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第十二話 漆黒のドラゴン
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俺たちはその後、急いで王城にある転移ポータルまで移動する。
俺はそこで驚いた。
6階層は1階層や2階層と雰囲気が似ていたのだ。目の前には大きな湖畔があり、横には人間の手によって植えられたように規則正しく木々が植えられている。
もう夜と言うこともあり、辺りは街灯の明かりのみだが、ここは確実にほんわかしていた。
本当にリーフェはここでさらわれたのだろうか。そんなことを思ってしまう。
「さて、ここからどうするか。リーフェはいったいどこにいるんだ?」
「私に任せてください! 多分、こっち!」
ユラはそう言うと、俺たちを先導し始めた。
ユラが持つ能力、死の香りが敵の居場所を教えてくれるようだ。
俺たちは明かりが灯された道を小走りで駆け抜けていく。
すると、空から咆哮が聞こえてくる。
「あいつ! 俺たちの居場所をしっているのか?」
大きな翼を羽ばたかせているその漆黒のドラゴンは俺を見ながら、急降下している。
「アラスくん、気を付けて。たぶんあのドラゴンが私が言っていたエネミー」
ユラはそう言うと、急降下しているドラゴン目掛け燃尽火玉を放つ。
だが、漆黒のドラゴンはびくともしない。
「分かっているよユラ」
俺はユラを安心させる様に、そう言う。だけど俺は恐怖しかなかった。
俺が覚えている魔法はラリアで学んだ下位魔法ばかり。上位魔法を一つ使えるとは言え、空中を浮遊するドラゴン相手じゃ分が悪い。
剣で戦うのも同じ理由で難しい。
「想像以上にでけえな......」
エラルドは小声でそう呟いていた。
「まったくだ」
そのドラゴンは翼の端から端まで15メートルほどの大きさがあった。
本来ならば6階層に現れるはずもないエネミー。それだけの貫禄はあった。
「アラス、お前本当にあいつ相手に一人でタンクする気か?」
エラルドは不安そうに言っていた。
俺は無言で頷く。
「俺なら剣も使えるから近距離戦もできる。それに火力で敵のドラゴンの攻撃も相殺させて見せる」
そう、これは俺にしかやれない役割だった。
「わかった。じゃあ、俺は敵の観察と魔道具による援護、それに副作用の解消をすればいいんだな?」
俺は頷く。サポートに徹すること。それはエラルドが一番だ。
「アラスくん、アラスくん。私は敵の弱点を攻撃すればいいんだよね? でも、弱点ってどこ?」
「わからない。けど、俺が時間を稼ぐ間、エラルドがそれを見つけてくれる」
「わかった! でも、危なくなったら、私はアラスくんを助けるからね」
ユラはいつものように笑顔でそう言う。
俺はそれに黙って頷く。
「じゃあ、皆。こいつを倒してリーフェを助けよう」
俺は再び鼓舞する。
すると、エラルドもユラも力強く頷いてくれる。
そう言っている間にも漆黒のドラゴンは急降下をしていて、やがて漆黒のドラゴンは急降下することを止めると、俺たちの前で浮遊していた。
「グルゥゥルル!!」
俺は羽根から生み出される風圧と、唸り声に圧倒される。
ドラゴンは俺を睨みつけている。
「アラス、先制攻撃するか?」
後方にいるエラルドはそう言っていた。
俺は首を横に振った。
俺は未だに戦わないで済む、都合のいい希望があると思ってるからだ。
だが、そう思った瞬間、漆黒のドラゴンは大きな咆哮すると、鋭い前足で俺を攻撃していた。
俺はそれを避ける。
漆黒のドラゴンは悔しそうに再び咆哮する。
「どうやら話し合いは無理のようだ。ユラ、エラルド! 頼んだ!」
「任せて!」
「おう!」
エラルドとユラの元気のいい声が聞こえてくる。
さて、俺も自分の役割を果たさなければ。
「燃尽火玉!!」
そう言って指をパチンと鳴らす。
2メートルほどの大きな火の玉が現れるので、俺は左手をドラゴン目掛け振る。
すると、油断していた漆黒のドラゴンは防御することも避けることもなく喰らっていた。
「ギュルルルルル......」
漆黒のドラゴンの鱗は剥がれ落ちていた。
よし、これならいける! 俺はそう思った。
俺は自分の足がエラルドのヒールによって治っていくのを確認しながら、次は別な魔法を試してみよう、と思う。
「風切り!!」
俺は漆黒のドラゴンにできる限り近づくとそう詠唱すると、漆黒のドラゴンは攻撃を防ごうと硬い翼で身を覆っていた。
びくともしていない漆黒のドラゴンは、チャンスとばかりに鋭い前足で俺を攻撃してくる。
俺は剣を鞘から抜き、それを受け止める。
ズシリという感触が剣から伝わってくる。
体重さが数倍あるから一撃がけた違いに重い。今にも体は後方に吹き飛びそうだったが、なんとか抑える。
よし、切り抜けたぞ! そう思った瞬間、漆黒のドラゴンは、今度は口から火炎放射を放とうとしているのだろう、大きく口を開けていた。
避けられる範囲にいない俺は、まずい、と思う。
額からは汗が何度も落ちる感触が頬を伝って伝わってくる。
ここでミスをしたら、俺は死ぬかもしれない。
だが、そうするしかない。
「燃尽火玉!」
俺は出来る限り大きな玉をイメージし、ドラゴンの口元目掛け投げる。
同時にドラゴンの口からは火の波が俺めがけ放たれていた。
延々と漆黒のドラゴンの口から放たれるそれは火力が足りないのか、俺の燃尽火玉に徐々に押されているようだ。
俺はほっと一息つく。
ドラゴンは自らが放った火炎が力不足だと悟ったのか、上空に物凄い速度で退避していた。
「あの野郎! どこ行きやがる!」
エラルドはそう言うと追いかける。案外、エラルドは向こう見ずのようだ。
「さすがアラスくんです! 一人で倒しちゃうなんて」
ユラはそう言うと笑っている。
「まだ倒してはいないんだ。きっとあのドラゴンは俺たちを罠に誘おうと、ゆっくり飛んでいる」
そう、漆黒のドラゴンは人間のエラルドでも追いつけるような速度で飛翔していた。
「でも、どうして?」
「それは俺にも分からない。でも、ドラゴンは狡猾な生き物じゃないはずだ。つまりは、目的地には別なエネミーがいる可能性が高い」
俺がそう言うとユラはハッとした表情をすると、
「でもリーフェさんもいる可能性が高いってことだね、アラスくん」
「そうだね。だから俺たちも急ごう」
頷くユラと共に俺たちも漆黒のドラゴンを追いかける。
すると漆黒のドラゴンは変化エリアに入り、空中で浮遊したまま俺たちを見ていた。
「ようやく観念したようだな」
エラルドはにやりと笑い、ドラゴンに近づいていく。
「エラルド、君は怖くないのか? これは罠かもしれないんだぞ!」
俺はそう言いながら、罠がないか辺りを確認する。
だが、だだっ広い草原のこのエリアに罠を隠せるエネミーの姿も、罠もないようだ。
それどころか、このエリアには俺たち以外に誰一人としていなかった。
俺は再び罠の可能性を考慮して、エラルドの肩を掴む。
「エラルド!!!」
すると、エラルドは冷静になったのか、
「わりぃ。どうも俺は昔から向こう見ずなところがあるんだよ。相手は強いし怖いのに。震えるほど怖いのにリミッターが外れるとな......」
そう言うと俺たちのところまでさがる。
「エラルド、ユラ。このエリアに人が一人もいないんだ」
俺がそう言うとユラとエラルドは辺りを見渡し、ハッとする。
「「たしかに!!」」
たしかにいない可能性もあるけど、まだ序盤の6階層でいないのはあり得ないといってもいい。
「ドラゴンの様子を見ると、たまたまってわけじゃなさそうだな」
「おそらくは」
「じゃあ、アラスくん。これは一体どういうこと?」
ユラは首を傾げながら俺を見ていた。
だが、俺には分からなかったので、「わからない」そう言おうとした時だ。
「その疑問に答えようか!」
誰もいるはずがない俺たちの後方から声が聞こえてくる。
俺は若干の恐怖を感じながらも後ろを振り向くと、そこには銀髪の上級生の姿があった。
