極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
598 / 1,212
孤高のマフィア

21

しおりを挟む
「冰と里恵子の二人を連れ去ったなら、おそらく車だろうが……えらく手際がいい。計画的犯行か」
「とすると、目的は里恵子か……?」
 この場合、どちらかというと冰は巻き添えを食らった可能性が高いと三人は踏んでいた。里恵子の店で拉致に遭ったことから考えて、そう考えるのが自然だ。たまたま化粧室で一緒にいた冰のことも、顔を見られたなどの理由から仕方なく連れ去ったのだろうと推測できる。まさか本当の目的は冰の方で、それこそたまたま一緒にいた里恵子が共に拉致されたなどという事実に辿り着けるはずもなかった。
「今、李にGPSで追ってもらっている。俺たちは店の防犯カメラを調べるぞ!」
「森崎にも連絡を入れてすぐに来てもらおう」
 周と鐘崎はすぐさま黒服を呼んで店内外の映像のチェックに取り掛かった。
 防犯カメラは数ヶ所に設置されていたが、そのどこにも犯人らしき人物は見当たらない。冰と里恵子が化粧室へと向かう際の映像はかろうじて確認できたものの、肝心の連れ去られる瞬間が映っていないのだ。その内の一台にガムテープが貼られているのが分かったが、貼られる瞬間の手の映像以外は確認できなかった。もしも犯人が防犯カメラの位置まで把握していたとするならば、いよいよ計画的犯行の線が濃厚だ。大会社のビルなどと違って常時防犯カメラを監視している警備室などもないことから、ガムテープなどで遮られたとしてもすぐには気付けなかったわけだ。
「森崎が到着したら、ここ最近で里恵子が拉致されるような事案があったかどうか確かめる必要があるな」
「ああ。ある程度犯人と思わしき人物が絞り込めたところでウチの組員らを総動員して当たらせる」
 そうこうしている内に李がすっ飛んでやって来た。
「老板! 冰さんの位置ですが、老板が贈られた腕時計のみ反応がありました!」
 つまり、スマートフォンの方は犯人によって潰されたということだ。まあ拉致しようなどというくらいの犯人ならば当然か。こういう時はやはり別口でGPSを持たせておいて正解だったと言える。ところが、李からはあまり喜ばしい報告が聞けない事態に焦ることとなった。
「現在地は掴めました。ですが……これが示す場所に冰さんがいらっしゃる可能性は薄いと思われます」
 どういうことだと周らは顔を見合わせる。
「今、腕時計があるのは割合近くなのですが……」
 なんとその場所が貴金属やブランド品の買い取りをしている質屋だというのだ。李の差し出したタブレットを見つめながら、周と鐘崎は険しく眉根を寄せてしまった。
「まさか身に付けていた宝飾類を売り飛ばしたってわけか?」
 拉致されてからまだそう時間は経っていない。質入れが事実ならば、よほど周到な企てを持っている犯人といえる。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

禁断の祈祷室

土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。 アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。 それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。 救済のために神は神官を抱くのか。 それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。 神×神官の許された神秘的な夜の話。 ※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。

処理中です...