245 / 1,212
恋敵
51
しおりを挟む
「お前、不安には思わなかったのか? いきなり現れた見ず知らずの女に元恋人だなんて吹かれたんだ。驚いたろうに」
口づけから解放すると同時に長い指先で髪を漉きながら周が問う。すると、冰は意外にも穏やかにはにかみながらこう答えた。
「うん、最初聞いた時はビックリしたけど、でも白龍みたいにカッコいい人だもん。付き合ってた女性がいたっておかしくないし、当然かなって。ただ、今もまだ諦められないでいるみたいだったからさ。それについてはどうしようってちょっと思ったけど……。でも案外平気でいられたのは紫月さんのお陰なんだ」
冰にとって紫月は、周と自分の仲を一等よく知る人物であり、それと同時に周が二股を掛けるような男でないことを信じ切ってくれている周の長年の親友だ。そんな彼が傍に居てくれることは何より心強く、励みに思えていたのだ。
「何て言ったらいいんだろう。あの時は紫月さんが白龍のように思えてさ。不思議な安心感をもらえたっていうか……紫月さんを通して白龍と鐘崎さんもすぐ側で見守ってくれているような感じがしたっていうか……。とにかく自分でもビックリするくらい冷静でいられたんだよね。それに、あの女の人が何を言っても、その都度紫月さんが受け止めてくれてさ。まるで盾になるみたいに守ってくれたっていうのかな。俺はすっかりお任せしきりだったけど、すごく助かったんだよ。一人だったら心臓バクバクしちゃってパニくってたかも」
えへへと苦笑ながらもそんなことを言った冰を、背中から包み込むように抱き締めた。
「例え誰が好意を持ってこようが、俺にはお前だけだ。未来永劫、俺が愛するのはお前ただ一人だと誓う。それだけは忘れてくれるなよ?」
「白龍、うん……俺もね、なんていうか無意識にだけどそう思ってたんだなって、今になって気付いたんだ。静雨さんが今でも白龍を好きだとしても、会えば白龍が何とかしてくれるだろうって。不思議なんだけどさ、白龍のことを好きだと言われても不安には思わなかったっていうか、自分でもびっくりするくらい落ち着いていられたんだよ」
「つまり――信じてくれてたってことだな?」
「あー、そっか! そうなんだね、きっと」
「俺がお前を裏切るようなことはしねえと信じられたから落ち着いていられた――そうだな?」
「うん」
「それでいい。俺たちは――例えどんな横槍が入ろうと、互いを信じ合える本物の伴侶という証だ。俺は恋人として、そして生涯の伴侶としてお前だけを愛すると誓う。何があってもこれだけは揺るがねえからな」
「ん……うん! 俺も白龍だけを……んと、その……あ、愛……」
頬どころか耳まで朱に染めながら『愛している』という言葉を恥ずかしそうに口ごもって言えずにいる様子がたまらなく愛おしかった。周はそのまま華奢な身体を軽々と姫抱きすると、待ちきれないというように真っ直ぐベッドへと向かった。
やさしく丁寧に服をくつろげながら、
「周冰――」
色香のある声でポツリとそうつぶやかれたのに、冰は不思議そうに瞳を見開いた。
「……え?」
「お前の名だ。明日、香港へ帰ったらすぐにでも籍を入れたい」
「白龍……?」
「本当は披露目の宴と共にそうする予定だったが、とてもじゃねえが待っていられない気分だ。俺とお前が伴侶だという明らかな形の為にも一刻も早く同じ性を名乗りたい」
「白龍……」
「これは俺の我が侭だが――お前が嫌でなければ是非ともそうして欲しい」
「嫌だなんて! そんなことあるわけない……!」
口づけから解放すると同時に長い指先で髪を漉きながら周が問う。すると、冰は意外にも穏やかにはにかみながらこう答えた。
「うん、最初聞いた時はビックリしたけど、でも白龍みたいにカッコいい人だもん。付き合ってた女性がいたっておかしくないし、当然かなって。ただ、今もまだ諦められないでいるみたいだったからさ。それについてはどうしようってちょっと思ったけど……。でも案外平気でいられたのは紫月さんのお陰なんだ」
冰にとって紫月は、周と自分の仲を一等よく知る人物であり、それと同時に周が二股を掛けるような男でないことを信じ切ってくれている周の長年の親友だ。そんな彼が傍に居てくれることは何より心強く、励みに思えていたのだ。
「何て言ったらいいんだろう。あの時は紫月さんが白龍のように思えてさ。不思議な安心感をもらえたっていうか……紫月さんを通して白龍と鐘崎さんもすぐ側で見守ってくれているような感じがしたっていうか……。とにかく自分でもビックリするくらい冷静でいられたんだよね。それに、あの女の人が何を言っても、その都度紫月さんが受け止めてくれてさ。まるで盾になるみたいに守ってくれたっていうのかな。俺はすっかりお任せしきりだったけど、すごく助かったんだよ。一人だったら心臓バクバクしちゃってパニくってたかも」
えへへと苦笑ながらもそんなことを言った冰を、背中から包み込むように抱き締めた。
「例え誰が好意を持ってこようが、俺にはお前だけだ。未来永劫、俺が愛するのはお前ただ一人だと誓う。それだけは忘れてくれるなよ?」
「白龍、うん……俺もね、なんていうか無意識にだけどそう思ってたんだなって、今になって気付いたんだ。静雨さんが今でも白龍を好きだとしても、会えば白龍が何とかしてくれるだろうって。不思議なんだけどさ、白龍のことを好きだと言われても不安には思わなかったっていうか、自分でもびっくりするくらい落ち着いていられたんだよ」
「つまり――信じてくれてたってことだな?」
「あー、そっか! そうなんだね、きっと」
「俺がお前を裏切るようなことはしねえと信じられたから落ち着いていられた――そうだな?」
「うん」
「それでいい。俺たちは――例えどんな横槍が入ろうと、互いを信じ合える本物の伴侶という証だ。俺は恋人として、そして生涯の伴侶としてお前だけを愛すると誓う。何があってもこれだけは揺るがねえからな」
「ん……うん! 俺も白龍だけを……んと、その……あ、愛……」
頬どころか耳まで朱に染めながら『愛している』という言葉を恥ずかしそうに口ごもって言えずにいる様子がたまらなく愛おしかった。周はそのまま華奢な身体を軽々と姫抱きすると、待ちきれないというように真っ直ぐベッドへと向かった。
やさしく丁寧に服をくつろげながら、
「周冰――」
色香のある声でポツリとそうつぶやかれたのに、冰は不思議そうに瞳を見開いた。
「……え?」
「お前の名だ。明日、香港へ帰ったらすぐにでも籍を入れたい」
「白龍……?」
「本当は披露目の宴と共にそうする予定だったが、とてもじゃねえが待っていられない気分だ。俺とお前が伴侶だという明らかな形の為にも一刻も早く同じ性を名乗りたい」
「白龍……」
「これは俺の我が侭だが――お前が嫌でなければ是非ともそうして欲しい」
「嫌だなんて! そんなことあるわけない……!」
25
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる