トイレが言えないっ!

かろ丸

文字の大きさ
39 / 44
9.クリスマス ※給水パッド

1

しおりを挟む
 テストは無事終わり、陽登は千傘の教えと安眠効果のおかげもあり一番心配だった数学の赤点を回避し他もなんだかんだ平均点前後くらいをとることができた。
 陽登たちの学校はクリスマスより数日早く冬休みが始まる。しかし陽登はテストで赤点を回避はしたものの欠席日数が多いために冬休みが始まってからも補講で学校に来ていた。
 千傘は千傘で朝から夜まで可能な限りバイトを入れていて妹や弟の世話もしている様子で、冬休みが始まってから会えていない。付き合い始めたものの、テストの期間はテスト勉強に明け暮れていたし、テストが終わってからは冬休みでこのような感じで会えなくなってしまい、付き合ってから変わったことと言えば夜に通話をしておやすみと毎日言うことくらいだ。それだって千傘は疲れ切って殆ど寝そうな声で数分通話するだけだった。
 

 今日はクリスマスイブ。平日ではあるものの世間はどことなく浮かれた雰囲気がただよっている。  
 今日の今日まで陽登は日本のクリスマスという行事が「恋人とデート」に深く結びついていることを、世間的にはそうとはしっていても頭の中で自分事として結びつけられていなかったから千傘をクリスマスに会おうなどと誘いはしなかった。
 けれどすれ違う生徒などがクリスマスデートの話をていると、嫌でも耳に入って気になる。街の中のデートスポットが近くにある場所に位置する学校の立地もあり、補講中に教室から窓の外を見るとカップルが歩いている姿も普段より目にした。そうなると陽登も流石に自分が補講以外何の予定もない状況を意識をしだした。

(恋人……になったはずだけど、クリスマスは会わないのかな……明日も特に誘われてないけど……みんながみんな会うとは限らないし……)

 悶々として、自分から誘おうかとも思ったものの千傘が誘ってこないということは千傘はきっとバイトがあるからかもしれないし、今更誘うのもきっと困らせるだけかも、と思い返す。クリスマスバイトは時給もいいと聞くし。きっとバイトだ。そう。ただの平日だと思おう。
 そう決めて陽登は残りの補講をうけた。

(付き合ったらもう少し一緒にいられると思ったのに……)

 ぼんやりと考えて、人と付き合うべきじゃないとつい数週間前まで思っていたのに付き合ったら付き合ったですぐ不満とは虫がいいなと恥ずかしくなった。
 まだ冬休みになってから数日しか経っていないのにこんなに会いたいのは、きっと千傘がいないと眠りが浅いから安眠枕としての千傘が欲しいだけだ。
 恋しくてさみしくて会いたいと思っていると自分で自覚をすれば、さらに恋しくなりそうで「千傘のハグ」という身体目当てということに心の中で置き換える。我ながらひどい置き換えだったが、むしろこれを理由にして誘ってもいいのでは?とふと思い立つ。
 どうせ補講中は千傘はバイトで連絡は来ないし、親等からも連絡は来ないからと学校にいる間はカバンの奥底に眠らせている連絡用端末を補講が終わってから取り出すと、いつも昼には連絡がない千傘からの着信が休み時間ごとといった感じに4件あった。何か良くないことでもあったのかと思って陽登が少し心配でドキドキしながらかけ直すと、千傘がでた。

「陽登!やっとでた、なぁやばい!今日クリスマスイブだ!!!」

 出て早々千傘はかなりあわてて大きな声でいう。

「そうだよ」

 陽登は何も知らない風を装い、「今日は晴れですよ」とか見ればわかるどうでもいいようなことを言われたかのように普通に返す。

「俺寝ぼけてた陽登と約束したけど起きてる陽登と約束してない!!!」

 かなりショックを受けているような声が端末越しに聞こえる。寝ぼけただか起きてるだか、千傘が何を言ってるのか陽登にはよくわからなかった。

「陽登今日補講だよな?もう終わった?この後は?予定空いてる?当日になって慌てて誘う俺でもデートしてくれる……?」

 陽登は驚いてぽかんと口を開けた。

「デート……してくれるの?」

 3秒程時間をかけてやっと返事を返すと、千傘が喜びに息を呑む音が聞こえる。

「もちろん!!して!!!」

「ぼ、ぼくも誘おうと思ってた」

「よっっっしゃ!!絶対デートしよ!」

 あれよあれよという間に予定が決まった。
 千傘は陽登が補講だから制服を着ていると言うと千傘も制服を着てくるといい、学校の最寄り駅で待ち合わせることにする。千傘はこの近くで行きたいところがある様子だった。


 よく考えれば、付き合ってから初めてのちゃんとしたデートだ。陽登はいつもの制服に黒いロング丈のダッフルコートと寒いから赤いチェックのマフラーを巻いて、髪も特に整えず目を覆う野暮ったい髪型で、あまりにも普通…というよりどちらかといえばダサい。
 外にいるからこの髪も何もかも変えようがなく、駅の鏡に移った自分を見て、もう少しくらい普段から気を使っていればよかったと思う。
 駅で千傘を待っていると、改札を出たところで陽登に気づいた千傘が手を上げて駆けてくる。千傘もいつもどおりの制服の上に、いつもはあまり着ていないコート羽織っていて、それだけで外を歩くつもりなんだと分かった。いつもどおり髪はきれいにセットして整えてられている。

