極道恋事情

一園木蓮

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告げられないほどに深い愛(極道若頭編)

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「つかさ、遼二にゃ覚えやすいパスでも、氷川にとっちゃすぐに忘れちまいそうな決め方じゃね?」
 またしても頬の熱をごまかさんと紫月は訊いた。
「俺の場合は李や劉にも伝えてあるからな。その点は心配ねえんだが。――そうだな、もしもこの先、俺に恋人ができた日にゃ、今度は俺が決めさせてもらうってのもいいかもな?」
 ニヤっと笑いながら周が得意顔をしてみせた。
「ああ、早くそんな日が来ることを祈っとくぜ」
 鐘崎もクスッと笑ってはうなずいてみせる。と同時に、
「俺も今後は紫月と……それから源さんにもパスを共有しとくことにしよう」
 そう言って自らの手落ちを反省してみせた。
「ま、その方が安心だな。つか、氷川の恋人かぁ! そしたらダブルデートとかできそうじゃん!」
 紫月もうなずきながら期待大といったように囃し立てる。
「ダブルデートって……お前なぁ。ってことは、お前らの方は上手く収まるところに落ち着いた……ってことでいいわけだな?」
 ここを訪ねて来た時からの二人の様子を見ていて、おそらくは永年の想いを打ち明け合えたのだろうことが周にも薄々と感じられていたようだ。
「ああ、お陰様でな。年が明けたら親父たちにも報告して、紫月と祝言を交わそうと思ってる」
「おいおい……、またえらく急なことだな!」
 さすがの周も驚きを隠せない。一昨日の事件がきっかけとなって互いに想いを打ち明けられたのだろうとは思ったが、まさか祝言などという言葉が出てくるとは思いもしなかったのだ。
「まあ、籍をどうするかとか具体的なことは何も決めちゃいねえんだが、俺と紫月の仲を組の連中や親しい周囲には伝えようと思ってる」
 鐘崎が照れつつも穏やかな表情で言う。
 確かに急な話と言えなくもないが、鐘崎にとってはそれこそ永い間胸に思い描いてきた未来だったに違いない。昨日今日の思い付きではないのだろう。周も友の幸せそうな顔が見られて、素直に嬉しいと思うのだった。
「そうか。じゃあ俺もお前らに負けねえようにそろそろ真剣に連れ合い探しでもするかな」
「探すって、お前マジでそういう相手いねえのかよ?」
 周のことだ。数多の女性が放っておかないだろう魅力あふれる彼なら、黙っていてもいくらでも声が掛かりそうなのに、そういえば未だに色めいた話は聞いたことがないのを不思議そうにしながら紫月が首を傾げた。
「あいにくそういった相手はいねえな。お前らみてえに幼馴染ってのも日本にはいねえし、出会いが有りそうでねえってのも実のところだしな」
「はぁ、案外そんなもんなのか……」
 せっかくダブルデートを楽しみにしてるのにと言いたそうな表情で紫月が残念顔だ。
「まあ、縁ってのはどこに転がってるか分からねえものだ。ある日突然降って湧いたように出会うってこともあるだろうしな」
 焦ることはないと言う鐘崎の気遣いの言葉だったが、これから二年の後、彼の言った通り周にも運命に導かれる出会いが待っていようとは、この時は誰も想像し得なかったのだった。



◇    ◇    ◇


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