極道恋事情

一園木蓮

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謀反

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 風呂を上がってリビングで肩を並べ、紹興酒を傾けながら、周は記憶が戻る直前に思っていたことを打ち明けた。
「実は俺もお前に話そうと思っていたことがあってな。あのまま記憶が戻らずともお前に聞いて欲しいと思っていたことだ」
「俺に?」
「ああ。俺に結婚している相手がいるというのは皆に聞いていたが、その相手が誰かということは知らされていなかっただろう?」
 もちろんその理由は理解できていると付け加えながら周は続けた。
「俺は自分の嫁が誰かということよりもお前のことが気になって仕方なくてな。いっそのことお前に気持ちを打ち明けようかと迷っていたんだ」
「白龍……」
 冰は驚いたように瞳を見開いて周を見上げた。
「もしも嫁がお前じゃなく別の誰かだったとしたら、お前ならば気持ちを受け入れてはくれないだろうと思ってもいた。『あなたには嫁がいるんだから』と諌めてくれるだろうとな。だが、そうだとしても俺はお前に惹かれ始めているし、どうしていいか分からない。皆に黙って戸籍を調べようとも思ったが、もしもお前以外の誰かの名前が書かれていたらと思うと踏み切れなかった。そんな思いを洗いざらいお前にぶつけちまおうかと思ってたんだ」
 今になって考えれば大の男が情けないと思うのだが、その時は正直思い詰めていて冰に頼りたかったのだと言った。
「そうだったの……。ごめんね白龍……。白龍がそんなふうに悩んでいるなんて……気が付いてあげられなかった」
 こんなことなら早く本当のことを打ち明ければ苦しませずに済んだよねと、冰は切なげに瞳を揺らした。
「お前が謝ることはない。思えば以前お前が記憶喪失になった時も、俺自身お前に本当のことを全てを話さなかった。お前と共に暮らしていることまでは告げたが、結婚していることは伏せていただろう?」
「そうだけど……でもあの時は俺が子供の時の記憶しかなかったから」
「お前たちの判断は間違っていない。例え本当のことを教えられたとしても俺がそれを信じられなければ意味がねえしな。だが俺は何も分からない状況でもお前に惹かれた。思っていること感じていることをお前に全て打ち明けて頼りたいと思った。そう思えたことがすごく嬉しくてな」
「白龍……」
「俺たちは何度巡り逢っても惹かれ合う。例えこれまでのことを覚えていようがいまいが出逢った時点で惹かれ合うってことが分かったんだ。きっと来世でもそのまた来世でも、俺は出逢う度にお前に惚れるだろう」
「白龍……うん! そうだね。俺も! 俺もそうだよ。何度出逢ってもあなたを好きになる……!」
「ああ。俺たちは夫婦だからな」
「うん……! うん!」
「お前と再会してから、そう長くはねえといえる間にいろんなことがあったな……。だが俺たちは本当に魂が繋がってると思えてならない。四六時中共に居られずとも俺の傍にはいつもお前の魂が寄り添ってる。逆も然りだ」
「うん! 俺もいつでも白龍の傍にいるよ! ずーっと離れない!」
「ああ、そうだな。ずっと未来永劫、俺たちは一緒だ」
「一心同体の夫婦だもんね!」
 コツンと額と額を合わせて微笑み合う。
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