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恋敵
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周としては、籍が変わる冰の気持ちを考えて、披露目の日までは雪吹の性を名乗らせておいてやるつもりだったのだが、今回のようなことがあるとどうにも気が逸ってならないのだ。互いの想いは揺るぎないと分かってはいても、形にしてしまいたいと思うのは男の欲張りというものだろうか。周はすまなそうに瞳を細めながらも、自らの素直な思いを包み隠さず口にしたのだった。
「予定よりも少し早いがお前に指輪を贈ろう。俺たちが唯一無二の伴侶だという証の指輪だ。明日、早速選びに行きたいと思っている」
「白龍……いいの?」
「もちろんだ。それと同時に入籍の手続きもしたいと思うが、いいか?」
髪を漉きながら、額と額をコツリと合わせてそう問う。冰はもう頬と耳どころか鎖骨から胸元までを真っ赤に紅潮させながらも、潤み出した涙を愛しい男の胸に擦り付けるようにしてコクコクとうなずいたのだった。
「――あのドレス、似合ってたぜ」
「え……?」
「お前の女装姿だ。あの格好のままで抱くってのもたまにはいいかと思ったが、着替えちまったからな。もう少し見ていたかった気もするが」
そうなのだ。カジノから唐静雨らの待つホテルへ向かう前にドレスは脱いでしまったし、化粧も落としてしまったので、今はいつもの冰なのだ。
「だって、いくら何でも社長さんたちと会うのに女装のままじゃまずいかなと思ってさ」
「まあな。あんな綺麗な姿を見知らぬ他人に見せてやる義理もねえしな」
そうは言うものの、やはり名残惜しい気がするのも事実なのだ。
「あ、あのさ……だったらもう一回着てみようか?」
冰がモジモジとしながら訊くと、
「ああ、いずれまた――な?」
周はニッと口角を上げて笑い、そのまま細い肢体を包み込むように抱き締めては、何度もついばみながら唇を重ね合わせた。
「今はもう待てねえからな」
言葉通り逸った雄が腰元を撫でた感覚に、冰もまた熟れるほどに頬を染め上げたのだった。
「白龍……大好き……」
「ああ。俺もだ」
「あの、俺……ずっと、ずっと傍にいて……いんだよね?」
「当然だろうが。ずっと一緒にいてくれなきゃ困る。誓うぜ。二度と離さねえ!」
「うん、うん……!」
「なぁ、冰――」
「――? ん?」
「さっきの真田の白髭の変装を見てて思ったんだ。――何十年か後には俺の髭も髪も白くなって、いずれ追い掛けるようにお前も白髪になって……俺たちは二人でじいさんになって召されるまでぜってえ一緒にいるんだってな」
「白龍ってば……。でも白髪の白龍もカッコいいんだろうな。それに……髭が白くなるのも渋いよね。何だかドキドキしちゃうなぁ。おじいさんになった白龍かぁ……。っていうか、ロマンスグレー?」
遠い未来の自分たちを想像しながら頬を染めた冰を、周は逞しい腕で抱き締めた。
「白髪のお前も可愛いだろうぜ?」
今はまだ筋肉が固く張っているこの腕も、いつかは細くなり筋力も衰える時がくるのだろう。それまでずっとずっと一緒に生きていこう。
ずっと、ずっと未来永劫――。
「予定よりも少し早いがお前に指輪を贈ろう。俺たちが唯一無二の伴侶だという証の指輪だ。明日、早速選びに行きたいと思っている」
「白龍……いいの?」
「もちろんだ。それと同時に入籍の手続きもしたいと思うが、いいか?」
髪を漉きながら、額と額をコツリと合わせてそう問う。冰はもう頬と耳どころか鎖骨から胸元までを真っ赤に紅潮させながらも、潤み出した涙を愛しい男の胸に擦り付けるようにしてコクコクとうなずいたのだった。
「――あのドレス、似合ってたぜ」
「え……?」
「お前の女装姿だ。あの格好のままで抱くってのもたまにはいいかと思ったが、着替えちまったからな。もう少し見ていたかった気もするが」
そうなのだ。カジノから唐静雨らの待つホテルへ向かう前にドレスは脱いでしまったし、化粧も落としてしまったので、今はいつもの冰なのだ。
「だって、いくら何でも社長さんたちと会うのに女装のままじゃまずいかなと思ってさ」
「まあな。あんな綺麗な姿を見知らぬ他人に見せてやる義理もねえしな」
そうは言うものの、やはり名残惜しい気がするのも事実なのだ。
「あ、あのさ……だったらもう一回着てみようか?」
冰がモジモジとしながら訊くと、
「ああ、いずれまた――な?」
周はニッと口角を上げて笑い、そのまま細い肢体を包み込むように抱き締めては、何度もついばみながら唇を重ね合わせた。
「今はもう待てねえからな」
言葉通り逸った雄が腰元を撫でた感覚に、冰もまた熟れるほどに頬を染め上げたのだった。
「白龍……大好き……」
「ああ。俺もだ」
「あの、俺……ずっと、ずっと傍にいて……いんだよね?」
「当然だろうが。ずっと一緒にいてくれなきゃ困る。誓うぜ。二度と離さねえ!」
「うん、うん……!」
「なぁ、冰――」
「――? ん?」
「さっきの真田の白髭の変装を見てて思ったんだ。――何十年か後には俺の髭も髪も白くなって、いずれ追い掛けるようにお前も白髪になって……俺たちは二人でじいさんになって召されるまでぜってえ一緒にいるんだってな」
「白龍ってば……。でも白髪の白龍もカッコいいんだろうな。それに……髭が白くなるのも渋いよね。何だかドキドキしちゃうなぁ。おじいさんになった白龍かぁ……。っていうか、ロマンスグレー?」
遠い未来の自分たちを想像しながら頬を染めた冰を、周は逞しい腕で抱き締めた。
「白髪のお前も可愛いだろうぜ?」
今はまだ筋肉が固く張っているこの腕も、いつかは細くなり筋力も衰える時がくるのだろう。それまでずっとずっと一緒に生きていこう。
ずっと、ずっと未来永劫――。
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