「おまたせ」

 久々の千傘に陽登は謎に少し緊張を覚える。

「陽登の予定が空いててよかった」

「……暇なの、知ってるくせに。ち、千傘こそバイトかと思った」

「ないよ!陽登と会えるかもってずっとあけてた。すっかり約束したと思ってた」

 千傘の話を聞くと、どうやら陽登はたしかに会おうと言う約束にうんと答えていたらしい。あんまり寝ぼけながら話すのは良くないなと陽登は思った。

「……どこいく?」

「近くでクリスマスマーケットやってるし嫌じゃなきゃそこ行こ。歩いていける距離」

「たのしそ……」

 陽登は素直についていこうとして足を止める。

「ぁ……並んだり……する?」

「わかんない…けど混んでそうだしな~並ぶかも」

 陽登はそわ…と足をすり合わせた。冬はただでさえ近いトイレが近く、並んでトイレに思うようにいけないかもと考えるとまだ混む場所にも行っていないのに催してしまいチラチラとその場でトイレを探す。
 看板を見つけ、今会ったばかりの千傘に恥を忍んで「トイレに行きたい」と一言告げてトイレへ向かった。用を済ませたあと、鞄の奥底に入れていた吸水パッドを取り出してにらめっこする。

(つ……かいたく………ない………けど……)

 できれば普通の下着のままでいたい。おむつもこういった給水パッドも使いたくない……でも、並ぶと聞いたし、混んでそうだし、冬だし。こないだも失敗したし……あまりにも失敗しすぎて対策を取らないのも呆れられるだろう。おむつと違って充てがうだけだから、バレにくそうとは思ったものの保険程度にしかならないだろうしちゃんと吸収してくれるか不安がある。……でも、ないよりは安心だ。できればトイレに間に合いたいものの万が一また漏らして迷惑をかけたらということを想像して、意を決して陽登はそれを開けた。

(もらしてズボン汚すよりまし、もらすよりまし、まし……!)

 呪いのように唱えてそれを充てがう。入念に見た目でバレないかシルエットを確認した。ださなければズボン越しには全然分からないし、万が一出してしまったとしても丈の長いダッフルコートを着ているから何とか周りからは分からないだろう。
 少し時間がかかって千傘のもとに戻ると心配された。

「お腹いたい?大丈夫?」

「へ、平気、なんでもない。おそくなってごめん……」

「じゃ行こうか」

 陽登はやっぱり今からでもこまない場所にいかないかと提案したかったが、クリスマスマーケットにワクワクしている千傘をみて口を閉じる。

「どうかした?」

「う、ううん、なんでもない」

 引くに引けずにクリスマスマーケットへと向かった。会場へ向かう途中から既に道路は人でごった返しており、横断歩道なども交通整理の人が拡声器で

「赤になりまーす。渡らないでください渡らないでください。渡らないで!」

 と激しく規制を行なっている。

「やっぱ人多いな~」

「ね」

「トイレ行くなら早めに行っとかないとすぐ入れなそう」

 千傘がチラと陽登をみる。暗に早く言えよと陽登に伝えてきているようで、子供扱いされているみたいで申し訳ないやら恥ずかしいやら陽登は穴に入りたい気分になった。さっきトイレに行ったばかりなのにこんなことを言われるのは、トイレが近い上にいつも陽登がギリギリにトイレと言いがちなせい。

「う、うん……」

 横断歩道を越えるとクリスマスマーケットの会場がみえてくる。小さな家みたいな木の屋根の屋台が並んでいて会場の真ん中には大きなツリーがあった。夜には街全体がライトアップするらしい。
 会場に入るには並ばないといけないようだった。
 トイレに行ってから来たし、吸水パッドという保険もかけているものの、入場まで70分待ちの看板が立っていて陽登は怖気づく。

「70分か……平気?やめとく?」

 陽登の膀胱の弱さを知って千傘が気遣うように言ったので、さすがにここまで来て申し訳ないと思って陽登は首を左右に振った。それに、トイレに行けないからやめるというのもあまりにも恥ずかしい理由で受け入れがたい。これくらい我慢できるし。……保険もかけてるし。

「はいろ」

「でも中入ってからも多分トイレないしでてすぐもトイレ行けないよ」

 さっきすれ違った子供がトイレすぐ行けないからねと念押しされていたのと同レベルだと認識されている。もうあまりにも恥ずかしすぎて、何度も漏らしているから仕方がないとは言え、陽登だって不安なのに、並んでいることも分かってて行きたいから連れてきたくせに、ここまできてトイレがないから引き返そうかなどと繰り返し言われると陽登のプライドはズタズタだった。

「平気だって、いってる!入らないなら帰るからっ」

 陽登が赤くなって踵を返すと、千傘は陽登の腕をつかんだ。

「やだ、ごめんて!帰るなんていうなよ」

 あわあわとする千傘をみて、心配してくれてるだけだしよく漏らしてる自分が悪いのにと陽登は反省した。でも謝れなくて掴まれた腕を握って離させ列の方へ向き直った。

「……並ぼ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

Memory

yoyo
BL
昔の嫌な記憶が蘇って、恋人の隣でおねしょしてしまう話です

どうして、こうなった?

yoyo
BL
新社会として入社した会社の上司に嫌がらせをされて、久しぶりに会った友達の家で、おねしょしてしまう話です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...