27 / 43
二葉と早苗
会長と副会長の場合 6-2
しおりを挟む
翌日、生徒会がすべき選挙の準備は全て終了した。あとは、当日の司会進行くらいだろう。
「選挙準備お疲れ様でした! 乾杯!」
「かんぱーい!!」
二葉が音頭を取ると皆一斉に手にした缶ジュースを掲げる。ジュースは、忙しいにも関わらずろくに顔を出さなかった顧問の東堂先生が買ってくれたものだ。
打ち上げムードの中、桃子は気掛かりがあった。自身の選挙のことではない。会長と副会長のことである。今日一日、仕事に関することを除いて二人が会話するところを見ていない。どんなに忙しいときでも、二人は冗談を言い合ったりして場を和ませてくれたのに。
そう思っていると、早苗が一人で生徒会室を出ようとしていた。桃子はトイレに行くふりをしながら副会長を追いかけた。
「如月先輩!」
「桃ちゃん、どうしたの?」
「何かありましたか? さっきから元気が無さそうですけど……」
早苗は軽く笑いながら、普段通りに答えた。
「大丈夫よ」
「じゃあ、私、言いたいこと言ってもいいですか?」
「何?」
吸って吐いて、吸って吐いてと二回深呼吸をした後、少し大きめな声で
「如月先輩! 好きです!」
と言った。早苗は顔を紅潮させる。それを見た桃子は顔を少し下に向けた。
「あの、桃ちゃん……」
「いいんです、返事は。これで心置きなく生徒会長になれるんで。ただし……」
早苗は、うつむいている顔から涙がこぼれるのに気づき何も言わずにハンカチを差し出す。桃子はそれを手だけで断って、顔を上げ、先程の言葉を続ける。
「……ただし、自分に嘘はつかないで下さい。もっと他人を頼って下さい」
「……あと、幸せになって下さい」
くしゃくしゃの顔をYシャツの袖で拭う。早苗はその間もその後も何も言えずにいた。
「先輩たちと生徒会出来て楽しかったです……」
そう言い残して、桃子は階段を降りていく。
そして、生徒会選挙の当日。
二葉が司会を行う以外、演説中は何の仕事も無かった。普段の桃子からは想像もつかないような演説に生徒会メンバーは驚いていたが、早苗だけは安心していた。
全員の演説が終了して、その場ですぐに投票が行われ、そこから一時間程で集計が終了した。桃子はほとんど不信任を出すことなく当選していた。
前生徒会長である城田二葉から、新生徒会長の東海林桃子に賞状と花束が渡される。会場は拍手に包まれた。そして、選挙はあっという間に終わった。
早苗はホームルームが終わると真っ直ぐとなりの教室へと向かった。
「しろちゃん、帰りましょう」
「選挙準備お疲れ様でした! 乾杯!」
「かんぱーい!!」
二葉が音頭を取ると皆一斉に手にした缶ジュースを掲げる。ジュースは、忙しいにも関わらずろくに顔を出さなかった顧問の東堂先生が買ってくれたものだ。
打ち上げムードの中、桃子は気掛かりがあった。自身の選挙のことではない。会長と副会長のことである。今日一日、仕事に関することを除いて二人が会話するところを見ていない。どんなに忙しいときでも、二人は冗談を言い合ったりして場を和ませてくれたのに。
そう思っていると、早苗が一人で生徒会室を出ようとしていた。桃子はトイレに行くふりをしながら副会長を追いかけた。
「如月先輩!」
「桃ちゃん、どうしたの?」
「何かありましたか? さっきから元気が無さそうですけど……」
早苗は軽く笑いながら、普段通りに答えた。
「大丈夫よ」
「じゃあ、私、言いたいこと言ってもいいですか?」
「何?」
吸って吐いて、吸って吐いてと二回深呼吸をした後、少し大きめな声で
「如月先輩! 好きです!」
と言った。早苗は顔を紅潮させる。それを見た桃子は顔を少し下に向けた。
「あの、桃ちゃん……」
「いいんです、返事は。これで心置きなく生徒会長になれるんで。ただし……」
早苗は、うつむいている顔から涙がこぼれるのに気づき何も言わずにハンカチを差し出す。桃子はそれを手だけで断って、顔を上げ、先程の言葉を続ける。
「……ただし、自分に嘘はつかないで下さい。もっと他人を頼って下さい」
「……あと、幸せになって下さい」
くしゃくしゃの顔をYシャツの袖で拭う。早苗はその間もその後も何も言えずにいた。
「先輩たちと生徒会出来て楽しかったです……」
そう言い残して、桃子は階段を降りていく。
そして、生徒会選挙の当日。
二葉が司会を行う以外、演説中は何の仕事も無かった。普段の桃子からは想像もつかないような演説に生徒会メンバーは驚いていたが、早苗だけは安心していた。
全員の演説が終了して、その場ですぐに投票が行われ、そこから一時間程で集計が終了した。桃子はほとんど不信任を出すことなく当選していた。
前生徒会長である城田二葉から、新生徒会長の東海林桃子に賞状と花束が渡される。会場は拍手に包まれた。そして、選挙はあっという間に終わった。
早苗はホームルームが終わると真っ直ぐとなりの教室へと向かった。
「しろちゃん、帰りましょう」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる