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9.クリスマス ※給水パッド
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列に並んでいる間、千傘は寒くない?と何度か陽登を気遣い、あったまったカイロを握らせてくれた。話をしているとあっという間に時間は過ぎて結果的には70分もかからずに中に入ることができた。
中に入ると外から見えた大きなツリーがもっと大きく華やかに見え、雑貨屋も食べ物を売っている屋台もすべてがクリスマスの空気をまとって活気づいて輝いて見えた。
「すご。クリスマスっぽい」
千傘は嬉しそうに顔を輝かせている。陽登はその横顔を見て入れてよかったと思った。
千傘はわくわくキョロキョロ辺りを見回し、全てに目移りしているようだ。
「あれなんだろ、みてみよーぜ!」
千傘は指を指したかと思うと一人で飛び出して行ってしまいそうになるから陽登は千傘の手を思わず掴んだ。千傘は少し驚いたように立ち止まってにかっと嬉しそうに顔をほころばせたかと思うと指を絡めて握り直してグイグイと陽登を引いていく。
「あ、ちょっ……ひ、人、いるし、見られたら……」
「大丈夫大丈夫。だれもみてないって。陽登迷子になりそうだし」
今日は千傘の方が迷子になりそうだったのに。
陽登は少しムスッとした。でも繋いだ千傘の手は温かく、カイロから手を離すとすぐに冷える陽登の手を優しくあたためてくれる。人波に揉まれて溺れそうになる陽登を強引に引っ張ってくれるところは頼もしく、すぐにむっとしたことなどどうでもよくなった。
「こちらはお香ホルダーで……」
千傘が近づいた屋台の中には小さい家が立ち並んで、店員のお姉さんがその小さな陶器の家が何であるかを説明してくれる。小さな家の煙突からは煙が出ていた。
「煙突から煙出てる。小人でも住んでそうだな」
千傘が無邪気に絵本みたいなことを言うから、ギャップを感じて陽登は可笑しくて可愛くて、思わずくすくすと笑ってしまった。
お香ホルダーの屋台の隣はクリスマスツリーに飾るオーナメントが売っていたり、紅茶やお酒、化粧品の店などもある。歩いているうち日はすぐに暮れ、キャンドルホルダーが売られている店等はとても幻想的に見えた。歩いているだけで楽しかった。
「あっあれ」
千傘が小走りで一つの屋台に近づく。
「これ陽登のマフラーと同じ色柄じゃん」
赤いチェック柄の、マフラーをしているクマのぬいぐるみがあった。
「ほ、ほんとだ……かわいい」
「かわいいでしょう。こちら湯たんぽなんですよ」
お店の人がくまの背中を開けてゴム製の湯たんぽを取り出す。
「柔らかいですし身体に馴染みやすくて使い勝手も良いですよ」
丁寧に説明してくれる店員さんと千傘は何回か話をしてその湯たんぽを買った。自分用かなと思いながら会計を待ち、陽登も妹に小さなクッキーを買う。
それから2人でシチューポットパイとチャイを頼んで、食事をとれるスペースのガスストーブの近くの席をもう立とうとしている夫婦に声をかけて譲ってもらい2人で腰掛ける。
「よかった席取れて。大分歩いて冷えたろ。おなかとかいたくない?」
「うん」
随分と身体が弱いと思われているようで千傘はことあるごとに陽登を心配してくれる。そんなに弱くはないし大丈夫なんだけどなぁ……と陽登は思いながらも、大事にされているようで悪い気はしなかった。
「俺ポットパイなんて食べんの初めて!すげー!超うまそう」
さっきまで完璧に陽登を気遣ってくれたのに、シチューではしゃぐ千傘は小学生みたいだ。パイをスプーンで崩すと感嘆を漏らして感激している。陽登はそれをかわいいと思って見つめていた。
ガスストーブの近くとは言え風が吹き抜けると少しさむい。けれどそれもまた外で食べている非日常感を演出していて、むしろ心地が良いと陽登は思いながらシチューを口にする。ポットパイで保温されたシチューは体をよく温めてくれた。
ご飯を食べ終わり身体が温まると急に感じていなかった尿意が高まってきて、陽登は気も漫ろにそわそわもじもじと足をすり合わせた。
早めにトイレに行きたいと言えという千傘の言葉を思い出す。早めにとは言うものの、陽登は尿意を感じるのが下手なほうであり、漏らすことが増えてからはその傾向はより強くなって、さらに尿意を感じてから我慢できる時間も最近はどんどんと短くなってきている。つまり、トイレに行きたいとは今初めて思ったわけだが、もう結構限界に近い尿意が急に襲ってきていた。
とりあえず千傘に断ってトイレに向かわなければとは思ったものの、陽登は千傘を見て固まる。尿意を感じてない時にトイレというのは恥ずかしくないのに、尿意が高まるにつれてむしろトイレと言うのが恥ずかしくなるのはなぜなのか。
「うちの風真がさ、サンタくるの今日だと思っててプレゼントがない~って朝から大号泣して、つられて夏葵も私もないって慌てて泣き出してさ、明日だって言ってんのにもう朝から大混乱で…」
千傘は楽しそうに可愛い兄弟の話をしていた。
「かわいい」
陽登は相槌を打って笑う。話を止めて「トイレに行きたい」という勇気がない。
その間にも体内の水分が体を出ようと勝手に出口の方へと押し寄せ始め、陽登は焦った。机の下で拳を握る。
(だめだ早くいわなきゃ……)
チャイのはいった紙カップを包むように握って持つ千傘の手を見つめその手を陽登は掴む。
「ん?」
「と、といれ……行きたい、かも……」
あまりにも陽登の声は小さく、陽登は周りの喧騒に自分の声がかき消されたんじゃないかと思った。
「でよっか」
千傘の声は優しく、すぐに立ち上がってゴミを捨て陽登の手を引いて外に出ようと向かった。
クリスマスマーケットの会場から外に出るのにも人が多く列が進まず、進みが遅い。トイレまでの道のりは遠く人が進むスピードは遅いのに、温かいストーブから離れ外の外気にさらされると尿意の高まるスピードは速くなる。手を繋いでいる千傘の手を陽登はぎゅっと握った。
「平気?」
「う、うん」
もう結構限界なことを陽登はいいだせなかった。早めに言えと言われたし、自分の中では気づいてから割とすぐにいったのに我慢出来ないことが嫌で、間に合うと陽登は自分に言い聞かせる。
じわじわ進む度人波に押され、前が詰まって立ち止まり、止まれも進めもしない状況がもどかしい。
(我慢我慢我慢我慢……)
呪文のように頭で唱えるものの、我慢している感覚がわからなくなり始めていて危うい。
(おしっこ……間に合わないかも……っ)
ふと弱気になった瞬間ぞわ…と急激な尿意が背筋に走り、陽登は足を止めた。急に立ち止まったせいで後ろから歩いてきた人が陽登にぶつかり、陽登は少しよろける。じゅわ、と少し濡れた感覚がする。
(まず……っ)
「すみません」
後ろの人は一声かけて陽登を器用に追い抜いていった。
コートのポケット越しに陽登は出口を押さえる。吸水パッドのおかげでちびった部分は濡れていないもの、そのパッドのせいでうまく出口を握ることもできない。尿意に気を取られて千傘の手を誤って離してしまい、気づけば千傘が隣りにいなかった。
漏らしても1回分くらいはきっと吸収してくれるはずだけど、こんなところではもらしたくなくて歩くのもままならず、そうしてフラフラしていると周りの人に舌打ちされてしまう。陽登がよたよたしているうちに千傘とずいぶん離れてしまった。
これ以上は見失ってしまうと焦って前に進もうとすると左右の人にぶつかってしまって、謝っている間に、後ろから押され、つんのめった。こけるかも、と思った瞬間温かい胸板にぶつかって千傘の腕の中に包まれた。
「危な……陽登、平気?ここちょっとさすがに混みすぎ」
やっと人混みの中普通に立てて、迷子にならなくてよかったと陽登はほっとした。
後退すらしていた陽登だったが、千傘に手を引かれると少し流れ出した人混みを千傘はうまくかいくぐり先へ先へとすすんだ。
手を引かれ歩いている間もお腹がくるしくて、ほんの少しすれ違った人のバッグが触れただけでじゅ、と少しまたちびってしまって足が震える。
やっと会場からは抜けたものの、ここから近くの建物の中のトイレまで行くまで間に合うとは思えない。
「ちか、さ……もう、むり、かも……っ」
千傘の手と、ポケットの中の抑えている手をぎゅぅ……と握って、震えた声で陽登は言った。
「もうちょっと頑張れ」
千傘が励ましてくれるが、もう歩いて我慢するのは限界でたちどまりかるく足踏みをする。
「……も、ぁるけな…っむり、でる」
止まった千傘に陽登は耳打ちで吸水パッドをあてていることをうちあける。
「も、ここで……」
涙目になりながら間に合わないからここで、と千傘に伝えたとののここは通路で人も多く、立ち止まっているわけにもいかず、我慢はできないけど衆目の中ではうまくだせもしない。でもトイレまで間に合わない。助けてほしくて千傘の服の裾ををぎゅっと握りすがるように見た。
千傘は半ば引きずる様に陽登を通り道から端の方に連れていきレンガの壁を背に陽登の頭を抱え引き寄せ、コートで包むように抱きしめた。
ちょうど周りから死角になるような形で顔が隠れ、陽登はの少し緊張がほどける。
「ん…っ」
足が震えて目をぎゅっとつむった。散々ちびったくせに、いざというとこんな場所ではなかなか出てこなくて、やはりトイレに行けたのではないか一瞬思う。けれど少しだけおなかに力を入れると本当に少しずつじわじわと足の間が温かく重くなっていった。
どこまで吸水してくれるのか不安がありつつ、一度出してしまうと止めたくても止まらなくて、じわじわとお漏らしをしてしまい、こんなところで周りにバレるのではないかと怖くて千傘のパーカーをぎゅっとにぎる。千傘は陽登の頭を大丈夫だと言うみたいにゆっくりと撫でた。
しばらくじっとしてようやく、まだ少し残っているような感覚はあるものの無事緊急事態を抜け出すようにお腹が軽くなって陽登は顔をあげると千傘の顔がすぐ目の前にあってどき、とする。
「ぁ…っ」
何をしてしまったんだろう。とようやく冷静になってかぁ、と耳まで赤くなった。
「でた?」
陽登は頷いた。
「わかりやす」
千傘にくすくす笑われて恥ずかしかった。
「ご、ごめ……っ」
「気持ち悪いだろ。なるべく早く変えられるとこいこ」
うつむきながら手を引かれ歩くと人気の少なくなった海沿いのカフェの近くに公衆トイレがあり、その多目的トイレに入る。
ゴミを捨て用を足して外に出ると千傘は何事もなかったかのように手を出していこうか、といったが、陽登はさっきの抱きしめられながらおしっこをしてしまったことを思い出して、頭が沸騰しそうになった。
中に入ると外から見えた大きなツリーがもっと大きく華やかに見え、雑貨屋も食べ物を売っている屋台もすべてがクリスマスの空気をまとって活気づいて輝いて見えた。
「すご。クリスマスっぽい」
千傘は嬉しそうに顔を輝かせている。陽登はその横顔を見て入れてよかったと思った。
千傘はわくわくキョロキョロ辺りを見回し、全てに目移りしているようだ。
「あれなんだろ、みてみよーぜ!」
千傘は指を指したかと思うと一人で飛び出して行ってしまいそうになるから陽登は千傘の手を思わず掴んだ。千傘は少し驚いたように立ち止まってにかっと嬉しそうに顔をほころばせたかと思うと指を絡めて握り直してグイグイと陽登を引いていく。
「あ、ちょっ……ひ、人、いるし、見られたら……」
「大丈夫大丈夫。だれもみてないって。陽登迷子になりそうだし」
今日は千傘の方が迷子になりそうだったのに。
陽登は少しムスッとした。でも繋いだ千傘の手は温かく、カイロから手を離すとすぐに冷える陽登の手を優しくあたためてくれる。人波に揉まれて溺れそうになる陽登を強引に引っ張ってくれるところは頼もしく、すぐにむっとしたことなどどうでもよくなった。
「こちらはお香ホルダーで……」
千傘が近づいた屋台の中には小さい家が立ち並んで、店員のお姉さんがその小さな陶器の家が何であるかを説明してくれる。小さな家の煙突からは煙が出ていた。
「煙突から煙出てる。小人でも住んでそうだな」
千傘が無邪気に絵本みたいなことを言うから、ギャップを感じて陽登は可笑しくて可愛くて、思わずくすくすと笑ってしまった。
お香ホルダーの屋台の隣はクリスマスツリーに飾るオーナメントが売っていたり、紅茶やお酒、化粧品の店などもある。歩いているうち日はすぐに暮れ、キャンドルホルダーが売られている店等はとても幻想的に見えた。歩いているだけで楽しかった。
「あっあれ」
千傘が小走りで一つの屋台に近づく。
「これ陽登のマフラーと同じ色柄じゃん」
赤いチェック柄の、マフラーをしているクマのぬいぐるみがあった。
「ほ、ほんとだ……かわいい」
「かわいいでしょう。こちら湯たんぽなんですよ」
お店の人がくまの背中を開けてゴム製の湯たんぽを取り出す。
「柔らかいですし身体に馴染みやすくて使い勝手も良いですよ」
丁寧に説明してくれる店員さんと千傘は何回か話をしてその湯たんぽを買った。自分用かなと思いながら会計を待ち、陽登も妹に小さなクッキーを買う。
それから2人でシチューポットパイとチャイを頼んで、食事をとれるスペースのガスストーブの近くの席をもう立とうとしている夫婦に声をかけて譲ってもらい2人で腰掛ける。
「よかった席取れて。大分歩いて冷えたろ。おなかとかいたくない?」
「うん」
随分と身体が弱いと思われているようで千傘はことあるごとに陽登を心配してくれる。そんなに弱くはないし大丈夫なんだけどなぁ……と陽登は思いながらも、大事にされているようで悪い気はしなかった。
「俺ポットパイなんて食べんの初めて!すげー!超うまそう」
さっきまで完璧に陽登を気遣ってくれたのに、シチューではしゃぐ千傘は小学生みたいだ。パイをスプーンで崩すと感嘆を漏らして感激している。陽登はそれをかわいいと思って見つめていた。
ガスストーブの近くとは言え風が吹き抜けると少しさむい。けれどそれもまた外で食べている非日常感を演出していて、むしろ心地が良いと陽登は思いながらシチューを口にする。ポットパイで保温されたシチューは体をよく温めてくれた。
ご飯を食べ終わり身体が温まると急に感じていなかった尿意が高まってきて、陽登は気も漫ろにそわそわもじもじと足をすり合わせた。
早めにトイレに行きたいと言えという千傘の言葉を思い出す。早めにとは言うものの、陽登は尿意を感じるのが下手なほうであり、漏らすことが増えてからはその傾向はより強くなって、さらに尿意を感じてから我慢できる時間も最近はどんどんと短くなってきている。つまり、トイレに行きたいとは今初めて思ったわけだが、もう結構限界に近い尿意が急に襲ってきていた。
とりあえず千傘に断ってトイレに向かわなければとは思ったものの、陽登は千傘を見て固まる。尿意を感じてない時にトイレというのは恥ずかしくないのに、尿意が高まるにつれてむしろトイレと言うのが恥ずかしくなるのはなぜなのか。
「うちの風真がさ、サンタくるの今日だと思っててプレゼントがない~って朝から大号泣して、つられて夏葵も私もないって慌てて泣き出してさ、明日だって言ってんのにもう朝から大混乱で…」
千傘は楽しそうに可愛い兄弟の話をしていた。
「かわいい」
陽登は相槌を打って笑う。話を止めて「トイレに行きたい」という勇気がない。
その間にも体内の水分が体を出ようと勝手に出口の方へと押し寄せ始め、陽登は焦った。机の下で拳を握る。
(だめだ早くいわなきゃ……)
チャイのはいった紙カップを包むように握って持つ千傘の手を見つめその手を陽登は掴む。
「ん?」
「と、といれ……行きたい、かも……」
あまりにも陽登の声は小さく、陽登は周りの喧騒に自分の声がかき消されたんじゃないかと思った。
「でよっか」
千傘の声は優しく、すぐに立ち上がってゴミを捨て陽登の手を引いて外に出ようと向かった。
クリスマスマーケットの会場から外に出るのにも人が多く列が進まず、進みが遅い。トイレまでの道のりは遠く人が進むスピードは遅いのに、温かいストーブから離れ外の外気にさらされると尿意の高まるスピードは速くなる。手を繋いでいる千傘の手を陽登はぎゅっと握った。
「平気?」
「う、うん」
もう結構限界なことを陽登はいいだせなかった。早めに言えと言われたし、自分の中では気づいてから割とすぐにいったのに我慢出来ないことが嫌で、間に合うと陽登は自分に言い聞かせる。
じわじわ進む度人波に押され、前が詰まって立ち止まり、止まれも進めもしない状況がもどかしい。
(我慢我慢我慢我慢……)
