753 / 1,212
カウント・ダウンを南国バカンスで
14
しおりを挟む
「あのー、ちょっとよろしいですかー?」
「日本の方ですよね? よかったら一緒にお写真撮らせてもらっていいですか?」
「もしよければこの後、新年の乾杯がてらお酒でもどうですかー?」
日本語で話し掛けてくるところをみると、どうやら日本人のようだ。女性の三人連れである。
やれやれ、またかというところだが、正直なところただのナンパならいざ知らず写真はまずい。一昔前ならともかく、今はすぐにSNSなどに上げられる可能性が無きにしも非ずだからだ。
別に写真をばら撒かれたところで何がどうということもないのだが、裏の世界に身を置く以上、自分たちよりも一緒に写った彼女らの方が要らぬ厄介事に巻き込まれる可能性もゼロとはいえないからだ。
だが単にリゾート地での写真一枚を断れば、また別の意味で厄介な結果になりかねない。逆に隠し撮りをされて、お高くとまっている感じの悪い男だ――だのと拡散されても面倒だ。
さりとてこういう時の為に策を用意していない裏社会の男たちではない。期待顔の女たちに感じのいい笑顔を見せながら鐘崎が言った。
「申し訳ない。せっかくのお誘いですが、この後仕事関係の付き合いがありますので」
にこやかに断り文句を口にすると、女たちは残念そうにしながらも、『だったら写真だけでも』と食い下がってきた。
「分かりました。ではご一緒させていただきます」
鐘崎は周らと目配せをし合いながら、源次郎に撮影してくれるようにと頼んだ。もちろん源次郎もどうするかは承知の上である。女たちから託されたスマートフォンで愛想良く数枚を撮った。
「では我々はこれで。お嬢様方も素敵なニューイヤーをお過ごしください」
源次郎がスマートフォンを返しながら微笑むと、
「ありがとうございます! おじさんも楽しんでー」
女たちの方もご機嫌で手を振り、満足げな様子で見送ってくれた。
「よし、冰。ちょっと急ぐぞ!」
周に急かされて、冰はわけの分からないまま小走りさせられて出口へと向かった。どういうわけか鐘崎も紫月も、それに李や劉、鄧までも急ぎ足だ。周は真田が転ばないように気遣いながら手まで繋いで出口へ急ぐ。
レストランの外には既にワゴン車が待っていて、皆は辿り着いた順から次々と乗り込んだ。普段ならば李などが主人である周や鐘崎を先に誘導し、自分は最後にドアを閉めがてら助手席に乗り込むというパターンなのだが、今はそれもなく着いた順に即座に乗り込んでいく。最後にやって来た源次郎を回収すると同時に、車は即刻店を後にした。
後部座席は満員御礼を通り越して、あわやパンク状態だ。元々後ろには六人でギュウギュウのところ、八人が乗り込んだのだから無理もない。助手席には李が陣取っていて、何やら運転手にテキパキと指示を出している。周と鐘崎が割合華奢な冰と紫月を膝の上に抱え込む状態でホテルまでの道のりを走った。
何故こうも急ぐのか、分かっていないのは冰だけだ。ポカンとした表情で瞳をパチクリとさせている様子に、周が理由を説明した。
「日本の方ですよね? よかったら一緒にお写真撮らせてもらっていいですか?」
「もしよければこの後、新年の乾杯がてらお酒でもどうですかー?」
日本語で話し掛けてくるところをみると、どうやら日本人のようだ。女性の三人連れである。
やれやれ、またかというところだが、正直なところただのナンパならいざ知らず写真はまずい。一昔前ならともかく、今はすぐにSNSなどに上げられる可能性が無きにしも非ずだからだ。
別に写真をばら撒かれたところで何がどうということもないのだが、裏の世界に身を置く以上、自分たちよりも一緒に写った彼女らの方が要らぬ厄介事に巻き込まれる可能性もゼロとはいえないからだ。
だが単にリゾート地での写真一枚を断れば、また別の意味で厄介な結果になりかねない。逆に隠し撮りをされて、お高くとまっている感じの悪い男だ――だのと拡散されても面倒だ。
さりとてこういう時の為に策を用意していない裏社会の男たちではない。期待顔の女たちに感じのいい笑顔を見せながら鐘崎が言った。
「申し訳ない。せっかくのお誘いですが、この後仕事関係の付き合いがありますので」
にこやかに断り文句を口にすると、女たちは残念そうにしながらも、『だったら写真だけでも』と食い下がってきた。
「分かりました。ではご一緒させていただきます」
鐘崎は周らと目配せをし合いながら、源次郎に撮影してくれるようにと頼んだ。もちろん源次郎もどうするかは承知の上である。女たちから託されたスマートフォンで愛想良く数枚を撮った。
「では我々はこれで。お嬢様方も素敵なニューイヤーをお過ごしください」
源次郎がスマートフォンを返しながら微笑むと、
「ありがとうございます! おじさんも楽しんでー」
女たちの方もご機嫌で手を振り、満足げな様子で見送ってくれた。
「よし、冰。ちょっと急ぐぞ!」
周に急かされて、冰はわけの分からないまま小走りさせられて出口へと向かった。どういうわけか鐘崎も紫月も、それに李や劉、鄧までも急ぎ足だ。周は真田が転ばないように気遣いながら手まで繋いで出口へ急ぐ。
レストランの外には既にワゴン車が待っていて、皆は辿り着いた順から次々と乗り込んだ。普段ならば李などが主人である周や鐘崎を先に誘導し、自分は最後にドアを閉めがてら助手席に乗り込むというパターンなのだが、今はそれもなく着いた順に即座に乗り込んでいく。最後にやって来た源次郎を回収すると同時に、車は即刻店を後にした。
後部座席は満員御礼を通り越して、あわやパンク状態だ。元々後ろには六人でギュウギュウのところ、八人が乗り込んだのだから無理もない。助手席には李が陣取っていて、何やら運転手にテキパキと指示を出している。周と鐘崎が割合華奢な冰と紫月を膝の上に抱え込む状態でホテルまでの道のりを走った。
何故こうも急ぐのか、分かっていないのは冰だけだ。ポカンとした表情で瞳をパチクリとさせている様子に、周が理由を説明した。
21
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる