
二葉は桃子にリストを見せた。生徒会長への立候補者は一人しかいなかった。加えて言えば、争うのは書記の一枠を二人が争うだけだ。
「やったー!」
「甘いぞ、不信任の可能性もある」
「しろちゃん、後輩をいじめないの」
「調子に乗る後輩に釘刺しただけだ」
「ただいま戻りました」
職員室に用事で行っていた伊東が戻ってきた。二葉は彼女に声をかけながらリストを渡す。
「お疲れ。戻ってきたばっかで悪いんだけど、これコピーして広報委員に渡してきてくんない?」
「はい。あ、東海林さんおめでとうございます!」
「だからおだてるなよ……」
「?」
早苗が先程の会話を要約して説明すると、伊東は苦笑いした後、職員室前のコピー機に向かった。すぐさま五時を告げる鐘が鳴った。それに反応して二葉が口を開く。
「作業は六時までな」
「あと一時間ね。しろちゃん、帰りに少し時間ある?」
「ん、構わない」
その会話を最後に皆黙々と作業をこなしていった。あるのは必要な情報交換のみだ。二葉以外は他の委員会などとのやり取りのために奔走している。
十七時四十分、ちょうど全員が生徒会室にいるタイミングで、二葉が普段より少し大きな声で静寂を破る。
「本日の生徒会選挙準備はこれで終了とする。この調子なら明日には終わると思うから。じゃあ、お疲れ様」
「お疲れ様でしたー!」
いまいち締まらない会長の言葉に生徒会役員たちは元気よく挨拶を返す。
「少し早めにお開きにしたのは私のため?」
「部活終了組の下校と被るのが嫌だっただけだ」
「そう」
「それで? 何か話したいことでもあったんじゃあないのか」
「しろちゃん、進路決めた?」
「まあ考えてはあるが。早苗は国公立か?」
「多分......」
そこで会話は途切れる。二葉には早苗の言わんとすることは何となく理解が出来ていたが、こういう時にかける言葉が分からなかった。早苗は自分の気持ちを吐露しそうになったことに気がつき、その後の言葉に詰まっている。
二人はそのまま一言も交わすことなく、駅で別れた。
「桃ちゃん、そっちの準備は大丈夫?」
「はい! あとは演説の原稿を書くだけです!」
「そう、頑張ってね」
「ありがとうございます!」
桃子は生徒会長に立候補するので、現在は二つの意味で選挙の準備を行っている。
「まさか、ふすまが生徒会長とはなあ」
「東海林です! しろちゃん先輩に出来て私に出来ないわけないじゃないですか」
「誰がしろちゃんだ、シバくぞ」
そんなやりとりをしていると、生徒会室の扉をノックする音が聞こえる。
「すみません、選管ですけど」
「はーい」
早苗がすぐに対応する。候補者と応援演説者のリストがまとまったようだ。
「会長、確認とサインをお願いしますね」
「はいはい」
リストにサインが入る。これで候補者たちはPRを行えるようになったのだ。
「良かったな、次期会長」
「はい?」
二葉は桃子にリストを見せた。生徒会長への立候補者は一人しかいなかった。加えて言えば、争うのは書記の一枠を二人が争うだけだ。
「やったー!」
「甘いぞ、不信任の可能性もある」
「しろちゃん、後輩をいじめないの」
「調子に乗る後輩に釘刺しただけだ」
「ただいま戻りました」
職員室に用事で行っていた伊東が戻ってきた。二葉は彼女に声をかけながらリストを渡す。
「お疲れ。戻ってきたばっかで悪いんだけど、これコピーして広報委員に渡してきてくんない?」
「はい。あ、東海林さんおめでとうございます!」
「だからおだてるなよ……」
「?」
早苗が先程の会話を要約して説明すると、伊東は苦笑いした後、職員室前のコピー機に向かった。すぐさま五時を告げる鐘が鳴った。それに反応して二葉が口を開く。
「作業は六時までな」
「あと一時間ね。しろちゃん、帰りに少し時間ある?」
「ん、構わない」
その会話を最後に皆黙々と作業をこなしていった。あるのは必要な情報交換のみだ。二葉以外は他の委員会などとのやり取りのために奔走している。
十七時四十分、ちょうど全員が生徒会室にいるタイミングで、二葉が普段より少し大きな声で静寂を破る。
「本日の生徒会選挙準備はこれで終了とする。この調子なら明日には終わると思うから。じゃあ、お疲れ様」
「お疲れ様でしたー!」
いまいち締まらない会長の言葉に生徒会役員たちは元気よく挨拶を返す。
「少し早めにお開きにしたのは私のため?」
「部活終了組の下校と被るのが嫌だっただけだ」
「そう」
「それで? 何か話したいことでもあったんじゃあないのか」
「しろちゃん、進路決めた?」
「まあ考えてはあるが。早苗は国公立か?」
「多分......」
そこで会話は途切れる。二葉には早苗の言わんとすることは何となく理解が出来ていたが、こういう時にかける言葉が分からなかった。早苗は自分の気持ちを吐露しそうになったことに気がつき、その後の言葉に詰まっている。
二人はそのまま一言も交わすことなく、駅で別れた。
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