極道恋事情

一園木蓮

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謀反

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「この先少し行けば河川にぶち当たります。水量によってはもっと機材が必要になるかも知れませんから、アンタらはここで待機してください」
「分かった。それまでに何としてもこの落盤を取り除いておく!」
 鐘崎らは自分たちもチームを手伝いながら、とにかくは崩れた岩を片付けて道を開けることに専念することにした。
 そうして冰とロンが少し進むと、道はまたしても二手に分かれた。一方からは水の流れる轟音が聞こえていて、もう一方は緩い下り坂だが歩けない感じではない。
「普通に考えればおそらくはこっちの道を選んだはずですが、水かさが増す前だったら河川の方へ降りたとも考えられる」
 どちらへ進むべきか、ロンがしばし考えていると、突如河川の方向から人がやって来る気配を感じて、二人は咄嗟に灯りを向けた。
 フラフラと今にも死にそうな面持ちで現れたその人物を目にするなり、冰は絶句するほど驚かされてしまった。なんとそれはあの香山だったからだ。
「香山さんッ!? 何故あなたがここに……」
 驚いたのは香山の方も一緒のようだ。
「アンタ……こそ」
 だが、香山にとっては驚きよりも安堵の気持ちの方が強かったようだ。
「そ、そんなことより助けてくれッ! この先は川の水が増してて……とんでもないことになってる! 道には迷うし……俺だってもうダメかと思ってたんだ!」
 ゼイゼイと肩を鳴らしながらも、とにかくは見知った冰の顔を見たことで安心した面持ちでいる。自分が彼にしたことなどすっかり忘れたかのように、口を開けば『助けてくれ』の一点張りだ。
「それよりあなた一人ですか? 他の方々は……白……いや、氷川は何処ですッ!」
 すると香山からは驚くような答えが返ってきた。
「他のヤツらはとっくに逃げちまった……。俺らを置いて行きやがったんだ!」
「逃げたですって? それで氷川はッ!?」
「あの人は……もうダメだ」

 ――――!?

「ダメってどういうことです!?」
「……分っかんねえよ! 俺だって自分のことだけで必死だったんだ! 他人のことなんか構ってらんねえ状況なんだよ!」
「構ってらんないって……あなたは氷川と一緒だったんじゃないんですか!?」
「っつーかよ! あの人のせいで俺まで置き去りにされたようなものなんだ! 畜生……ッ、あいつら、とっとと自分たちだけ逃げやがって!」
 香山の話によると、周は終始ぼうっとしていて、皆に連れられて歩いているだけだったというのだ。河川の増水に慌てるでもなければ避難路を探すでもなく、ただ呆然と突っ立っているか道端に座り込んでいるだけで、使い物にならないと判断した羅たちが見切りをつけたらしい。香山自身もそんな周と共に置いて行かれてしまったと憤っていた。
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