極道恋浪漫

一園木蓮

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極道恋浪漫 第二章

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「そう……。けど、アレだな。皇帝様はキミらが帰ってしまって寂しそうにしているそうだぜ。遼からそう聞いた」
「皇帝様が……?」
 そう聞き返す表情からは嬉しいとも切ないともいえるような複雑な感情が垣間見える。ほんの一瞬のことだが、それを見逃すような紫月ズィユエではない。やはり冰は自らの意思でお邸を出て行ったわけではない――そう確信せざるを得なかった。
「皇帝様はこの九龍城砦を治めるようになってからご家族とは離れて暮らしているだろう? キミのことは本当の弟ができたようで嬉しいって思ってたみたいだからさ」
「……そう……ですか。イェンの……いえ、皇帝様には良くしていただいたのに申し訳ないことです。僕はまだ学生の身ですが、一生懸命勉強して、一日も早く皇帝様のカジノでお役に立てるよう励むつもりです。それが僕のできる皇帝様への恩返しと思っています」
 立派なディーラーになって少しでもカジノの役に立ちたい、冰はそう思っているようだった。
「そっか。それを聞いたら皇帝様はすごく喜ばれると思うよ」
「そう……でしょうか……。そう思っていただけるように精進して参りたいと思っています」
「冰君は年若いのにえらいな」
「いえ、そんな……」
 今日のところはひとまずこれくらいか――。あまり追い詰めたところでかえって逆効果だろう。紫月ズィユエは自ら冰をアパートまで送り届けると、遼二と合流することにした。

 椿楼へ戻ると、ちょうど遼二が訪ねて来たところだった。
「ああ、遼! 連絡しようと思ってたんだ。今、冰君を送って来たところだ」
 茶を勧めながら、そっちの塩梅あんばいはどうだ? と、互いに報告し合う。
「ご苦労だったな。俺の方も冰の同級生に話を聞くことができたところだ」
 遼二は昨夜訪れたカジノでの黄老人の様子と、たった今見聞きしてきた学園でのことについて打ち明けた。
「俺の見た限りじゃウォンの爺さんの方はこれといって気になるところは無かった。ただ、冰の方はもう少し探りを入れてみる必要がありそうだ」
 遼二はリリーというホステスが冰を訪ねて来たらしいことや、その理由について学生らから聞いたことなどを話して聞かせた。
「冰君を訪ねてホステスが――ね。そっか、もしかしてそれでかな。さっき冰君と話しててちょっと気になったことが……」
 それはほんの些細なことだそうだが、紫月ズィユエにはどうにも気に掛かってならなかったのだそうだ。
「冰君が皇帝様を呼ぶ時の呼び方なんだ。お邸にいた時は『イェンのお兄さん』って呼んでたべ? それがさ、なぜか『皇帝様』に変わってるんだ。ってよりも、イェンのお兄さんと言おうとして皇帝様と言い直したんだよ。その数、三回だ」
「三回?」
「そう、三回。ちょっと気に掛からねえか?」
 そもそも『イェン』という呼び方でいいと言ったのは皇帝イェン自身だ。遼二も紫月ズィユエもそう聞いている。それがなぜここへきて急に『皇帝様』という言い方に変わったのか、紫月ズィユエには非常に奇異な感じがしたというのだ。
「もうお邸を離れた身だからっていう遠慮があるのかも知れねえが、もしかしたら誰かに指摘されたとも考えられる」
「――とすると、例のリリーって女あたりか。学生らの話から考えても、どうやら冰の様子が変わったのはそのリリーって女が訪ねて来た時期と一致する」
「じゃあそのリリーに何か吹き込まれたってことか?」
「断定はできねえが、可能性としては有り得るな」
「そのリリーってのは皇帝様とは顔見知りなのかね?」
「さあ……。イェンからリリーという名を聞いたことはねえが、ホステスというならまるっきり知らねえ相手じゃねえのかも」
 二人はイェンに会って直接聞いてみることにした。
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