立てば芍薬、座れば牡丹、歩けば咲くは百合の花

鍵谷 雷

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二葉と早苗

二葉と早苗の場合 2

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  星ヶ丘女子高等学校は如月早苗が入るにはレベルの低い学校だった。中学受験で入った私立中学の雰囲気や距離がどうにも耐えられず、通学に一時間かかることもうんざりしていた。両親には通学の不便さを伝え、家から三十分もかからないこの学校に入学した。その変わり、大学は国公立の法学部か経済学部を目指すように強く言われた。
  自然と友人は出来た。学校やクラスの雰囲気も良い。ただ、一つだけ気がかりがあった。クラスの中で全く話したことの無い人物、城田二葉のことだ。常にボーッとしていて、眠いだけのようにも、悟ったようにも見える不思議な娘だ。誰かと会話をしているのを見たことが無い。
  新入生は五月に遠足がある。そこで思いきって、彼女に話しかけようと思った。班決めの時、沢山の人から誘われる前に、城田さんの席に向かった。

「城田さん……だよね?  一緒の班にならない?」
「……ん?  良いぞ」
「ありがとう」

  少し驚いた風だったが、淡白な返事が帰って来た。嬉しいというよりは、どんな人物か見極めてやるという気持ちが強かった。

  遠足では、班ごとにカレーを作る。正直なところ、城田さんは料理などはしないと思っていた。しかし、野菜を切ってカレーを煮込む様は、ベテランの主婦のような手際の良さだった。

「城田さん、料理上手いのね」
「まあ、家でもよくやってるから」

  時折話しかけても、彼女の返事は素っ気ないものが多かった。だが、質問すれば、休みの日の過ごし方や家族構成などの、ある程度プライベートな事にも答えてくれた。

「城田さん、部活入ってないんだっけ?」
「そういう如月さんこそ、入ってないんだろう?」
「私には他にやりたいことがあるから」
「……そうか」
「聞いてくれないの?」
「聞いてほしいのか?」

  遠足が終わった後にはこんなやり取りが出来るようになっていた。内容に関わらず、冗談が通じる仲になれたのは嬉しいものがあった。
  しかし、『やりたいこと』は彼女にはまだ言わないことにした。
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