極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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「白龍……大好き! ウォーアイニー」
「ああ、ああ……俺もだ……! ウォーアイニー周冰!」
 額と額とをコツリと合わせて微笑み合う。そんな二人の頬にカーテンの隙間から朝の気配を告げる明かりが差し込んでくる。
「あれ? もう外が明るいね……?」
「そのようだな。ゆっくり休ませてやるつもりだったのに、またお前に甘えちまった」
 そんなふうに謝る亭主に微笑みながら、ゆるりと腕の中を抜け出して窓辺へと歩けば、東の方から深い蒼色が次第に橙色を連れてくるのが分かった。
「うっはぁ、綺麗な空!」
「ああ。こっちは東側だったんだな」
 周もまたベッドを降りて愛しい者を追い掛ける。カーテンを握り締めながら感動に瞳を輝かせている彼の肩を背後からすっぽりと抱き包んだ。
「綺麗だね。こっちが東ってことは、ちょうどこの先に汐留があるんだよね」
「そうだな」
「真田さんは早起きだからきっともう起きてるね?」
「昨夜連絡を入れておいたからな。お前の帰りを首を長くして待ってるだろうぜ」
「そっか。心配掛けちゃったね。そうだ、何か美味しい物でもお土産に買っていってあげたいな!」
 拉致という非常事態に遭ってもお土産という発想が出てくる冰を見て、彼の精神面での打撃が大きくなかったことに安堵の思いが湧き上がる。
 ファミリーの証である蘭の彫り物を入れてもいいと言い、生涯絶対に側を離れず付いていくとまで言ってくれた。夫婦間の愛情はもちろんだが、周囲の人々のことも常に気に掛けて、こうして思いやってくれる。それらが自然体で出てくるところがまた堪らないのだ。周にとってはまさに出会えたことが奇跡といえるほどの唯一無二のかけがえのない伴侶であった。
 感慨深い思いに胸を熱くする傍らでは、お土産は何がいいかなと大きな瞳をパチクリとさせながら真田の顔を思い浮かべている様子が本当に愛おしい。
「できれば普段はあんまりお店で見掛けないようなこの土地特有の物がいいよねぇ」
「こっちはラーメンが有名だな。博多うどんに明太子も旨いぞ」
 まあ今時は全国どこにいても大概の物は手に入るといえど、わざわざ現地で選んでくれたというその気持ちこそが真田たちにとってもまた格別な喜びであろう。
「そっか。博多だったよね、ここ。明太子に博多ラーメンと博多うどんかぁ! 真田さん、好きかな?」
「あいつは好き嫌いはねえからな」
「ホント? じゃあそれにしようっと! 厨房の方たちや運転手の宋さんにハウスキーパーさんたちでしょ。お邸の皆さんの他にも会社の矢部さんたちと、それから鐘崎組の方々にも買っていかなきゃ! そうそう! 鄧先生たちにも食べてもらいたいな! 鄧先生はお茶を集めるのがお好きだもんね。こっちでしか買えないような珍しいお茶とかもあるといいなぁ」
 そうなのだ。医師の鄧は茶葉を集めるのが趣味で、彼の医務室に行くと必ずお茶を淹れてくれるというのは邸中で有名な話である。
 指折り数えながら次から次へと大切な者たちの名前を思い浮かべている仕草も実に可愛らしい。周にとってはそんな姿を見ているだけでもう愛し過ぎてどうにかなりそうだ。
「じゃあ後で買い出しに出掛けるか」
「うん! 楽しみだなぁ」
 しばらく一緒に明け行く景色を眺めた後で、くっつけた頬と頬とを擦り合わせる。そうして二人は白み始めた空の下、再び熱い睦の渦の中へと堕ちていったのだった。



◇    ◇    ◇


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