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第2章 これから始まる共同生活
二十六日目② おっちゃんの執務室にてまたも密談
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ギルド会館に着くと、キャサリンさんとは一旦お別れとなった。
キャサリンさんは、足早にギルド会館に入っていったんだけど……
その状況に驚いた。
なんと、誰ともぶつからなかったのだ。
ギルド会館は、探索の準備をする冒険者でごった返していた。
正直、ぶつからなかったためしはない。
なのにだ……。
ただのギルド職員のはずのキャサリンさんは、ぶつかるどころか相手に気付かれさえせずに、通り抜けていったのだ……
本当に、キャサリンさんは何者なんだ……
エルダを見ると、目をそらされてしまった。
きっとあれだ、知ってはいけない情報なんだ……
俺はそっと、その疑問に蓋をした。
気を取り直してギルド会館へはいると、案の定、人で溢れかえっていた。
掲示板の前では依頼書の争奪戦が繰り広げられていた。
「俺が先に手にした!!」
「いや!!俺たちが先だ!!」
「なにおぅ?」
「やるか!!」
「おう!!上等だ!!一緒に行くぞ!!」
「おう!!」
うん、仲良しさんだね……
そんなやり取りを横目に受付まで行くと、さらに驚いた。
キャサリンさんがすでに仕事を始めていた。
しかも同寮より処理速度が速い……
ほんと、何者ですかあなたは……
実は双子です的な落ちはないよね?
「さっきぶりです。キャサリンさんって実はすごい人なんですね?」
「そんなことはないわよ?それで、依頼受けるの?」
「いえ、その前にギルマスに用事がありまして、今会えますか?できれば至急案件です。」
「わかりました。ライル君!!ギルマスに「カイト案件」って至急伝えてきて一!!」
ライルと呼ばれた職員さんは手にしていた仕事をすぐに中断して、猛ダッシュで奥へと走っていった。
ちょっと待て。その『カイト案件』について詳しく教えてほしい。
場合によっては”脱毛剤”を本気で作れるように研究するぞ?
慌てて戻ってきた職員さんが、キャサリンさんに耳打ちをしていた。
「カイト君。これから大丈夫?今ならまだ手が空いているみたいだけど。」
「じゃあ、お願いします。できれば早い方がいいと思うので。」
「わかったわ。ついてきて。誰か、ここお願いしますね。」
「イエス!!マアム!!」
ん?なんか気のせいか?敬礼が見えた気がした……
き、気のせいだ……きっと……
キャサリンさんの後をついてギルマスの執務室へと移動した。
コンコンコン
「シャ……。ギルマス。カイト君たちをお連れしました。」
「ね……。おう、入ってくれ。」
ん?なんだ今の一瞬のやり取りは……
言い間違いなのか?
ま、気にしても仕方がないかな。
キャサリンさんの案内で部屋に入った俺たちは、勧められるままソファーに腰を下ろした。
シャバズのおっちゃんも仕事がひと段落していたようで、すぐにこっちのソファーに腰を下ろした。
「で?」
「いきなり第一声が「で?」は無いんじゃないのか?」
「いやいや。お前さんが来るときは大体厄介ごとだからな。話は簡潔の方がいい。」
「なんか納得いかな気がする……。まぁ、良いか。じゃあ簡潔に。簡易薬物作業台でエルダが回復ポーション(低)の作成に成功。あとはよろしく。」
……
…………
………………
何故沈黙が流れるのか……
奥の給湯室でキャサリンさんがお茶を入れる音だけが響いていた。
「わりぃな。俺は耳が悪くなったようだ。もう一回いいか?」
「え?だから、簡易薬物作業台でエルダが回復ポーション(低)の作成に成功。あとはよろしく。」
あれ?おっちゃんの顔が青くなっていくのは気のせいだろうか?
うん、きっと気のせいだ。
「おまたせ。お茶が入ったわ。熱いからきをつけてねって……どうしたの?」
「いや、「簡易薬物作業台でエルダが回復ポーション(低)の作成に成功。あとはよろしく。」って伝えたらこうなったんです。」
あれ?キャサリンさんのカップを持つ手が震えてる。
「エルダさんや。みんなどうしたの?」
「カイト……。事の重要性をもっと認識した方がいいわよ?これは革命とか改革とかそんな次元じゃないわ。いわば、異常事態よ?」
うん、それは理解してる。
だからおっちゃんに丸投げしようとしてるんじゃないか。
「カイト……。お前はどうしてこうも爆弾をぽいぽい俺に投げつけるんだ?俺を過労死させるつもりか?」
フリーズ状態から回復したおっちゃんが、何故か俺に文句を言い始めた。
解せぬ……
「カイト君。これは冒険者ギルドでどうにかできるレベルをはるかに超えてしまったわ。先日行われたギルド間定例会議の第一議題で取り上げられてもおかしくない話なのよ?下手をすると王国だけではなくて、この世界に存在する国に狙われることになるんだから。」
「えぇ、だからシャバズのおっちゃんに丸投げしに来たんです。それに、よく考えてみてよ。この前冒険者ギルドに机(簡易)と椅子(簡易)を卸しましたよね?その時SP回復補正が付くの確認しましたよね?つまり、俺が作る物の効果は、他の人にも及ぶってことですよ?それに収納箱(簡易)だって同じことが言えます。ということは、作業台だって使える可能性が高いってことです?だからエルダに試してもらったら、問題なく使えたってだけです。」
ぎろりとシャバズのおっちゃんが、俺を睨んでいる。
まあ、睨まれてもどうにもできないんだけどね。
「わかった。わかりました!!たく……ついてねぇなぁ~。この件は俺預かりする。カイト、この件絶対にもらすんじゃねぇ~ぞ。公爵閣下には俺から話を通す。たぶん数日中に呼び出しがあるから覚悟しておけよ?いいな?」
ですよね~。
キャサリンさんは、足早にギルド会館に入っていったんだけど……
その状況に驚いた。
なんと、誰ともぶつからなかったのだ。
ギルド会館は、探索の準備をする冒険者でごった返していた。
正直、ぶつからなかったためしはない。
なのにだ……。
ただのギルド職員のはずのキャサリンさんは、ぶつかるどころか相手に気付かれさえせずに、通り抜けていったのだ……
本当に、キャサリンさんは何者なんだ……
エルダを見ると、目をそらされてしまった。
きっとあれだ、知ってはいけない情報なんだ……
俺はそっと、その疑問に蓋をした。
気を取り直してギルド会館へはいると、案の定、人で溢れかえっていた。
掲示板の前では依頼書の争奪戦が繰り広げられていた。
「俺が先に手にした!!」
「いや!!俺たちが先だ!!」
「なにおぅ?」
「やるか!!」
「おう!!上等だ!!一緒に行くぞ!!」
「おう!!」
うん、仲良しさんだね……
そんなやり取りを横目に受付まで行くと、さらに驚いた。
キャサリンさんがすでに仕事を始めていた。
しかも同寮より処理速度が速い……
ほんと、何者ですかあなたは……
実は双子です的な落ちはないよね?
「さっきぶりです。キャサリンさんって実はすごい人なんですね?」
「そんなことはないわよ?それで、依頼受けるの?」
「いえ、その前にギルマスに用事がありまして、今会えますか?できれば至急案件です。」
「わかりました。ライル君!!ギルマスに「カイト案件」って至急伝えてきて一!!」
ライルと呼ばれた職員さんは手にしていた仕事をすぐに中断して、猛ダッシュで奥へと走っていった。
ちょっと待て。その『カイト案件』について詳しく教えてほしい。
場合によっては”脱毛剤”を本気で作れるように研究するぞ?
慌てて戻ってきた職員さんが、キャサリンさんに耳打ちをしていた。
「カイト君。これから大丈夫?今ならまだ手が空いているみたいだけど。」
「じゃあ、お願いします。できれば早い方がいいと思うので。」
「わかったわ。ついてきて。誰か、ここお願いしますね。」
「イエス!!マアム!!」
ん?なんか気のせいか?敬礼が見えた気がした……
き、気のせいだ……きっと……
キャサリンさんの後をついてギルマスの執務室へと移動した。
コンコンコン
「シャ……。ギルマス。カイト君たちをお連れしました。」
「ね……。おう、入ってくれ。」
ん?なんだ今の一瞬のやり取りは……
言い間違いなのか?
ま、気にしても仕方がないかな。
キャサリンさんの案内で部屋に入った俺たちは、勧められるままソファーに腰を下ろした。
シャバズのおっちゃんも仕事がひと段落していたようで、すぐにこっちのソファーに腰を下ろした。
「で?」
「いきなり第一声が「で?」は無いんじゃないのか?」
「いやいや。お前さんが来るときは大体厄介ごとだからな。話は簡潔の方がいい。」
「なんか納得いかな気がする……。まぁ、良いか。じゃあ簡潔に。簡易薬物作業台でエルダが回復ポーション(低)の作成に成功。あとはよろしく。」
……
…………
………………
何故沈黙が流れるのか……
奥の給湯室でキャサリンさんがお茶を入れる音だけが響いていた。
「わりぃな。俺は耳が悪くなったようだ。もう一回いいか?」
「え?だから、簡易薬物作業台でエルダが回復ポーション(低)の作成に成功。あとはよろしく。」
あれ?おっちゃんの顔が青くなっていくのは気のせいだろうか?
うん、きっと気のせいだ。
「おまたせ。お茶が入ったわ。熱いからきをつけてねって……どうしたの?」
「いや、「簡易薬物作業台でエルダが回復ポーション(低)の作成に成功。あとはよろしく。」って伝えたらこうなったんです。」
あれ?キャサリンさんのカップを持つ手が震えてる。
「エルダさんや。みんなどうしたの?」
「カイト……。事の重要性をもっと認識した方がいいわよ?これは革命とか改革とかそんな次元じゃないわ。いわば、異常事態よ?」
うん、それは理解してる。
だからおっちゃんに丸投げしようとしてるんじゃないか。
「カイト……。お前はどうしてこうも爆弾をぽいぽい俺に投げつけるんだ?俺を過労死させるつもりか?」
フリーズ状態から回復したおっちゃんが、何故か俺に文句を言い始めた。
解せぬ……
「カイト君。これは冒険者ギルドでどうにかできるレベルをはるかに超えてしまったわ。先日行われたギルド間定例会議の第一議題で取り上げられてもおかしくない話なのよ?下手をすると王国だけではなくて、この世界に存在する国に狙われることになるんだから。」
「えぇ、だからシャバズのおっちゃんに丸投げしに来たんです。それに、よく考えてみてよ。この前冒険者ギルドに机(簡易)と椅子(簡易)を卸しましたよね?その時SP回復補正が付くの確認しましたよね?つまり、俺が作る物の効果は、他の人にも及ぶってことですよ?それに収納箱(簡易)だって同じことが言えます。ということは、作業台だって使える可能性が高いってことです?だからエルダに試してもらったら、問題なく使えたってだけです。」
ぎろりとシャバズのおっちゃんが、俺を睨んでいる。
まあ、睨まれてもどうにもできないんだけどね。
「わかった。わかりました!!たく……ついてねぇなぁ~。この件は俺預かりする。カイト、この件絶対にもらすんじゃねぇ~ぞ。公爵閣下には俺から話を通す。たぶん数日中に呼び出しがあるから覚悟しておけよ?いいな?」
ですよね~。
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