28 / 43
二葉と早苗
二葉と早苗の場合 1
しおりを挟む
ホームルームが終わると、如月早苗は真っ直ぐにとなりの教室へと向かう。ちょうど教室から出て来た城田二葉に声をかける。
「しろちゃん、一緒に帰りましょう」
「ああ、行こうか」
二葉は普段通りのぶっきらぼうな返事をする。端から見ればいつもの会話だが、早苗の心中では今日の『一緒に帰ろう』はそれまでに無い気持ちで発していた。
もはや自分たちは生徒会会長と副会長ではない。当たり前のように横にいられる事はない。後輩で現生徒会長である桃子にああまでされて、まだ動けないようではこの先何も出来ず一生を終える臆病者だ。
「喫茶店寄ってかない? ほら、駅前の」
「春に行ったとこか。そういやあれきりだな。行こうか」
三分の二程の席が埋まっていた。二人は入り口付近の窓に案内される。若い女性店員はお冷やとメニューを差し出してくれる。
二葉はりんごのパフェを、早苗はミルクレープとコーラフロートを注文する。二人とも以前と同じものだった。
「しろちゃん、一年間お疲れさま」
「早苗こそ、お疲れ」
「ねえ、私たちが初めて会ったときのこと覚えてる?」
「早苗と会ったとき……? 忘れるわけがないだろう」
フフと思いだし笑いをしながら二葉が答える。少しして、真面目な顔つきで
「まさか、ここまで続くとは思ってなかったけどな」
と言った。早苗が微笑みながら返答する。
「迷惑だった?」
「時々な」
「sometimes(=時々)ってね、約五十パーセントなのよ。そんなに?」
「never(=全く無い)では無いな」
二葉は自分で放った冗談を流すように軽く咳払いをして、水を飲み、話題を変更した。
「今日はどうした? 疲れているなら帰るか?」
「いえ、大事な話があるの……」
早苗は先ほどまでコーラフロートが入っていたコップをテーブルに置く。二葉も空になった皿を弄る指を止めた。
「やっぱり、しろちゃんと同じ学校に行きたいと思ってるの」
「ダメだ」
切り捨てるように即座に返事をする。二葉は更に続けた。
「早苗は国公立だろう? 私なんかに合わせる必要はない」
『親に決められた進路なんかに進みたくない』と、早苗は言い返そうとするが、喉元で引っ掛かって出ない。
「どうして……」
これが精一杯の一言だった。
「実はな、私も早苗と一緒の大学に行けたらと思ってたんだ。だけど、あと二年は必要だって言われてさ……」
さっきとは打って変わって少し落ち込んだ様子で二葉はそうこぼした。
「だからさ、一緒に暮らそう。お互い四年は離ればなれかもしれないけど、その後ずっと一緒にいよう。な?」
早苗は泣き出しそうな顔を手で覆う。まさか彼女がここまで考えているとは思わなかった。
悔しい。カッコいい。ずるい。嬉しい。早苗の中でぐるぐると色んな感情が渦巻く。
黙りこんで顔を見せない早苗に、二葉はこう付け足した。
「早苗が良ければ、だけど……」
頬に伝う涙を拭いながら微笑む。最早、返事など必要ない。
二葉は彼女に笑い返して、
「ありがとう」
とだけ言った。
「しろちゃん、一緒に帰りましょう」
「ああ、行こうか」
二葉は普段通りのぶっきらぼうな返事をする。端から見ればいつもの会話だが、早苗の心中では今日の『一緒に帰ろう』はそれまでに無い気持ちで発していた。
もはや自分たちは生徒会会長と副会長ではない。当たり前のように横にいられる事はない。後輩で現生徒会長である桃子にああまでされて、まだ動けないようではこの先何も出来ず一生を終える臆病者だ。
「喫茶店寄ってかない? ほら、駅前の」
「春に行ったとこか。そういやあれきりだな。行こうか」
三分の二程の席が埋まっていた。二人は入り口付近の窓に案内される。若い女性店員はお冷やとメニューを差し出してくれる。
二葉はりんごのパフェを、早苗はミルクレープとコーラフロートを注文する。二人とも以前と同じものだった。
「しろちゃん、一年間お疲れさま」
「早苗こそ、お疲れ」
「ねえ、私たちが初めて会ったときのこと覚えてる?」
