極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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 仮に永い間胸の内に秘めていた恋情が抑え切れずに計画的な構想を巡らせていたというならまだしも、たまたま再会したことで思い出したように近付きになりたがるなど感心できるものではない。立身出世の為に簡単に他人を利用しようなどという考えもいただけないが、既に妻子がいるにもかかわらず別の恋情の為に他人を雇って拉致までさせるなど言語道断だ。いずれにせよ周にとっては尊敬できる相手ではない。いくら昔の社員だったからといって、今後関わり合いになりたいとは微塵も思わないというのが正直なところだった。
 だが冰は拉致犯の男から直接理由を聞いていた為、香山の想いはある程度真剣なのではないかと思っていた。
「多分だけど白龍を利用したいっていうよりは、本当にただ好きだっただけなんじゃないかな。俺たちを誘拐した男の人がそう言ってたからさ。この前偶然銀座で再会したことがきっかけになっちゃったのかな……」
 つまり焼け木杭に火が点いてしまったというところなのだろう。だが彼は既に結婚して子供もいることだし、一時の迷いを振り切って家族を大切にしてくれればいいと、そんなことをポツリと口にした冰を見つめながら、周は込み上げる愛しさが抑え切れずにいた。
「お前は相変わらずにやさしいんだな。俺が狭量なのかガキなのか……怒りが先に立って、香山の存在なんぞ微塵も残らんくれえにぶっ潰しちまいてえところだ……」
「白龍ったら、そんなこと言って。でも俺も里恵子ママさんもこうして無事だったんだし、香山さんにも早く立ち直って欲しいなって思うよ」
 香山の目的がどうであれ、本来であればとんでもない目に遭わされたと怒って当然のところ、この冰は相手の更生と幸せを願うという性質である。周はそんな伴侶を心から尊く、そして愛しく思わずにはいられなかった。
「お前……腹が立たねえのか?」
「え……? あ、ああ……そりゃあいきなり拉致とか驚いたし、関係のない里恵子ママさんにまで迷惑を掛けちゃったのは申し訳ないと思うけど……。ただ、あの人……香山さんの気持ちを考えたらさ。好きな人に近付きたいっていう想いは分かるし、俺のことが邪魔だって思うのも仕方ないのかなって。あ、でもだからって今回みたいなやり方がいいことだとは言わないけどさ」
 冰にしてみればまだ周と想いが通い合う前は確かにいろいろと思い悩むところはあったし、振り向いてはもらえなかった時のことを想像すれば、行き場のない苦しさがあったわけだ。誰かを本気で好きになってしまった時の様々な葛藤は理解できる、とまあそんなところなのだろう。だが周の言ったのはそういった意味ではなかったようだ。
「俺が言ってるのは……お前が俺に対して怒らねえのかということだ」
「白龍に? 俺が? どうして」
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