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極道恋浪漫 第二章
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焔邸、応接室――。
遼二と紫月からリリーについての話を聞くも、焔にはこれといって思い当たることはなさそうだった。むろん、焔も彼女の名は知っていたし、彼女の勤めるクラブにも幾度か足を運んだことはあったようだ。
「クラブ・ルーシュはこの地下街でも有名どころだからな……」
「やはり既知の仲だったか」
「ああ。近隣諸国から訪れたお偉いさんの接待やなんかの時にはたまに使う店だからな。リリーはいわばナンバーワンホステスだし、俺たちのテーブルにつくことも多かったが」
「そのリリーってのはどんな女なんだ。お前さんとの間柄は?」
例えば特別に深い仲だったというようなことはないのかと訊く。ところが焔に心当たりは無いようだった。
「仕事はできる女だ。連れて行った客への当たりは逸品で、卒なくこなしてくれる。性質もサバサバしていて男勝りというかな。向上心が高く、やり手と言える。リリー曰く、夜の世界で生きていく為に生まれて来た女だってのが口癖でな」
「ふむ、だったら俺の思い過ごしか――。もしかしたらそのリリーって女がお前さんに惚れてでもいて、冰が共に住んでいることが気に入らなかったのか――とかな。嫌味のひとつでも言われたんじゃねえかと勘繰ってしまったんだが……」
今の焔の話だとどうもそうではないらしい。
「彼女は出世の為に男を利用することはあっても、好いた惚れた程度で嫌味をぶつけるようなタイプじゃねえと思うがな」
それ以前に焔は彼女から恋情めいたものを持たれていると思うような兆候は感じたことがないというのだ。
「てめえで言うのも変な話だが、俺とてそんなに鈍感じゃねえつもりだがな。そんな感情があれば気付いたはずだ」
だがしかし、今のところ思い当たるとすればきっかけはリリー以外にない。しかも同級生らの話ではリリーが訪ねて来た頃と冰の様子が変わったのが同時期だ。加えて紫月が気に掛かったという焔の呼び方の件にしても、何らかの理由があるように思えてならない。
「では直接リリーを訪ねてみるか――。ちょうど明日は親父から頼まれた御仁の接待で、客人をバーかクラブで持てなさにゃならんところだったからな」
さしずめどこの店でも構わないので、リリーの勤めるルーシュに案内すればいいだろう。
「差し支えなければ俺も同席させてもらっても構わんか?」
「ああ、もちろんだ。明日接待する御仁だが、お前さんにも一度面通ししておこうと思っていたのでな」
その客人というのは世界的に有名なモデルで、名をレイ・ヒイラギというそうだ。
「レイ・ヒイラギだって? めちゃくちゃ有名なモデルじゃねえか」
「ああ。まあ年齢的には俺らの親父たちと同世代だからな。未だ現役ってのがすごいところだが。確かお前の親父さんとも懇意のはずだぞ」
「ああ。俺も親父から名前だけは聞いていたが、会うのは初めてだ」
「レイさんの息子の倫周も一緒に来るそうだから、良かったら紫月も来ねえか?」
倫周というのはレイの一人息子だそうだが、ヘアメイクアップアーティストとして父親の専属で活躍しているそうだ。とても気立の良く、歳も紫月と近いので、話も合うだろうと焔は言った。むろんのこと紫月も喜んで同席させてくれと快諾だ。
そういった和やかな接待の席上でならリリーにも怪しまれずに済むだろうし、和気藹々の会話の中でそれとなく冰のことを聞き出せるかも知れない。まさにいい機会といえた。
遼二と紫月からリリーについての話を聞くも、焔にはこれといって思い当たることはなさそうだった。むろん、焔も彼女の名は知っていたし、彼女の勤めるクラブにも幾度か足を運んだことはあったようだ。
「クラブ・ルーシュはこの地下街でも有名どころだからな……」
「やはり既知の仲だったか」
「ああ。近隣諸国から訪れたお偉いさんの接待やなんかの時にはたまに使う店だからな。リリーはいわばナンバーワンホステスだし、俺たちのテーブルにつくことも多かったが」
「そのリリーってのはどんな女なんだ。お前さんとの間柄は?」
例えば特別に深い仲だったというようなことはないのかと訊く。ところが焔に心当たりは無いようだった。
「仕事はできる女だ。連れて行った客への当たりは逸品で、卒なくこなしてくれる。性質もサバサバしていて男勝りというかな。向上心が高く、やり手と言える。リリー曰く、夜の世界で生きていく為に生まれて来た女だってのが口癖でな」
「ふむ、だったら俺の思い過ごしか――。もしかしたらそのリリーって女がお前さんに惚れてでもいて、冰が共に住んでいることが気に入らなかったのか――とかな。嫌味のひとつでも言われたんじゃねえかと勘繰ってしまったんだが……」
今の焔の話だとどうもそうではないらしい。
「彼女は出世の為に男を利用することはあっても、好いた惚れた程度で嫌味をぶつけるようなタイプじゃねえと思うがな」
それ以前に焔は彼女から恋情めいたものを持たれていると思うような兆候は感じたことがないというのだ。
「てめえで言うのも変な話だが、俺とてそんなに鈍感じゃねえつもりだがな。そんな感情があれば気付いたはずだ」
だがしかし、今のところ思い当たるとすればきっかけはリリー以外にない。しかも同級生らの話ではリリーが訪ねて来た頃と冰の様子が変わったのが同時期だ。加えて紫月が気に掛かったという焔の呼び方の件にしても、何らかの理由があるように思えてならない。
「では直接リリーを訪ねてみるか――。ちょうど明日は親父から頼まれた御仁の接待で、客人をバーかクラブで持てなさにゃならんところだったからな」
さしずめどこの店でも構わないので、リリーの勤めるルーシュに案内すればいいだろう。
「差し支えなければ俺も同席させてもらっても構わんか?」
「ああ、もちろんだ。明日接待する御仁だが、お前さんにも一度面通ししておこうと思っていたのでな」
その客人というのは世界的に有名なモデルで、名をレイ・ヒイラギというそうだ。
「レイ・ヒイラギだって? めちゃくちゃ有名なモデルじゃねえか」
「ああ。まあ年齢的には俺らの親父たちと同世代だからな。未だ現役ってのがすごいところだが。確かお前の親父さんとも懇意のはずだぞ」
「ああ。俺も親父から名前だけは聞いていたが、会うのは初めてだ」
「レイさんの息子の倫周も一緒に来るそうだから、良かったら紫月も来ねえか?」
倫周というのはレイの一人息子だそうだが、ヘアメイクアップアーティストとして父親の専属で活躍しているそうだ。とても気立の良く、歳も紫月と近いので、話も合うだろうと焔は言った。むろんのこと紫月も喜んで同席させてくれと快諾だ。
そういった和やかな接待の席上でならリリーにも怪しまれずに済むだろうし、和気藹々の会話の中でそれとなく冰のことを聞き出せるかも知れない。まさにいい機会といえた。
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