「早苗と会ったとき……? 忘れるわけがないだろう」
フフと思いだし笑いをしながら二葉が答える。少しして、真面目な顔つきで
「まさか、ここまで続くとは思ってなかったけどな」
と言った。早苗が微笑みながら返答する。
「迷惑だった?」
「時々な」
「sometimes(=時々)ってね、約五十パーセントなのよ。そんなに?」
「never(=全く無い)では無いな」
二葉は自分で放った冗談を流すように軽く咳払いをして、水を飲み、話題を変更した。
「今日はどうした? 疲れているなら帰るか?」
「いえ、大事な話があるの……」
早苗は先ほどまでコーラフロートが入っていたコップをテーブルに置く。二葉も空になった皿を弄る指を止めた。
「やっぱり、しろちゃんと同じ学校に行きたいと思ってるの」
「ダメだ」
切り捨てるように即座に返事をする。二葉は更に続けた。
「早苗は国公立だろう? 私なんかに合わせる必要はない」
『親に決められた進路なんかに進みたくない』と、早苗は言い返そうとするが、喉元で引っ掛かって出ない。
「どうして……」
これが精一杯の一言だった。
「実はな、私も早苗と一緒の大学に行けたらと思ってたんだ。だけど、あと二年は必要だって言われてさ……」
さっきとは打って変わって少し落ち込んだ様子で二葉はそうこぼした。
「だからさ、一緒に暮らそう。お互い四年は離ればなれかもしれないけど、その後ずっと一緒にいよう。な?」
早苗は泣き出しそうな顔を手で覆う。まさか彼女がここまで考えているとは思わなかった。
悔しい。カッコいい。ずるい。嬉しい。早苗の中でぐるぐると色んな感情が渦巻く。
黙りこんで顔を見せない早苗に、二葉はこう付け足した。
「早苗が良ければ、だけど……」
頬に伝う涙を拭いながら微笑む。最早、返事など必要ない。
二葉は彼女に笑い返して、
「ありがとう」
とだけ言った。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
モヒート・モスキート・モヒート
片喰 一歌
恋愛
主人公・翠には気になるヒトがいた。行きつけのバーでたまに見かけるふくよかで妖艶な美女だ。
毎回別の男性と同伴している彼女だったが、その日はなぜか女性である翠に話しかけてきた。
紅と名乗った彼女は男性より女性が好きらしく、独り寝が嫌いだと言い、翠にワンナイトの誘いをかける。
根負けした翠は紅の誘いに応じたが、暑い盛りと自宅のエアコンの故障が重なってしまっていた事もあり、翠はそれ以降も紅の家に頻繁に涼みに行くようになる。
しかし、妙な事に翠は紅の家にいるときにだけ耐え難い睡魔に襲われる。
おまけに、ほとんど気絶と言って言い眠りから目覚めると、首筋には身に覚えのないキスマークのような傷が付いている。
犯人候補は一人しかいない。
問い詰められた紅はあっさり容疑を認めるが、その行動の背景には翠も予想だにしなかった事情があって……!?
途中まで恋と同時に謎が展開しますが、メインはあくまで恋愛です。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
クールすぎて孤高の美少女となったクラスメイトが、あたしをモデルに恋愛小説を書く理由
白藍まこと
恋愛
あたし、朝日詩苑(あさひしおん)は勝気な性格とギャルのような見た目のせいで人から遠ざけられる事が多かった。
だけど高校入学の際に心を入れ替える。
今度こそ、皆と同じように大人しく友達を作ろうと。
そして隣の席になったのは氷乃朱音(ひのあかね)という学年主席の才女だった。
あたしは友好的に関わろうと声を掛けたら、まさかの全シカトされる。
うざぁ……。
とある日の放課後。
一冊のノートを手にするが、それは氷乃朱音の秘密だった。
そして、それを知ってしまったあたしは彼女に服従するはめに……。
ああ、思い描いていた学校生活が遠のいていく。
※他サイトでも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる