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繰り返された前日side次男

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夢がこんなに怖かったのは初めてだった。

ある日、父様たちが人間を拾ってきた。
街で母様たちを助けたかららしいけど。
小汚ないガキだった。

チビでぐしゃぐしゃの髪に折れそうな程細い体。

なんでこんなに汚いの拾ってきたんだろうと思った。
母様が言うには恩人なのだと。
こんなチビが恩人?と俺は思った。

メイドがチビをお風呂に入れて連れてきてビックリした。

チビはチビだけど、髪はキラキラで肌は真っ白。
この間、父様たちと出掛けた時に見た人形が立ってた。
本当に俺と同じ人間なのか怪しく思う程の綺麗な姿にちょっとだけ怖かった。
兄様を見れば目を見開いて驚いてるし、弟も同じ。
俺は最初に人形の様だと思ってしまったせいか何故かすごく怖いものに感じた。

その日の夢は未来の話なのかもしもの話なのかわからないけど、本当に怖い夢だった。

チビソフィアを怖いと感じたのは人間ではない様に感じるからだ。
そう結論付けて人間らしいところを見れば怖くなくなると思った。
幼い俺はその確認方法に一番やってはいけないことをしていた。
最初は軽く叩いた。
赤くなったチビソフィアの肌を見て人間なんだなって確認して。
次は、後ろから突き飛ばしたり足を掛けたり転んで血を流すのを見て自分と同じだと確認した。
そのうち、意味もなく手を挙げていた。
たぶん、止め方がわからなかった。
傷付いて涙を浮かべ俺を見るチビソフィアに優越感や支配欲を感じていた。
そんな年月を過ごしチビソフィアは美しい女性になっていた。
チビソフィアの結婚が決まった。
この家を出る最後までチビソフィアは俺に怯えていたが笑顔だった。
それはそうだろう。
意味なく(俺にはあったとしても)理不尽な暴力。
最低な扱いからやっと解放されるのだから。
顔もわからない男と乗り込んだ馬車に俺もやっと終わりを見付けた気がしてた。

そのすぐ後、チビソフィアの乗った馬車が襲われた。
真っ白な肌に良く似合っていた真っ白なウェディングドレスは暗い赤に染まって。
顔だって初めてあった時のように人形のようだった。

叫びにならない叫びを発しながら飛び起きた。
ガタガタと震えが止まらない。
俺のチビソフィアが。
俺の大切なチビソフィアが。

傷付けない。絶対に傷付けない。
今自覚したばかりのこの大切な気持ちを俺は絶対に忘れない。
チビソフィアは俺が守る。
この家で幸せになれば良い。
俺は幼い手を強く強く握り締めた。
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