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孤高のマフィア
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「うーん、どうも様子がおかしいわ。劉さん、ぜったい何か隠してらっしゃる」
清美が難しい顔で腕組みをしていると、後輩の英子が興味ありげに首を傾げた。
「清美先輩、何かあったんですか? 雪吹さんがどうのってお話してらしたようですけど」
冰が以前拉致に遭ったことは受付嬢らの間では知らない者はいない。劉の不審な態度からしても、またもや何か事件めいたことでも起こったのかと気持ちが逸るわけだ。
「うん、まだ何とも言えないけど……女のカンからすれば何かあったのは間違いない気がするわね。まさかだけど……雪吹君がまた誘拐されちゃったとか」
「ええッ!? まさか……!」
英子も驚き顔だ。
「雪吹君ってめっちゃイケメンだし……、だけど社長や李さんたちと違って線が細いっていうのかしら。なんていうか、上手く言えないけど……性格もやさしいし、つけこまれやすい雰囲気満々なのよねぇ。こんなこと言ったら怒られるかも知れないけど、良からぬ組織に目をつけられて食い物にされちゃいそうな危うい感じっていうの?」
「それで誘拐ですか? んもう! 先輩、映画じゃないんですから!」
英子は笑うが、清美は存外真面目なようだ。
「そうよ、まさに映画かアニメならさ。雪吹君を気に入った悪の組織に誘拐されて、危ないところを間一髪で社長が助けに行くとか! なーんかそんな想像が浮かんじゃうのよねぇ」
「いやだ、清美先輩ったら! それじゃボーイズラブじゃないですか! あー、でも確かに社長と雪吹さんなら絵になりますよね! アタシ、今度の同人誌イベントでそんな漫画描いてみようかな」
どうやらこの英子という後輩は創作が趣味らしく、以前から同人誌なども発行しているらしい。清美自身はあまり興味がないようだが、彼女の影響で理解はあるのだ。
「そういえば英子、ボーイズラブ好きだったわね。まあうちの社長は抜群のイケメンだし、何て言ったっけ? あんたがよく言ってるスーパー……なんだっけ?」
「スパダリですよ、スパダリ! スーパーダーリン! 社長のようなスパダリに美青年秘書の雪吹さんかぁ。そうだわ、美しい秘書が別の誰かに惚れられちゃって誘拐される。あわやこれまでかっていうアブナイところへスパダリ社長が助けに来るとか最高じゃないですか! ああ……なんかいいのが描けそうな気がしてきました!」
英子はすっかり妄想の世界に入ってしまったようだが、清美にとっては今の英子のひと言で閃いたことがあったようだ。
「そうだわ、そういえば……」
ガサゴソと受付デスクの中をまさぐると、一枚の名刺を取り出して英子へと差し出した。
「ねえ、あんたも覚えてるでしょ? ちょっと前に社長を訪ねて来た元社員だったとかいう男の人!」
「ああ……博多から来たとかいう。ええ、もちろん覚えてますけど」
名刺を見つめながら英子もうなずいた。
清美が難しい顔で腕組みをしていると、後輩の英子が興味ありげに首を傾げた。
「清美先輩、何かあったんですか? 雪吹さんがどうのってお話してらしたようですけど」
冰が以前拉致に遭ったことは受付嬢らの間では知らない者はいない。劉の不審な態度からしても、またもや何か事件めいたことでも起こったのかと気持ちが逸るわけだ。
「うん、まだ何とも言えないけど……女のカンからすれば何かあったのは間違いない気がするわね。まさかだけど……雪吹君がまた誘拐されちゃったとか」
「ええッ!? まさか……!」
英子も驚き顔だ。
「雪吹君ってめっちゃイケメンだし……、だけど社長や李さんたちと違って線が細いっていうのかしら。なんていうか、上手く言えないけど……性格もやさしいし、つけこまれやすい雰囲気満々なのよねぇ。こんなこと言ったら怒られるかも知れないけど、良からぬ組織に目をつけられて食い物にされちゃいそうな危うい感じっていうの?」
「それで誘拐ですか? んもう! 先輩、映画じゃないんですから!」
英子は笑うが、清美は存外真面目なようだ。
「そうよ、まさに映画かアニメならさ。雪吹君を気に入った悪の組織に誘拐されて、危ないところを間一髪で社長が助けに行くとか! なーんかそんな想像が浮かんじゃうのよねぇ」
「いやだ、清美先輩ったら! それじゃボーイズラブじゃないですか! あー、でも確かに社長と雪吹さんなら絵になりますよね! アタシ、今度の同人誌イベントでそんな漫画描いてみようかな」
どうやらこの英子という後輩は創作が趣味らしく、以前から同人誌なども発行しているらしい。清美自身はあまり興味がないようだが、彼女の影響で理解はあるのだ。
「そういえば英子、ボーイズラブ好きだったわね。まあうちの社長は抜群のイケメンだし、何て言ったっけ? あんたがよく言ってるスーパー……なんだっけ?」
「スパダリですよ、スパダリ! スーパーダーリン! 社長のようなスパダリに美青年秘書の雪吹さんかぁ。そうだわ、美しい秘書が別の誰かに惚れられちゃって誘拐される。あわやこれまでかっていうアブナイところへスパダリ社長が助けに来るとか最高じゃないですか! ああ……なんかいいのが描けそうな気がしてきました!」
英子はすっかり妄想の世界に入ってしまったようだが、清美にとっては今の英子のひと言で閃いたことがあったようだ。
「そうだわ、そういえば……」
ガサゴソと受付デスクの中をまさぐると、一枚の名刺を取り出して英子へと差し出した。
「ねえ、あんたも覚えてるでしょ? ちょっと前に社長を訪ねて来た元社員だったとかいう男の人!」
「ああ……博多から来たとかいう。ええ、もちろん覚えてますけど」
名刺を見つめながら英子もうなずいた。
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