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新たな町へ

143話 お決まりの……見ちゃ駄目よ!

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 一方。

 商業ギルドのワルドが、自分の執務室で雇った冒険者の報告を聞き、冒険者達を怒鳴り付ける。

「何をしているんですか!今日は、約束の2日目ですが、忘れたんですかね?」

「だが、彼処の宿に入れねぇんだから、仕方ないだろ!」

「入れない?そんな馬鹿な事が、有る訳がないですよ。嘘を付くなら、もう少しましな嘘を付きなさい!」

「本当なんだよ!俺達はあの宿には爪の先も、入れねぇ」

「だったら、宿なんて、やってられないだろうが?客は出入り出来てるのか?」

「ええ、他の客の殆どは、出入りが出来てるようで……」

「殆ど?訪れた客は、全員じゃなくてですか?」

「そうです。弾に俺らのように、全く入れねぇ客が居た」

「そ、そんな馬鹿な……。分かりました。ですが今夜もう一度、探ってください?分かりましたね」

「はぁ?入れねぇのに、まだ探るんで?」

「そうですが何か?ですが、……今から私が直に宿に行って様子を見てきます」

 そして夜は頼みますよ?全く、何でこんな事……。

 ぶつぶつと文句を良いながら、ギルドを出て目当てのカモメの宿屋に向かって行った。




 そして、今ワルドが目当ての宿の前に居る。

「……何ですか此処は、何故扉の向こうに入れない。宿屋は見えて居るのに?」

 宿の出入口前で立つワルドだが、その後ろから見知らぬ男が三人。ワルドを横目で見て邪魔そうに、避けながらすんなりと宿に入って行った。

「は?何であの三人が入れたのですか!成らば私も……」

 と中に入ろうとする。が……入れない。

「何故入れない!キィー馬鹿にしやがって、成らば」と宿屋に向かって突進して行き、壁に阻まれ激突しただけで終わった。

「い、痛い!」

 ドンと鈍い音と共に転がった。

 そんなことをしていると、宿の前を行き交う人に、怪しげな目で見られる。
 そして、親子連れの子供に不思議がられた。

「ねぇ、お母さん。あのおじちゃん変だよ?」 

 と、子供がワルドを指を指した。

「こ、これ、見ちゃ駄目行くわよ!」

 母親は子供の手を引き、係わると怖いと判断されたのか。見ない振りをして、通り過ぎて行った。
 しかし……、ワルドは怪しさ満点である。

「私は見せ物じゃ無いですよ!しかし、入れません……ねぇ。仕方が有りません今は、引きますか」

 ワルドも人の目線が、気になり出したのか。
 すごすごと、宿を後にして引き返して行った。
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