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孤高のマフィア
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と、ちょうどその時だった。継母の香蘭が血相を変えて周の元へと駆けて来た姿を見た瞬間、現場は一気に緊張に包まれた。
[黄龍! 白龍! すぐに来て!]
彼女の話では、冰らと記念撮影をしていたところ背後から見知らぬ男が現れて、シャッターを押していた真田を羽交い締めにし、刃物を突き付けているというのだ。目的は冰のようで、しきりに『氷川さんと別れなければ、このじいさんを殺す』というようなことを繰り返しているという。美紅は体術に優れている為、万が一のことがあったら紫月と共に冰らを守ると言って、香蘭に連絡係を頼んだとのことだった。
[クソッ! やはり来やがったか!]
周以下男たちはすぐさまその現場へと向かった。
走りながら香蘭が更に詳しい経緯を話し伝える。
[どうやらその男は白龍の会社の近くで私たちが花見に出掛けていくのを目撃したようなの! 白龍に会いたかったらしく偶然姿を見掛けたんで後をつけて来たらしいわ。冰が白龍と仲睦まじく着物姿で歩いているのを見て腹が立ったとか……]
それで皆が下船して来るのを待ち伏せていたようだ。
だが、刃物で真田を拘束しているということは、最初から何らかの危害を加える準備があったということになる。上手いこと周のみに会えればと思っていたのだろうが、冰に対しては攻撃の意図があったということだろう。まったくもって性懲りのない男である。とにかく一同は現場へと急いだ。
一方、冰らの方では真田を人質に取られたままで香山と対峙していた。
「冰さん、すぐに逃げてください! 坊っちゃまと冰さんの為ならこの真田、命など少しも惜しくはございませんぞ! この老いぼれのことは構わずに、さあ早く行ってください!」
真田が必死で声を張り上げている。その首根っこをがっしりと押さえ込みながら、香山が半狂乱で目を吊り上げていた。
「はん! こんなジジイまでがお前なんかを庇うとはな! どこまで図々しいクソガキなんだ!」
香山はこの真田が冰らとどういう間柄なのかは分からずとも、かなりの目上であるにも関わらず冰を庇うこと自体にも腹を立てているようだ。
「香山さん! その人を離してください! あなたの目的はこの俺でしょう?」
冰もまた必死の説得を試みる。その脇では紫月と美紅が一瞬の隙も逃すまいと、いつでも応戦できるように身構えていた。
冰は説得を続けている。
「その人は俺の父も同然なんです! 俺がそっちへ行きますから、どうかその人を離してください!」
冰の言葉に真田は胸を熱くする。そんな彼をますます刃物で脅しながら、香山は支離滅裂なことをがなり立ててよこした。
[黄龍! 白龍! すぐに来て!]
彼女の話では、冰らと記念撮影をしていたところ背後から見知らぬ男が現れて、シャッターを押していた真田を羽交い締めにし、刃物を突き付けているというのだ。目的は冰のようで、しきりに『氷川さんと別れなければ、このじいさんを殺す』というようなことを繰り返しているという。美紅は体術に優れている為、万が一のことがあったら紫月と共に冰らを守ると言って、香蘭に連絡係を頼んだとのことだった。
[クソッ! やはり来やがったか!]
周以下男たちはすぐさまその現場へと向かった。
走りながら香蘭が更に詳しい経緯を話し伝える。
[どうやらその男は白龍の会社の近くで私たちが花見に出掛けていくのを目撃したようなの! 白龍に会いたかったらしく偶然姿を見掛けたんで後をつけて来たらしいわ。冰が白龍と仲睦まじく着物姿で歩いているのを見て腹が立ったとか……]
それで皆が下船して来るのを待ち伏せていたようだ。
だが、刃物で真田を拘束しているということは、最初から何らかの危害を加える準備があったということになる。上手いこと周のみに会えればと思っていたのだろうが、冰に対しては攻撃の意図があったということだろう。まったくもって性懲りのない男である。とにかく一同は現場へと急いだ。
一方、冰らの方では真田を人質に取られたままで香山と対峙していた。
「冰さん、すぐに逃げてください! 坊っちゃまと冰さんの為ならこの真田、命など少しも惜しくはございませんぞ! この老いぼれのことは構わずに、さあ早く行ってください!」
真田が必死で声を張り上げている。その首根っこをがっしりと押さえ込みながら、香山が半狂乱で目を吊り上げていた。
「はん! こんなジジイまでがお前なんかを庇うとはな! どこまで図々しいクソガキなんだ!」
香山はこの真田が冰らとどういう間柄なのかは分からずとも、かなりの目上であるにも関わらず冰を庇うこと自体にも腹を立てているようだ。
「香山さん! その人を離してください! あなたの目的はこの俺でしょう?」
冰もまた必死の説得を試みる。その脇では紫月と美紅が一瞬の隙も逃すまいと、いつでも応戦できるように身構えていた。
冰は説得を続けている。
「その人は俺の父も同然なんです! 俺がそっちへ行きますから、どうかその人を離してください!」
冰の言葉に真田は胸を熱くする。そんな彼をますます刃物で脅しながら、香山は支離滅裂なことをがなり立ててよこした。
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