極道恋事情

一園木蓮

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恋敵

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「お、お客様……お待ちください……! 如何でしょう? もう一度私にチャンスをくださいませんか? 私としてもこのままでは立つ背がございません。よろしければもう一度勝負を……」
 その申し出に、観客たちは期待の視線を輝かせる。そうは断れないようにと、周囲を味方にせんとのディーラー側の思惑である。冰の方は一瞬戸惑うように困惑顔をしてみせたが、ムキになったようにしてその勝負を受けると言った。
「……いいわ。だったら次で本当に最後よ?」
「ありがとうございます。それで、賭けの額ですが――今お勝ちになられた分を全額というのでは如何でしょう?」
「……全額ですって!?」
「ええ。お嬢様は先程こうおっしゃいました。元々このカジノで遊ばれる為のお金だと。それに、私としましてもイカサマ呼ばわりもされたことですし、ここはひとつ名誉挽回をさせていただきたく思うのですが」
 ディーラーの言葉を受けて、再び観客たちが騒ぎ出す。こうなれば嫌とは言えないだろうとの目論みなのだ。
 冰は少々眉をしかめつつも首を縦に振らざるを得なかった。
 とはいえ、この流れに持ってくるのが本当の目的であるわけなのだが、そこはおくびにも出さずに演技を続ける。真田も大わらわといった調子で援護射撃にかかった。
「お嬢様、おやめください! 爺は今度こそ絶対に反対でございますぞ! いくら何でも二度も奇跡が起こるなど有り得ません! それに……せっかくこんな大金を稼げたのでございますよ? 勿体のうございます! このまま換金して今夜はお暇致しましょうぞ!」
 だが、観客たちは既に興奮状態である。続きを見たいと次々と野次馬が集まっては、終ぞヤジまで飛び出す始末となった。
「爺さん、やらせてやりなって!」
「そうだ、そうだ! 勝負なんてものは咲くも散るも一瞬の花なんだぜー!」
「お嬢様もまさかここで逃げたりなんかしねえよなー?」
 まるでてんやわんやの大騒ぎである。客たちの声援に後押しされたディーラーはホッとしつつも今度こそ失敗しないとばかりに額をヒクつかせている。冰は致し方なくといった形で申し出を受けることとなった。
「わ、分かったわよ……。お受けすればいいんでしょう……?」
「そんな! お嬢様! おやめください! なんと言われても爺は反対でございます!」
「う、うるさいわよ! 爺やは黙ってなさい!」
「いいえ、黙りません! 絶対に反対でございます!」
「そ、そんなにキィキィ騒がないでちょうだい! 他の方々が見ていらっしゃるじゃないの! みっともないわ! それに……も、元々遊びなんですもの……」
 例え負けても仕方がない、そんなふうに諦めの表情で唇を噛んでみせる。すると、波に乗ったディーラーからは少々上から目線の言葉が飛び込んできた。
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