極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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[実家があるだって……? じゃあアンタは香港の人間なのか? 確かに言葉もめちゃくちゃ流暢だが……]
[ええ。生まれも育ちも香港です]
[は……マジかよ……。こいつぁ驚いた……]
 すっかり日本人だと思っていたマフィアたちはどうしたものかと戸惑い気味だ。
[なんだか……最初の話とえらく食い違ってきたようだが……とにかく、まあ……名前を聞こうか]
 本当に香港出身というなら名前を聞けば一目瞭然だ。もしもこの若者が嘘をついているとすれば、咄嗟に香港名が出てくるわけもない。上手いこと取り繕ったとしても、それが事実か出任せかくらいは見破れるはずだと男たちは意気込んだ。
 ところがなんと冰はすんなりと答えてみせたのにこれまた驚かされる。
[僕の名は周冰ジォウ ピンです]
 それを聞いて一等目を丸めたのは香港から来ているという男だった。
[周って……マジかよ……。ウチのボスと一緒じゃねえか]
 とんだ偶然もあるものだと肩をすくめてみせる。まあ周自体珍しい名というわけでもないし、そんな偶然もあろうかと溜め息をこぼしている。ということは、この男の組織というのはやはり周ファミリーで間違いないのだろう。冰は空っとぼけた態度のまま、駄目押しするように畳み掛けた。
[おや、あなたのボスも周さんと仰るのですか? じゃあおそらくは僕の父ともご縁がある御方かも知れませんね]
[は……はは! ご縁ってアンタねぇ。名前が一緒ってだけで知り合いとは思えねえがな。香港にゃ周なんてゴロゴロいるんだしよ!]
[まあそうですね。ですがそれこそこれも何かのご縁ですし、僕個人としてはできれば香港のあなたのところにお世話になれればと思うのですが]
[本当か!? そいつぁ有り難え! だったら早速ボスに報告させてもらっても構わねえか?]
 香港の男は瞳を輝かせて勇み足だ。
[ええ、それはまあ。僕が香港に帰ればきっと父も喜んでくれると思いますし。ただ……そうだなぁ、こんな帰り方をしたら情けないことだと叱られるかも知れないですけれどね……]
 拉致されて帰郷したなどと聞けば父は呆れて怒るに違いない――とまあそんなふうに受け取れる言い方だ。冰が溜め息をつきながら苦笑すると、香港の男は呆れたように肩をすくめてみせた。
[ちょい待てって! アンタなぁ、いくら実家が香港にあるっつってもさすがにそこへ帰すわけにはいかねえぞ。俺は取引としてアンタを買うわけだ。行く先は俺の組織のボスのところでアンタの家じゃねえ。まあボスがその先アンタをどう扱うかまでは俺の知るところじゃねえが……腕前が確かだってことは伝えさせてもらう。そこんところは勘違いしねえでもらいてえな]
 男が少々圧をかけた言い方で眉をしかめる。冰は困ったような上目遣いでまたもや苦笑してみせた。
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