極道恋事情

一園木蓮

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カウント・ダウンを南国バカンスで

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「あのー、ちょっとよろしいですかー?」
「日本の方ですよね? よかったら一緒にお写真撮らせてもらっていいですか?」
「もしよければこの後、新年の乾杯がてらお酒でもどうですかー?」
 日本語で話し掛けてくるところをみると、どうやら日本人のようだ。女性の三人連れである。
 やれやれ、またかというところだが、正直なところただのナンパならいざ知らず写真はまずい。一昔前ならともかく、今はすぐにSNSなどに上げられる可能性が無きにしも非ずだからだ。
 別に写真をばら撒かれたところで何がどうということもないのだが、裏の世界に身を置く以上、自分たちよりも一緒に写った彼女らの方が要らぬ厄介事に巻き込まれる可能性もゼロとはいえないからだ。
 だが単にリゾート地での写真一枚を断れば、また別の意味で厄介な結果になりかねない。逆に隠し撮りをされて、お高くとまっている感じの悪い男だ――だのと拡散されても面倒だ。
 さりとてこういう時の為に策を用意していない裏社会の男たちではない。期待顔の女たちに感じのいい笑顔を見せながら鐘崎が言った。
「申し訳ない。せっかくのお誘いですが、この後仕事関係の付き合いがありますので」
 にこやかに断り文句を口にすると、女たちは残念そうにしながらも、『だったら写真だけでも』と食い下がってきた。
「分かりました。ではご一緒させていただきます」
 鐘崎は周らと目配せをし合いながら、源次郎に撮影してくれるようにと頼んだ。もちろん源次郎もどうするかは承知の上である。女たちから託されたスマートフォンで愛想良く数枚を撮った。
「では我々はこれで。お嬢様方も素敵なニューイヤーをお過ごしください」
 源次郎がスマートフォンを返しながら微笑むと、
「ありがとうございます! おじさんも楽しんでー」
 女たちの方もご機嫌で手を振り、満足げな様子で見送ってくれた。
「よし、冰。ちょっと急ぐぞ!」
 周に急かされて、冰はわけの分からないまま小走りさせられて出口へと向かった。どういうわけか鐘崎も紫月も、それに李や劉、鄧までも急ぎ足だ。周は真田が転ばないように気遣いながら手まで繋いで出口へ急ぐ。
 レストランの外には既にワゴン車が待っていて、皆は辿り着いた順から次々と乗り込んだ。普段ならば李などが主人である周や鐘崎を先に誘導し、自分は最後にドアを閉めがてら助手席に乗り込むというパターンなのだが、今はそれもなく着いた順に即座に乗り込んでいく。最後にやって来た源次郎を回収すると同時に、車は即刻店を後にした。
 後部座席は満員御礼を通り越して、あわやパンク状態だ。元々後ろには六人でギュウギュウのところ、八人が乗り込んだのだから無理もない。助手席には李が陣取っていて、何やら運転手にテキパキと指示を出している。周と鐘崎が割合華奢な冰と紫月を膝の上に抱え込む状態でホテルまでの道のりを走った。
 何故こうも急ぐのか、分かっていないのは冰だけだ。ポカンとした表情で瞳をパチクリとさせている様子に、周が理由を説明した。
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