呪文のように頭で唱えるものの、我慢している感覚がわからなくなり始めていて危うい。
(おしっこ……間に合わないかも……っ)
ふと弱気になった瞬間ぞわ…と急激な尿意が背筋に走り、陽登は足を止めた。急に立ち止まったせいで後ろから歩いてきた人が陽登にぶつかり、陽登は少しよろける。じゅわ、と少し濡れた感覚がする。
(まず……っ)
「すみません」
後ろの人は一声かけて陽登を器用に追い抜いていった。
コートのポケット越しに陽登は出口を押さえる。吸水パッドのおかげでちびった部分は濡れていないもの、そのパッドのせいでうまく出口を握ることもできない。尿意に気を取られて千傘の手を誤って離してしまい、気づけば千傘が隣りにいなかった。
漏らしても1回分くらいはきっと吸収してくれるはずだけど、こんなところではもらしたくなくて歩くのもままならず、そうしてフラフラしていると周りの人に舌打ちされてしまう。陽登がよたよたしているうちに千傘とずいぶん離れてしまった。
これ以上は見失ってしまうと焦って前に進もうとすると左右の人にぶつかってしまって、謝っている間に、後ろから押され、つんのめった。こけるかも、と思った瞬間温かい胸板にぶつかって千傘の腕の中に包まれた。
「危な……陽登、平気?ここちょっとさすがに混みすぎ」
やっと人混みの中普通に立てて、迷子にならなくてよかったと陽登はほっとした。
後退すらしていた陽登だったが、千傘に手を引かれると少し流れ出した人混みを千傘はうまくかいくぐり先へ先へとすすんだ。
手を引かれ歩いている間もお腹がくるしくて、ほんの少しすれ違った人のバッグが触れただけでじゅ、と少しまたちびってしまって足が震える。
やっと会場からは抜けたものの、ここから近くの建物の中のトイレまで行くまで間に合うとは思えない。
「ちか、さ……もう、むり、かも……っ」
千傘の手と、ポケットの中の抑えている手をぎゅぅ……と握って、震えた声で陽登は言った。
「もうちょっと頑張れ」
千傘が励ましてくれるが、もう歩いて我慢するのは限界でたちどまりかるく足踏みをする。
「……も、ぁるけな…っむり、でる」
止まった千傘に陽登は耳打ちで吸水パッドをあてていることをうちあける。
「も、ここで……」
涙目になりながら間に合わないからここで、と千傘に伝えたとののここは通路で人も多く、立ち止まっているわけにもいかず、我慢はできないけど衆目の中ではうまくだせもしない。でもトイレまで間に合わない。助けてほしくて千傘の服の裾ををぎゅっと握りすがるように見た。
千傘は半ば引きずる様に陽登を通り道から端の方に連れていきレンガの壁を背に陽登の頭を抱え引き寄せ、コートで包むように抱きしめた。
ちょうど周りから死角になるような形で顔が隠れ、陽登はの少し緊張がほどける。
「ん…っ」
足が震えて目をぎゅっとつむった。散々ちびったくせに、いざというとこんな場所ではなかなか出てこなくて、やはりトイレに行けたのではないか一瞬思う。けれど少しだけおなかに力を入れると本当に少しずつじわじわと足の間が温かく重くなっていった。
どこまで吸水してくれるのか不安がありつつ、一度出してしまうと止めたくても止まらなくて、じわじわとお漏らしをしてしまい、こんなところで周りにバレるのではないかと怖くて千傘のパーカーをぎゅっとにぎる。千傘は陽登の頭を大丈夫だと言うみたいにゆっくりと撫でた。
しばらくじっとしてようやく、まだ少し残っているような感覚はあるものの無事緊急事態を抜け出すようにお腹が軽くなって陽登は顔をあげると千傘の顔がすぐ目の前にあってどき、とする。
「ぁ…っ」
何をしてしまったんだろう。とようやく冷静になってかぁ、と耳まで赤くなった。
「でた?」
陽登は頷いた。
「わかりやす」
千傘にくすくす笑われて恥ずかしかった。
「ご、ごめ……っ」
「気持ち悪いだろ。なるべく早く変えられるとこいこ」
うつむきながら手を引かれ歩くと人気の少なくなった海沿いのカフェの近くに公衆トイレがあり、その多目的トイレに入る。
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