538 / 1,212
三千世界に極道の華
61
しおりを挟む
「問題はそこだ。剣でやり合うのは紫月と飛燕任せになる。遼二もガキの頃から飛燕の道場で剣術を学んではいたが、今のままの状態じゃどの道使い物にはならんだろうな。何にせよ薬に打ち勝って記憶を取り戻さなきゃ始まらん。あとは飛燕の道場を手伝っている綾乃木も剣術には長けているから助力を願っておいた」
「そいつは心強えな」
「詳しいことは修司坊に伝えてある。今夜には紫月の親父の飛燕と綾乃木も施設に入り込めるように手配してある。お前らは三浦屋に帰って修司坊と連携してくれ。表向きは何も知らないまま営業を続けるふりをして、秘密裏に武器庫にあるブツを運び出すのが第一目的だ」
「分かった。だが、カネのことは……」
「遼二のことは俺が責任を持って敵方に堕ちるのを防ぐ。正直なところヤツが記憶を取り戻せるかどうかはヤツ自身の精神力にかかっていると言って過言じゃねえが……。いずれにせよ例の女を相手にするには俺が遼二に成り代わる必要がある。倫周に言って至急傷のメイクだけはしてもらわねばならん。源さんを護衛につけてできるだけ早く倫周をよこしてくれと伝えてくれ」
「分かった。そっちは任せてくれ。三浦屋に帰り次第ここへ向かってもらうが……心配なのはやはりカネのことだ。ヤツの記憶はどうすれば取り戻せる」
「DAに関しちゃ解毒薬というのはねえからな。何か遼二の記憶を揺さぶる衝撃というか、きっかけのようなもんがあれば或いは――とも思うが、今の段階じゃおそらく俺のツラを見ても見知らぬ他人としか映らんだろうな」
「だったら一之宮はどうだ。ヤツに会わせれば何か思い出すかも知れねえ」
「その可能性もあるが、花魁である紫月をむやみに外へ連れ出して敵に見つかりでもしたら厄介だ。今は極力動かねえに越したことはない。とにかく遼二のことは物理的には守るから安心しろ。紫月にもそう伝えて、くれぐれも無茶な行動は慎むように言ってくれ」
「……分かった」
周と橘はこの場を僚一に任せて、一旦三浦屋へと戻っていったのだった。
◇ ◇ ◇
一方、その三浦屋の方では鐘崎らに薬物が盛られた経緯について源次郎と春日野が調べを進めていた。可能性としては料理か酒に混入されたと考えられるが、他の皆は何ともないことから花魁の座敷に出される膳の中に何らかの細工が成されたと仮定して、まずは厨房近辺から探りを入れていった。
しばらくすると、春日野が少々気になることを聞きつけたと言い、源次郎の元へと飛んで来た。厨房で食材を出し入れしている下男たちが休憩中に話していた愚痴の中に引っ掛かる話題があったというのだ。
「そいつは心強えな」
「詳しいことは修司坊に伝えてある。今夜には紫月の親父の飛燕と綾乃木も施設に入り込めるように手配してある。お前らは三浦屋に帰って修司坊と連携してくれ。表向きは何も知らないまま営業を続けるふりをして、秘密裏に武器庫にあるブツを運び出すのが第一目的だ」
「分かった。だが、カネのことは……」
「遼二のことは俺が責任を持って敵方に堕ちるのを防ぐ。正直なところヤツが記憶を取り戻せるかどうかはヤツ自身の精神力にかかっていると言って過言じゃねえが……。いずれにせよ例の女を相手にするには俺が遼二に成り代わる必要がある。倫周に言って至急傷のメイクだけはしてもらわねばならん。源さんを護衛につけてできるだけ早く倫周をよこしてくれと伝えてくれ」
「分かった。そっちは任せてくれ。三浦屋に帰り次第ここへ向かってもらうが……心配なのはやはりカネのことだ。ヤツの記憶はどうすれば取り戻せる」
「DAに関しちゃ解毒薬というのはねえからな。何か遼二の記憶を揺さぶる衝撃というか、きっかけのようなもんがあれば或いは――とも思うが、今の段階じゃおそらく俺のツラを見ても見知らぬ他人としか映らんだろうな」
「だったら一之宮はどうだ。ヤツに会わせれば何か思い出すかも知れねえ」
「その可能性もあるが、花魁である紫月をむやみに外へ連れ出して敵に見つかりでもしたら厄介だ。今は極力動かねえに越したことはない。とにかく遼二のことは物理的には守るから安心しろ。紫月にもそう伝えて、くれぐれも無茶な行動は慎むように言ってくれ」
「……分かった」
周と橘はこの場を僚一に任せて、一旦三浦屋へと戻っていったのだった。
◇ ◇ ◇
一方、その三浦屋の方では鐘崎らに薬物が盛られた経緯について源次郎と春日野が調べを進めていた。可能性としては料理か酒に混入されたと考えられるが、他の皆は何ともないことから花魁の座敷に出される膳の中に何らかの細工が成されたと仮定して、まずは厨房近辺から探りを入れていった。
しばらくすると、春日野が少々気になることを聞きつけたと言い、源次郎の元へと飛んで来た。厨房で食材を出し入れしている下男たちが休憩中に話していた愚痴の中に引っ掛かる話題があったというのだ。
22
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる