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孤高のマフィア
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「お前がこんな目に遭ったのは俺のせいだ。香山が俺を利用したかったにせよ恋情があったにせよ、俺が原因でお前は危険な目に遭った。今回はお前の機転と度量のお陰で怪我なども負わされずに済んだが、一歩間違えば暴力を振るわれていたかも知れない……。本来なら『おめえのせいだ』と詰られて当然だろうが」
「詰るって……俺が白龍を?」
「そうだ」
冰には考えも及ばなかったのだろう。大きな瞳をパチクリと見開いてはポカンと口を開けたまま固まってしまっている。しばらくすると冰は困ったように眉を八の字にしながらプッと噴き出してしまった。
「嫌だな、白龍ったら! そんなこと思うわけないじゃない! 俺は……その、こ、これでも白龍の……お……お、お嫁さんだよ。ふ、夫婦は一心同体なんだからさ、何があってもどっちのせいなんて思わないし、ましてや怒るなんて有り得ないよ。白龍だって俺が前に記憶喪失になっちゃった時にも見捨てないでずっと側に置いてくれたじゃない! あの後で紫月さんたちから聞いたんだけど、もしも俺の記憶が戻らなくても十年でも待つって言ってくれたって……。俺、本当に嬉しかったんだよ」
ところどころ恥ずかしそうに言葉を詰まらせながらも頬を真っ赤に染めてそんなことを言う。堪らずに周はその頬を自分の胸板へと押しつけて、両の腕できつく抱き締めてしまった。
「冰……! お前ってヤツは……本当に」
今の気持ちをどんな言葉で綴れば伝わるだろう。愛しくて尊くて仕方がない。とてもじゃないが周には上手い言葉など思いつくはずもなかった。
愛している。
お前だけだ。
そんな陳腐な言葉では到底伝えきれない。あふれてやまない想いに代えて、周はただただ愛しい伴侶を抱き締めたのだった。
「側にいてくれ……」
「白龍……?」
「……俺を一人にするな……! ずっと……ずっと側にいると……生涯ずっと側に居て、俺と添い遂げてくれると……」
大概のことでは動じない逞しい腕を、鋭い瞳を震わせながらそんなことを言う。側にいろ、ではなく『側にいてくれ』と、俺を一人にするなと、まるで甘えるように抱き締めてくる。
冰は驚きながらもわずかに震える広い背中に手を回すと、そっと大切なものを抱き包むようにゆっくりと撫で、添えた。
「側にいるよ。絶対に離れない」
そう、今生ではもちろんのこと、いつかは肉体が滅びて魂になっても添い遂げて離れはしない。来世があるというのなら、どんなことをしてでも再び巡り合って、共に歩く人生を選ぶだろう。
大きな胸に抱き締められながらやわらかに瞳を閉じる。その表情には溢れんばかりの幸せと共に亭主を支える嫁としての大いなる愛情が満ち満ちと輝いているかのようであった。
「冰……」
抱擁を解いてクイと顎先を持ち上げ、欲情の点った瞳が視界に入り切らないほど近くで見つめてくる。そっと重ね合わされた唇の熱さがもう抱きたいと云っているのが分かる。
「白龍……大好き……」
「ああ。俺もだ」
お前だけを心の底から愛しているよ!
とろける瞳と瞳を重ね合わせ、軽く触れ合っているだけの唇を次第に激しく絡み合わせて二人きりの甘い甘い世界へと落ちていく。そのまま夜が白々とするまで求め求めて、重ねた肌も気持ちもひとつにせんという勢いで睦の時を分かち合ったのだった。
◇ ◇ ◇
「詰るって……俺が白龍を?」
「そうだ」
冰には考えも及ばなかったのだろう。大きな瞳をパチクリと見開いてはポカンと口を開けたまま固まってしまっている。しばらくすると冰は困ったように眉を八の字にしながらプッと噴き出してしまった。
「嫌だな、白龍ったら! そんなこと思うわけないじゃない! 俺は……その、こ、これでも白龍の……お……お、お嫁さんだよ。ふ、夫婦は一心同体なんだからさ、何があってもどっちのせいなんて思わないし、ましてや怒るなんて有り得ないよ。白龍だって俺が前に記憶喪失になっちゃった時にも見捨てないでずっと側に置いてくれたじゃない! あの後で紫月さんたちから聞いたんだけど、もしも俺の記憶が戻らなくても十年でも待つって言ってくれたって……。俺、本当に嬉しかったんだよ」
ところどころ恥ずかしそうに言葉を詰まらせながらも頬を真っ赤に染めてそんなことを言う。堪らずに周はその頬を自分の胸板へと押しつけて、両の腕できつく抱き締めてしまった。
「冰……! お前ってヤツは……本当に」
今の気持ちをどんな言葉で綴れば伝わるだろう。愛しくて尊くて仕方がない。とてもじゃないが周には上手い言葉など思いつくはずもなかった。
愛している。
お前だけだ。
そんな陳腐な言葉では到底伝えきれない。あふれてやまない想いに代えて、周はただただ愛しい伴侶を抱き締めたのだった。
「側にいてくれ……」
「白龍……?」
「……俺を一人にするな……! ずっと……ずっと側にいると……生涯ずっと側に居て、俺と添い遂げてくれると……」
大概のことでは動じない逞しい腕を、鋭い瞳を震わせながらそんなことを言う。側にいろ、ではなく『側にいてくれ』と、俺を一人にするなと、まるで甘えるように抱き締めてくる。
冰は驚きながらもわずかに震える広い背中に手を回すと、そっと大切なものを抱き包むようにゆっくりと撫で、添えた。
「側にいるよ。絶対に離れない」
そう、今生ではもちろんのこと、いつかは肉体が滅びて魂になっても添い遂げて離れはしない。来世があるというのなら、どんなことをしてでも再び巡り合って、共に歩く人生を選ぶだろう。
大きな胸に抱き締められながらやわらかに瞳を閉じる。その表情には溢れんばかりの幸せと共に亭主を支える嫁としての大いなる愛情が満ち満ちと輝いているかのようであった。
「冰……」
抱擁を解いてクイと顎先を持ち上げ、欲情の点った瞳が視界に入り切らないほど近くで見つめてくる。そっと重ね合わされた唇の熱さがもう抱きたいと云っているのが分かる。
「白龍……大好き……」
「ああ。俺もだ」
お前だけを心の底から愛しているよ!
とろける瞳と瞳を重ね合わせ、軽く触れ合っているだけの唇を次第に激しく絡み合わせて二人きりの甘い甘い世界へと落ちていく。そのまま夜が白々とするまで求め求めて、重ねた肌も気持ちもひとつにせんという勢いで睦の時を分かち合ったのだった。
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