極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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「冰ちゃん……? 今のはいったい……」
 どういうことなんだと歩きながら里恵子が問う。冰は未だフロア内に警戒しながらも種明かしをしてみせた。
「あのディーラーはイカサマを行っていましたからね。おそらくカード自体本来の五十二枚が揃っておらず、ある程度思い通りの目が出せるようにしてあるんでしょう。テーブルにいた客と組んで始終合図を送り合っていましたから。負けが詰んでいたのは香港の方のようでしたし、周のお父様のカジノへも行ったことがあるようでしたのでちょっと気の毒に思ったもので」
 要はイカサマでいいようにカモにされていた客に肩入れしてやったというわけらしい。
「そうだったの……。でもさすがに冰ちゃんね。周さんや遼二たちから話に聞いてはいたけど、すごい腕前だわ! ちょっと見ただけでイカサマを見破って、しかも勝たせちゃうんですもの!」
 里恵子にしてみれば直に凄技を目の当たりにして興奮冷めやらぬというところなのだ。
 それにしてもさすがに闇カジノというだけあってか、どのテーブルでもあからさまと思えるイカサマが目につく。先程の客のようにまんまと引っ掛かる者も多いようだが、中には逆にディーラーを出し抜かんとしている客もいるようだ。そんな中で悪目立ちしない程度に上手くテーブルを梯子しながら冰は自らもゲームに参加すると、地道に勝ちを重ねていった。そうして換金をする頃にはそこそこの金額を稼ぎ出す結果となった。
 まあ冰にとってはこれでもかなりセーブしたほうである。変な話だがその気になれば容易に大勝ちできるだろうディーラーしかおらず、冰の目から見れば破れたザルのようなものである。だがここで本気を出してしまえば嫌でも注目されてしまう。時には負け、また時にはまずまずの勝ちっぷりを繰り返しては、最終的にかなり運良く稼げた程度に留めてこの夜を終えることにしたのだった。
 そうして換金した金を手に裏手の事務所で待っていた拉致犯の男の元へ戻った。
「よう、兄さん! カジノは楽しめたかい?」
 意気揚々と出迎えた男であったが、その直後に驚きを通り越した蒼白へと顔色を変えさせられる羽目となった。なんと冰はその全額を彼の目の前に差し出してみせたからだ。
「こいつぁ……いったい」
 いかにセーブしたといえども余裕で札束が立つほどの金額である。絶句顔でポカンと大口を開ける男を前に、冰は更なる驚きの文句を口にした。
「お陰様で楽しく遊ばせていただきました。あなたにはホテルや食事まで用意していただき親切にしていただいたので、ささやかですがこれはお礼に受け取っていただければと思います」
 これには男はもとより里恵子も開いた口が塞がらないほど驚かされてしまった。
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