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三千世界に極道の華
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「頭を狂わせちまうだって? 冗談じゃないよ! このアタイにそんな男の相手をしろってのかい?」
「まあそうわめくな。狂わせるったって何もパーになるってわけじゃねえ。頭から聞いた話じゃ、単に記憶を曖昧にさせるって代物らしいぜ?」
「記憶を曖昧にだって? どういうことさ」
「野郎はこのところずっと男花魁の元に通い詰めてたようだが、今じゃすっかりそういうことも忘れちまってるってことだ。身体的には何ら影響がねえそうだから安心しなって! おめえの色仕掛けがすんなりいくように手助けしてやったまでよ」
「はぁん、そんじゃあの男は自分が誰だかも分かってないってことかい?」
「ま、そういうこった。分かったらグズグズ言ってねえで早えとこ野郎をモノにしろ。てめえの身体でヤツを骨抜きにして惚れさせりゃーいいんだ」
「ふ……ん! 男花魁を買ってたようなヤツを相手にしろってかい? 今の今まで男に突っ込んでたようなヤツに抱かせてやるなんざ、本当だったらごめんだけどね」
「だが見てくれはめちゃくちゃいい男だろうが? てめえだってちっとは野郎に傾いてるんじゃねえかい?」
男に肩を突かれて、女は頬を染めた。それを悟られんとプイとそっぽを向いて頬を膨らませる。男はニタニタと笑みを浮かべながら先を続けた。
「やっぱり満更でもねえってか。まあツラだけは腹立つくれえに整ってやがるのは確かだからな。せいぜいサービスして野郎を惚れさせるこった。ヤツがお前さんに夢中になりゃ、あとは煮るなり食うなり好きにできるんだからな。せいぜい励むこったな」
「わ、分かったよ……やりゃあいいんだろ。その代わり、アタイを花魁にしてくれるって約束をお忘れでないよ!」
「ああ、分かってるって! ほら、催淫剤だ。こいつを酒に混ぜて上手いこと飲ませな! 後はお前さんお得意の床技でしっぽり楽しみゃいいってことよ。散々男を手玉に取ってきたお前さんだ。そんくれえチョロいもんだろうが!」
男は女の手を掴んで小さな紙包みを握らせると、『抜かるなよ!』と念押ししてから部屋を出て行った。
「ふん……! 好き放題言いやがって。アタイを何だと思ってるのさ」
女はブツブツと文句を垂れていたが、言われた通りに渡された紙包みを開けて中身の粉を徳利へと流し込んだ。
「催淫剤だなんて……こんなもん……! アタイにかかればこんな粉なんざ使わなくたってどんな男もイチコロだってのにさぁ。まあいいわ。昨夜まで男に突っ込んでたってのが癪に触るけど、確かにイイ男だし――これからはアタイが本物の快楽を教えてやろうじゃないかい」
フフフと笑いながら女はつらつらと独りごちると、縁側に座り込んだままでいる鐘崎の側へ行き、まったりとした口調でしなだれかかった。
「まあそうわめくな。狂わせるったって何もパーになるってわけじゃねえ。頭から聞いた話じゃ、単に記憶を曖昧にさせるって代物らしいぜ?」
「記憶を曖昧にだって? どういうことさ」
「野郎はこのところずっと男花魁の元に通い詰めてたようだが、今じゃすっかりそういうことも忘れちまってるってことだ。身体的には何ら影響がねえそうだから安心しなって! おめえの色仕掛けがすんなりいくように手助けしてやったまでよ」
「はぁん、そんじゃあの男は自分が誰だかも分かってないってことかい?」
「ま、そういうこった。分かったらグズグズ言ってねえで早えとこ野郎をモノにしろ。てめえの身体でヤツを骨抜きにして惚れさせりゃーいいんだ」
「ふ……ん! 男花魁を買ってたようなヤツを相手にしろってかい? 今の今まで男に突っ込んでたようなヤツに抱かせてやるなんざ、本当だったらごめんだけどね」
「だが見てくれはめちゃくちゃいい男だろうが? てめえだってちっとは野郎に傾いてるんじゃねえかい?」
男に肩を突かれて、女は頬を染めた。それを悟られんとプイとそっぽを向いて頬を膨らませる。男はニタニタと笑みを浮かべながら先を続けた。
「やっぱり満更でもねえってか。まあツラだけは腹立つくれえに整ってやがるのは確かだからな。せいぜいサービスして野郎を惚れさせるこった。ヤツがお前さんに夢中になりゃ、あとは煮るなり食うなり好きにできるんだからな。せいぜい励むこったな」
「わ、分かったよ……やりゃあいいんだろ。その代わり、アタイを花魁にしてくれるって約束をお忘れでないよ!」
「ああ、分かってるって! ほら、催淫剤だ。こいつを酒に混ぜて上手いこと飲ませな! 後はお前さんお得意の床技でしっぽり楽しみゃいいってことよ。散々男を手玉に取ってきたお前さんだ。そんくれえチョロいもんだろうが!」
男は女の手を掴んで小さな紙包みを握らせると、『抜かるなよ!』と念押ししてから部屋を出て行った。
「ふん……! 好き放題言いやがって。アタイを何だと思ってるのさ」
女はブツブツと文句を垂れていたが、言われた通りに渡された紙包みを開けて中身の粉を徳利へと流し込んだ。
「催淫剤だなんて……こんなもん……! アタイにかかればこんな粉なんざ使わなくたってどんな男もイチコロだってのにさぁ。まあいいわ。昨夜まで男に突っ込んでたってのが癪に触るけど、確かにイイ男だし――これからはアタイが本物の快楽を教えてやろうじゃないかい」
フフフと笑いながら女はつらつらと独りごちると、縁側に座り込んだままでいる鐘崎の側へ行き、まったりとした口調でしなだれかかった。
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