そしてリーフェやユラと同じように美少女だ。だが、違うのは綺麗と可愛いの配分で、この女性の顔は半分半分で構成されていた。
俺はそこで驚いた。
6階層は1階層や2階層と雰囲気が似ていたのだ。目の前には大きな湖畔があり、横には人間の手によって植えられたように規則正しく木々が植えられている。
もう夜と言うこともあり、辺りは街灯の明かりのみだが、ここは確実にほんわかしていた。
本当にリーフェはここでさらわれたのだろうか。そんなことを思ってしまう。
「さて、ここからどうするか。リーフェはいったいどこにいるんだ?」
「私に任せてください! 多分、こっち!」
ユラはそう言うと、俺たちを先導し始めた。
ユラが持つ能力、死の香りが敵の居場所を教えてくれるようだ。
俺たちは明かりが灯された道を小走りで駆け抜けていく。
すると、空から咆哮が聞こえてくる。
「あいつ! 俺たちの居場所をしっているのか?」
大きな翼を羽ばたかせているその漆黒のドラゴンは俺を見ながら、急降下している。
「アラスくん、気を付けて。たぶんあのドラゴンが私が言っていたエネミー」
ユラはそう言うと、急降下しているドラゴン目掛け燃尽火玉を放つ。
だが、漆黒のドラゴンはびくともしない。
「分かっているよユラ」
俺はユラを安心させる様に、そう言う。だけど俺は恐怖しかなかった。
俺が覚えている魔法はラリアで学んだ下位魔法ばかり。上位魔法を一つ使えるとは言え、空中を浮遊するドラゴン相手じゃ分が悪い。
剣で戦うのも同じ理由で難しい。
「想像以上にでけえな......」
エラルドは小声でそう呟いていた。
「まったくだ」
そのドラゴンは翼の端から端まで15メートルほどの大きさがあった。
本来ならば6階層に現れるはずもないエネミー。それだけの貫禄はあった。
「アラス、お前本当にあいつ相手に一人でタンクする気か?」
エラルドは不安そうに言っていた。
俺は無言で頷く。
「俺なら剣も使えるから近距離戦もできる。それに火力で敵のドラゴンの攻撃も相殺させて見せる」
そう、これは俺にしかやれない役割だった。
「わかった。じゃあ、俺は敵の観察と魔道具による援護、それに副作用の解消をすればいいんだな?」
俺は頷く。サポートに徹すること。それはエラルドが一番だ。
「アラスくん、アラスくん。私は敵の弱点を攻撃すればいいんだよね? でも、弱点ってどこ?」
「わからない。けど、俺が時間を稼ぐ間、エラルドがそれを見つけてくれる」
「わかった! でも、危なくなったら、私はアラスくんを助けるからね」
ユラはいつものように笑顔でそう言う。
俺はそれに黙って頷く。
「じゃあ、皆。こいつを倒してリーフェを助けよう」
俺は再び鼓舞する。
すると、エラルドもユラも力強く頷いてくれる。
そう言っている間にも漆黒のドラゴンは急降下をしていて、やがて漆黒のドラゴンは急降下することを止めると、俺たちの前で浮遊していた。
「グルゥゥルル!!」
俺は羽根から生み出される風圧と、唸り声に圧倒される。
ドラゴンは俺を睨みつけている。
「アラス、先制攻撃するか?」
後方にいるエラルドはそう言っていた。
俺は首を横に振った。
俺は未だに戦わないで済む、都合のいい希望があると思ってるからだ。
だが、そう思った瞬間、漆黒のドラゴンは大きな咆哮すると、鋭い前足で俺を攻撃していた。
俺はそれを避ける。
漆黒のドラゴンは悔しそうに再び咆哮する。
「どうやら話し合いは無理のようだ。ユラ、エラルド! 頼んだ!」
「任せて!」
「おう!」
エラルドとユラの元気のいい声が聞こえてくる。
さて、俺も自分の役割を果たさなければ。
「燃尽火玉!!」
そう言って指をパチンと鳴らす。
2メートルほどの大きな火の玉が現れるので、俺は左手をドラゴン目掛け振る。
すると、油断していた漆黒のドラゴンは防御することも避けることもなく喰らっていた。
「ギュルルルルル......」
漆黒のドラゴンの鱗は剥がれ落ちていた。
よし、これならいける! 俺はそう思った。
