極道恋事情

一園木蓮

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恋敵

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「そうなんですか……。それは大変ですね」
「ごめんよ、突然こんな話を聞かせてしまって。でもキミも同業だったと思ったら、つい――ね」
 張は弱音を吐いてしまって情けないというような顔つきで苦笑したが、意外にも冰としてはとっさに閃いた思いつきに瞳を見開いてしまった。
「ね、張さん。その潰しちゃいたいカジノっていうのは……どんなお店なんです?」
「ん? どんなって、体裁は俺たちの店とそう変わらない普通のカジノさ。ガイドブックなんかにも載っているし、店構えも怪しいわけじゃないから、観光客なんかも結構入っているな。まあ、彼らにとってはそれが狙いなんだけどね。一見さんに等しい客を相手にイカサマで悪どく稼いでいるのさ」
「なるほど。滅多に何度も訪れない観光客が相手なら、訴えられることも少ないというわけですね? でも――イカサマで稼げちゃうってことは、そのお店のディーラーさんも腕はいいってことなんですよね?」
「まあ、そうなんだろうな。と言ってもキミほどの神ディーラーではないだろうけどね」
「いえ、そんな……」
 おどけたようにウィンクをしながらそんなふうに持ち上げてくれる張に、冰は恐縮しつつも思い切って閃きを打ち明けてみようと思った。
「張さん、すみません。ちょっと待っていていただけますか? あ、お時間大丈夫ですか?」
「ん? ああ、構わないよ」
「ありがとうございます!」
 冰はペコリと頭を下げると、社長のテーブルへと戻って逸るようにこう訊いた。
「社長さん! あの……さっき、もしも俺が彼女の横領分を肩代わりできたら許してもいいっておっしゃってくださいましたよね?」
 突飛なことを言い出した冰に、社長はむろんのこと、一緒にテーブルで待っていた紫月も同様、驚いたように瞳を見開いた。
「お金を全額お返しできたら、彼女を闇市に売ることはしないでいただけますか?」
「え? あ、ああ……。それはまあ、構わないが……」
 だが、まさか五千万円もの大金を肩代わりできるはずもなかろうと、半信半疑で瞳を丸めている。
 冰はコクりとうなずくと、
「お金が用意できるかも知れません。数日――いえ、明日の朝までで結構です。待っていただけませんか?」
 真剣な顔つきで社長を見つめた。
「明日までって……まさか、あそこにいる知り合いの御仁に……都合してもらえることにでもなったというわけか?」
 社長は張の方をチラリと見やりながらそう訊いた。冰が少しの間話し込んでいたのを観察しながら、たまたま居合わせたその男がよほどの金持ちかなにかで、金を都合してくれるとでも言ったのかと思ったからだ。
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