極道恋事情

一園木蓮

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極道たちのクリスマスパーティー

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 その中の誰よりも感激の声を上げたのはむろんのこと周と鐘崎の旦那二人である。
「こいつはすげえ……!」
「ああ、本当にな……! ケーキというより芸術品だ」
 上手い褒め言葉も詰まってしまうくらいに感激の面持ちでじっとケーキを見つめている。
「食っちまうのがもったいねえな」
「同感だ……! 三十年生きてて……嬉しいことも確かにたくさんあったが、こんな感動は体験したことがねえっていうか……な」
「その通りだな。上手く言葉にならんが、とにかく格別な気分だ――!」
 想像以上に感激に浸る二人に、冰も紫月もくすぐったいような笑みを浮かべては、互いの肩を突き合いながら頬を染めている。
「喜んでくれるだろうなぁとは思ってたけどさ、まさか……ンなに感動してくれるとはさ」
「ホントですね! 俺、もっと軽ーいノリで即つまみ食いとかしそうっていう想像してたんで、何だかこっちが感動しちゃいました」
 ケーキを焼いた当人たちにとっても意外なくらいの反応だったようだ。
「ん! そんじゃ遼たちも感激してくれたことだし、早速食うか! 見た目もがんばったが、味の方もなかなかイケてると思うぜ!」
「ですよね! やっぱり味も肝心ですから」
 紫月と冰が切り分けようとナイフを手にすると、周と鐘崎が慌てたようにして割って入った。
「おわー! ちょい待った!」
「切る前に写真だ、写真!」
 こんなに素晴らしい芸術的なケーキだ。贔屓目を差し引いても本心からこのまま食べずに飾っておきたいと思ってしまうくらいのものを写真にだけでも残しておきたいのは男心である。
「俺はこれを待ち受けにするぞ! 香港の家族にも見せて自慢するんだ」
「待ち受けとはいいアイディアだな。俺もそうしよう! となると、角度が重要だな。接写でこのブルーベリーの部分を浮き上がらせてえな」
 周と鐘崎はケーキの周りで様々な角度から何枚もシャッターを切っては、子供のようにはしゃいでいる。長身で立派なナリとは裏腹に、まるで少年に戻ったかのような二人の様子に、真田をはじめ紫月の父親や綾乃木など周囲の大人たちは微笑ましく見つめるのだった。
「よーし、そんじゃ皆んなで記念撮影といくか!」
 ケーキ本体をしっかり写真に収めた後は全員でケーキを取り囲んでの記念撮影である。
「だったらクリスマスツリーのところで撮るべ!」
 紫月が皆を誘導して、真田ご自慢の本物のもみの木のツリーの下で賑やかな撮影大会と相成った。
「よし、それじゃ食おうぜ! 昨日スポンジの味見はしたけどちゃんとクリーム乗せたのは食ってねえからさぁ」
 紫月が再びナイフとフォークを手にしたその時だった。
「紫月、待て。入刀は一緒にやらねえと!」
 鐘崎が待ったをかけると、周も冰の肩を抱きながらそれぞれのケーキの前に立ち、愛しい伴侶の手に大きな掌を重ねた。
「まあ素敵! ウェディングケーキの入刀みたいだわ!」
 里恵子が胸前で手を組んで羨ましそうに頬を紅潮させる。
「ええ、そうなんでございます。数年前に鐘崎の坊ちゃまが始めて以来、クリスマスケーキを切り分ける際は夫婦で入刀するのが恒例となっておりましてな」
 真田が経緯を説明する。
「まあ、そうでしたの! 素敵な伝統だわ!」
 はしゃぐ里恵子を横目に、
「俺たちもなるべく早く本番を迎えてえな」
 森崎がそっと抱き寄せながら甘やかに耳打ったのだった。
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