俺は自分の足がエラルドのヒールによって治っていくのを確認しながら、次は別な魔法を試してみよう、と思う。
「風切り!!」
俺は漆黒のドラゴンにできる限り近づくとそう詠唱すると、漆黒のドラゴンは攻撃を防ごうと硬い翼で身を覆っていた。
びくともしていない漆黒のドラゴンは、チャンスとばかりに鋭い前足で俺を攻撃してくる。
俺は剣を鞘から抜き、それを受け止める。
ズシリという感触が剣から伝わってくる。
体重さが数倍あるから一撃がけた違いに重い。今にも体は後方に吹き飛びそうだったが、なんとか抑える。
よし、切り抜けたぞ! そう思った瞬間、漆黒のドラゴンは、今度は口から火炎放射を放とうとしているのだろう、大きく口を開けていた。
避けられる範囲にいない俺は、まずい、と思う。
額からは汗が何度も落ちる感触が頬を伝って伝わってくる。
ここでミスをしたら、俺は死ぬかもしれない。
だが、そうするしかない。
「燃尽火玉!」
俺は出来る限り大きな玉をイメージし、ドラゴンの口元目掛け投げる。
同時にドラゴンの口からは火の波が俺めがけ放たれていた。
延々と漆黒のドラゴンの口から放たれるそれは火力が足りないのか、俺の燃尽火玉に徐々に押されているようだ。
俺はほっと一息つく。
ドラゴンは自らが放った火炎が力不足だと悟ったのか、上空に物凄い速度で退避していた。
「あの野郎! どこ行きやがる!」
エラルドはそう言うと追いかける。案外、エラルドは向こう見ずのようだ。
「さすがアラスくんです! 一人で倒しちゃうなんて」
ユラはそう言うと笑っている。
「まだ倒してはいないんだ。きっとあのドラゴンは俺たちを罠に誘おうと、ゆっくり飛んでいる」
そう、漆黒のドラゴンは人間のエラルドでも追いつけるような速度で飛翔していた。
「でも、どうして?」
「それは俺にも分からない。でも、ドラゴンは狡猾な生き物じゃないはずだ。つまりは、目的地には別なエネミーがいる可能性が高い」
俺がそう言うとユラはハッとした表情をすると、
「でもリーフェさんもいる可能性が高いってことだね、アラスくん」
「そうだね。だから俺たちも急ごう」
頷くユラと共に俺たちも漆黒のドラゴンを追いかける。
すると漆黒のドラゴンは変化エリアに入り、空中で浮遊したまま俺たちを見ていた。
「ようやく観念したようだな」
エラルドはにやりと笑い、ドラゴンに近づいていく。
「エラルド、君は怖くないのか? これは罠かもしれないんだぞ!」
俺はそう言いながら、罠がないか辺りを確認する。
だが、だだっ広い草原のこのエリアに罠を隠せるエネミーの姿も、罠もないようだ。
それどころか、このエリアには俺たち以外に誰一人としていなかった。
俺は再び罠の可能性を考慮して、エラルドの肩を掴む。
「エラルド!!!」
すると、エラルドは冷静になったのか、
「わりぃ。どうも俺は昔から向こう見ずなところがあるんだよ。相手は強いし怖いのに。震えるほど怖いのにリミッターが外れるとな......」
そう言うと俺たちのところまでさがる。
「エラルド、ユラ。このエリアに人が一人もいないんだ」
俺がそう言うとユラとエラルドは辺りを見渡し、ハッとする。
「「たしかに!!」」
たしかにいない可能性もあるけど、まだ序盤の6階層でいないのはあり得ないといってもいい。
「ドラゴンの様子を見ると、たまたまってわけじゃなさそうだな」
「おそらくは」
「じゃあ、アラスくん。これは一体どういうこと?」
ユラは首を傾げながら俺を見ていた。
だが、俺には分からなかったので、「わからない」そう言おうとした時だ。
「その疑問に答えようか!」
誰もいるはずがない俺たちの後方から声が聞こえてくる。
俺は若干の恐怖を感じながらも後ろを振り向くと、そこには銀髪の上級生の姿があった。
そしてリーフェやユラと同じように美少女だ。だが、違うのは綺麗と可愛いの配分で、この女性の顔は半分半分で構成されていた。
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