極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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「とにかく急ごう! ここの質屋は確か――新参者の若え野郎がつい最近開いた店だ。客の素性を詮索せずに明らかに盗品まがいと思われる物でも簡単に引き取るとの噂でな。正直、同業者の間じゃあまりいい評判は聞かねえ」
 鐘崎の組ではこの種の業者とも普段から繋がりがあるが、昔からそれ一本で生業にしている者たちからも評判が良くない店らしい。
 表看板にも査定は短時間で身分証明なども必要ないようなことがうたってあり、割合頻繁に店舗の場所を移しながら闇を掻い潜って営業しているそうなのだ。冰らを拐った犯人がそれを知っていたかは別としても、噂通りの店なら即換金できた可能性が高い。既にGPSがそこを示しているということはもう犯人に追いつくことも難しいかも知れないが、とにかく今は手掛かりを辿るしか方法はない。周と鐘崎らは急ぎその質屋へと向かった。
 応対に出てきたのは見るからに軽そうな空っとぼけた男だったが、鐘崎組の名を聞くと同時にギョッとしたように顔色を変えると、聞かれたことに対してペラペラと暴露し始めた。
「た、確かにおっしゃる通り……ついさっき質入れの客が来るには来ましたが……」
「そいつが置いてった物を全部出してもらおうか」
「は、え……あ、はい……只今」
 男はすごすごと店の奥へ引っ込むと、たった今質入れされた宝飾類を持ってきて鐘崎らの前へと差し出した。
「これで全部か?」
「はい、間違いねっす……」
 男が並べた物の中には冰の腕時計はもちろんのこと、二人の財布をはじめ、里恵子の指輪やイヤリング、それに昨年のクリスマスに周と鐘崎が贈った純金製のキーホルダーまでがあるのに驚かされた。
「ヤツら……金になりそうなモンは根こそぎ売り飛ばしていったってわけか」
 当然だが財布からは現金やカード、免許証などもろとも抜き取られており、小銭の一枚すら残ってはいない。ただ、冰のも里恵子のも質の高い高級品であることから、財布自体には値が付くと踏んだのだろう。この短時間に二人が身に付けていた貴金属類を全て引っ剥がしたことはある意味感心せざるを得ない。
 さすがに足がつくと思ったのかスマートフォンは見当たらない。とすると、冰のガーネットの宝石が付いたストラップの価値には気付かなかったようだ。暗くて見落とした可能性もあるが、一目で宝石とガラス玉の見分けがつかないとすれば、玄人の目利きというわけではなさそうだ。
 いずれにしてもよほど金に困っているか、あるいは普段からこうした略奪に慣れているのかは知れないが、とにかく手際がいいのは確かだ。
「それで、これを持ってきたのはどんなヤツだ。男か女か――ツラに風貌。いくらで引き取ったのかはもちろん、話していた内容などもできる限り詳しく教えてもらうぞ」
 鐘崎が凄みをかけると、男は冷や汗を拭いながらタジタジと頭を掻いてみせた。
「持ち込んできたのは野郎が一人でした。歳は三十代後半か四十くらいだったかな……。あ、でも顔はグラサンしてたしハッキリとは分からないっスよ?」
 男の言うにはどうやら相手も急いでいたようで、換金額に関してはそれほどしつこくなかったという。いくらでもいいから金になれば御の字という調子だったそうだ。
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