極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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「すまねえな。世話を掛ける」
「いいのよ。旦那様はゆっくりしてて!」
 チャーミングにウィンクを飛ばす里恵子に任せながら周もまたドカリとソファへ背を預けた。目の前では鐘崎と紫月がニヤニヤと視線をくれている。
「ま、冰君は相変わらず可愛いし! 氷川が過保護になるのも仕方ねえわな!」
「ゾッコンだからな」
 二人から交互に冷やかされて周はタジタジと苦笑させられる。その直後だ。
「わっ……たーッと! 俺もやっちまった! 冰君のこと言えたギリじゃねえわ!」
 冰同様、素手でフルーツを頬張っていた紫月が高級メロンをタワーの皿から滑らせて、慌てて掴んだ拍子に果汁で両の掌をベタベタにしてしまったのだ。
「わ……ッ! おめえまで何やってんだ、おい……」
 鐘崎が慌てて卓上にあったおしぼりを差し出すも、こうなったらそれこそ洗った方が早い。
「あっはっは……。ドジなぁ、俺! ついでに冰君と連れションでもしてくるわ」
 紫月が照れ笑いと共に身軽に席を立っていくのを見送ると、周と鐘崎の旦那衆二人はやれやれと肩をすくめながらも愛しげに笑い合ったのだった。
 そんな和やかな雰囲気が一転したのは、それから間もなくのことだった。暢気に出て行った紫月が顔面蒼白という様子でとんぼ帰りしてきたからである。
「遼、氷川! 来てくれ! すぐにだ!」
 尋常でないその様子に旦那二人は険しく眉根を寄せた。何も聞かずとも緊急事態が起こったことを察したからである。
 すぐに席を立って化粧室へと駆け付けると、紫月の慌てぶりが理解できる光景が広がっていた。
「ドアを開けた瞬間にこの臭いだ。冰君と里恵子ママの姿も見つからねえ……」
 化粧室の中には微かにクロロフォルムの臭いが漂っており、冰も里恵子も見当たらないことから誰かに拉致された可能性を悟った紫月がすぐに鐘崎らを呼びに戻ったというわけだ。
「クソッ! なんだってあいつらが……! まだ遠くへは行ってねえはずだ!」
「紫月! 念の為おめえは表の入り口の方を頼む!」
「分かった!」
 周と鐘崎は急ぎ裏階段へ通じる扉へと向かった。ここで拉致したのなら、当然店の入り口を通るはずもない。裏階段から連れ去るのが妥当だからだ。案の定、店先の方には黒服も立っているし、他の客らの目にもつくので何も変わったことはなかったという。紫月が店の外へ出て裏口へ走ると、ちょうど裏階段を降りて来た鐘崎らと合流した。
「表は異常なしだ! そっちは!?」
「こっちも人影は見当たらねえ。一足遅かったか……」
「クソッ! 何処へ行きやがった……」
 周はすぐに側近の李へと応援の要請を入れると、冰に持たせているGPSで現在地を追ってくれるようにと伝えた。結果が来るまでの間に三人は周辺の車などを調べて回ったが、あいにく裏手の方は閑散としていて人影もまばらだ。まるで何事もなかったかのようないつもの街並みが広がっているのみだった。
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