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恋花と愛那
恋花と愛那の場合 6ー3
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あみだくじでプールに行くことが決まった日の夜、愛那からラインが来た。
『水着が無い。一緒に買いに行こー』
猫が手を合わせてお願いのポーズを取るスタンプとともにメッセージが入っていた。
『私も持ってないからちょうど良かった』
と返事をした。数分で先程と同じ猫が手を上げて『ありがとー!』と喜んでいるスタンプが送られてきた。
土曜日、学校の最寄りから二つ先の駅周辺にあるショッピングモールに行くことになった。
「ごめーん、待ったー?」
「いや、私も今来たところ」
恋花は愛那を待つ間、このような会話を二度耳にした。まさか自分もこのような会話をするとは思わなかったが。他愛のない会話をしながらショッピングモールへ向かう。
「見て! アイスのダブルが四百円だって!」
「…………」
「恋ちゃんアイス嫌い?」
「とりあえず用事済ませてからにしよう。それまで寄り道禁止」
「……分かった」
その時の愛那の落ち込んだ顔が少し可愛く見えた。
大小様々な服屋が並ぶ区画に来た。無難だろうと思い、大手チェーン店に入る。人の多さが休日を感じさせた。
「水着はあっちだって!」
「あっちはメンズ」
近くにいた中年の女性客の小さい笑いから逃げるように女性用水着の方へ愛那を引っ張っていく。
「ビキニー!」
はしゃぐ彼女の胸元にふと目をやる。今まで意識しなかったが、結構大きい。共学ならば男子の目線は避けられないだろう。
恋花は自分の胸にそっと手を当てる。自分も平均はあったはずだ。それから小さくなっているということも無い。
などと考えていると、愛那が目の前に戻ってきていた。
「恋ちゃん、どっちがいいと思う?」
右手に赤を基調としたワンピース、左手には黄緑を基調としたパレオを持っていた。どちらも花柄が目立つが、水着の性質上雰囲気は大きく違っている。
「……こっちかな」
ワンピースを指差す。
「じゃあ行こ!」
「は?」
「試着室!」
恋花はすっかり騙された。自分のを決めるのに二択で迷っているのかと思った。
愛那に流されるまま試着してみると、思ったよりも違和感が無い。サイズや着心地も良く、可愛すぎないところが好ましかった。
「似合ってるよ、恋ちゃん!」
「とても良くお似合いですよ」
愛那と試着室に案内してくれた店員のお姉さんが、明るい笑顔で褒めちぎってくれた。もうこれに決めるしかないようだ。
「で、あんたは決めたの?」
「うん」
先程のパレオを見せられた。端から選ばれなかった方を自分用にすると決めていたらしい。
「そんな決め方でいいの……?」
「ダメかな?」
「いや、似合うと思うよ。でも、一応着てみたら? サイズとか合わせた方が良いだろうし」
「そうだね、着てみるよ」
上下に分かれたタイプの水着はやはり胸が目立つ。胸元から目を逸らすと、柔らかそうな二の腕やフトモモが視界に入ってくる。
「恋ちゃん、どう?」
「可愛いよ、別人みたい」
「いつもは可愛くないみたいじゃん?」
「じゃあ言い直すよ。いつもより可愛い」
気取って言ってみるが、実際恥ずかしい。しかし、愛那が顔を真っ赤にしているのを見ると少し冷静になれた。
会計を済ませると、「もう少し遊んでいこー」と言うので、同意を示す。
「恋ちゃん、あそこのアイス屋さん寄っていい?」
「太るよ」
「もー!」
たった数か月の間で軽口や冗談を交わせる相手は始めてではないかと感じていた。
「一口貰うね」
「あ……」
返事もする前に大口でアイスを取っていく。
「間接キス~」
「…………」
「ごめんごめん。怒んないで、一口あげるから」
キャラメル味のアイスはとても甘く、愛那が一口くれた抹茶アイスは苦く感じられた。
『水着が無い。一緒に買いに行こー』
猫が手を合わせてお願いのポーズを取るスタンプとともにメッセージが入っていた。
『私も持ってないからちょうど良かった』
と返事をした。数分で先程と同じ猫が手を上げて『ありがとー!』と喜んでいるスタンプが送られてきた。
土曜日、学校の最寄りから二つ先の駅周辺にあるショッピングモールに行くことになった。
「ごめーん、待ったー?」
「いや、私も今来たところ」
恋花は愛那を待つ間、このような会話を二度耳にした。まさか自分もこのような会話をするとは思わなかったが。他愛のない会話をしながらショッピングモールへ向かう。
「見て! アイスのダブルが四百円だって!」
「…………」
「恋ちゃんアイス嫌い?」
「とりあえず用事済ませてからにしよう。それまで寄り道禁止」
「……分かった」
その時の愛那の落ち込んだ顔が少し可愛く見えた。
大小様々な服屋が並ぶ区画に来た。無難だろうと思い、大手チェーン店に入る。人の多さが休日を感じさせた。
「水着はあっちだって!」
「あっちはメンズ」
近くにいた中年の女性客の小さい笑いから逃げるように女性用水着の方へ愛那を引っ張っていく。
「ビキニー!」
はしゃぐ彼女の胸元にふと目をやる。今まで意識しなかったが、結構大きい。共学ならば男子の目線は避けられないだろう。
恋花は自分の胸にそっと手を当てる。自分も平均はあったはずだ。それから小さくなっているということも無い。
などと考えていると、愛那が目の前に戻ってきていた。
「恋ちゃん、どっちがいいと思う?」
右手に赤を基調としたワンピース、左手には黄緑を基調としたパレオを持っていた。どちらも花柄が目立つが、水着の性質上雰囲気は大きく違っている。
「……こっちかな」
ワンピースを指差す。
「じゃあ行こ!」
「は?」
「試着室!」
恋花はすっかり騙された。自分のを決めるのに二択で迷っているのかと思った。
愛那に流されるまま試着してみると、思ったよりも違和感が無い。サイズや着心地も良く、可愛すぎないところが好ましかった。
「似合ってるよ、恋ちゃん!」
「とても良くお似合いですよ」
愛那と試着室に案内してくれた店員のお姉さんが、明るい笑顔で褒めちぎってくれた。もうこれに決めるしかないようだ。
「で、あんたは決めたの?」
「うん」
先程のパレオを見せられた。端から選ばれなかった方を自分用にすると決めていたらしい。
「そんな決め方でいいの……?」
「ダメかな?」
「いや、似合うと思うよ。でも、一応着てみたら? サイズとか合わせた方が良いだろうし」
「そうだね、着てみるよ」
上下に分かれたタイプの水着はやはり胸が目立つ。胸元から目を逸らすと、柔らかそうな二の腕やフトモモが視界に入ってくる。
「恋ちゃん、どう?」
「可愛いよ、別人みたい」
「いつもは可愛くないみたいじゃん?」
「じゃあ言い直すよ。いつもより可愛い」
気取って言ってみるが、実際恥ずかしい。しかし、愛那が顔を真っ赤にしているのを見ると少し冷静になれた。
会計を済ませると、「もう少し遊んでいこー」と言うので、同意を示す。
「恋ちゃん、あそこのアイス屋さん寄っていい?」
「太るよ」
「もー!」
たった数か月の間で軽口や冗談を交わせる相手は始めてではないかと感じていた。
「一口貰うね」
「あ……」
返事もする前に大口でアイスを取っていく。
「間接キス~」
「…………」
「ごめんごめん。怒んないで、一口あげるから」
キャラメル味のアイスはとても甘く、愛那が一口くれた抹茶アイスは苦く感じられた。
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