極道恋事情

一園木蓮

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ダブルトロア

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 一方、そんな企みを知る由もない周風ジォウ ファンは、予定通りウィーンでの見本市に赴く為、準備を進めていた。同行するのは妻の美紅メイフォンと側近の曹来ツァオ ライ、それに日本からは弟の周焔ジォウ イェンと彼の伴侶である冰。そして共に鉱山での採掘事業に関わっている鐘崎と紫月も一緒だった。もちろん彼らの護衛兼補佐役として周焔の側近である李狼珠リー ランジュは必須、皆の体調を管理するお役目である医師の鄧兄弟、鐘崎組からは源次郎といったお馴染みの精鋭たちが顔を揃えることとなった。
 鄧の家系は医者一家なので、祖父母と両親、それに長男坊の鄧海デェン ハァイが香港のファミリー専属、そして日本の汐留にはお馴染み次男坊の鄧浩デェン ハァオが専属医として活躍してくれている。
 今回の渡航先はオーストリアのウィーン、ドイツ語圏だ。医者一家の鄧兄弟は二人共にドイツ語が堪能なので、香港と日本の双方から同行することになったわけだ。今回、父親世代はそれぞれ本拠地で留守を預かるようで、息子たちが中心となっての遠征であった。

 汐留の周邸でもウィーン行きの準備が着々と進められていた。
「ヨーロッパかぁ……! 俺、行くの初めてだよ!」
 夕食後のリビングでは冰がワクワクとした顔つきで感嘆の声を上げていた。側では亭主の周がバーカウンターで二人分の飲み物をこしらえている。風呂上がりにはよくこうして寝る前の一杯を共に傾けるのが習慣となっているのだ。
 衣食住の全般――つまりこうしたドリンクの提供などについても普段は真田ら家令の者たちが面倒を見てくれるのだが、自室へ戻ってからは周自らこうして世話を焼くのもまた愉しみのひとつなのだ。熱い紹興酒に角砂糖を溶かして、丁寧にトングでかき混ぜたグラスを愛しい冰の前へと差し出しながら、周はソファへと腰を下ろした。
「ありがとう白龍。いつも作ってもらちゃって悪いね」
 冰は早速にグラスを両手で握り締めては、ふぅふぅと息を吹き掛けながら熱い紹興酒を冷ましている。そんな可愛らしい仕草を見るのも周にとっては醍醐味である。
「俺たちが見本市を見て回っている間、お前らはオペラでも観に行ってくればいい。兄貴の方からは義姉さんの護衛としてライさんがお前らの観光にも付き合ってくれることになってるからな」
 ライさんというのは周の兄・風の側近の曹来である。李や劉と同じような立場の精鋭だ。頭脳明晰で武術にも長けている為、周にとっても彼がついていてくれれば安心なのだ。
「俺の方は李を連れて行くが、医師の鄧はお前らに同行してくれるように頼んである。ヤツの兄貴は俺たちの方で通訳をしてくれることになっている。鄧兄弟はドイツ語が堪能だからな」
 周と鐘崎、それに曹と李の側近たちも英語はネイチャー並みだが、さすがにドイツ語までとなると片言らしい。今の時代、翻訳機なども多数出てはいるものの、現地の言葉が流暢な鄧兄弟がいればより万全である。
「鐘崎さんトコの源次郎さんは白龍たちと一緒に回られるんだよね?」
「ああ。こっちは俺と兄貴にカネ、鄧の兄貴に李と源次郎さんの六人だ」
 ということは、旦那連中が仕事の間は、嫁組で買い物や観劇に出掛けられるということだ。
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