極道恋事情

一園木蓮

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ダブルトロア

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 つまりメンバーを整理すると、次のようになる。
 ウィーンの宝飾市で商談をするのは、周兄弟と鐘崎。通訳としてドイツ語が堪能な医師の鄧の兄、周焔側近の李、鐘崎組番頭の源次郎――計六人である。
 彼らが仕事の間に観劇や買い物などの観光をして歩くのは、紫月と冰、周風の妻である美紅、周風側近の曹、医師の鄧。こちらは五人だ。いわば嫁組ということになる。曹と鄧は嫁組の護衛役というわけだ。
「なんだか申し訳ないね。俺たちばっかり遊ばせてもらっちゃってさぁ」
 そんな気遣いをするところが冰らしい。
「なに、視察が済んだら俺たちもすぐに合流するさ。向こうの業者とも一度は接待で付き合わなきゃならんが、他の日の晩飯は一緒に食えるだろう」
「そっか。たいへんだけどがんばってね!」
「ああ。すまんが支度の方は任せたぜ! 観劇用に改まったスーツを持って行くといい」
「うん!」
 まあ視察が済めば、向こうでスーツの一、二着を新調してやるのも悪くない。周にとってはそういったことも楽しみのひとつなのだ。
「お兄様たちとは現地集合だったよね?」
「ああ。兄貴の方もプライベートジェットだからな。こっちはカネたちも一緒にウチのジェットで行く」
「わぁーい! じゃあ早速支度しようっと!」
 今回は家令の真田と劉が留守番役なので、お土産は何にしようかななどと、今から楽しい想像にふける冰であった。まさか現地でとんでもない企みが待ち構えているなどとは知る由もなく、汐留の夜は穏やかに更けていったのだった。



◇    ◇    ◇



 数日後。オーストリア、ウィーン――。
 周らがウィーンに着くと、空港には迎えの車が待っていた。鉱山で掘り出した原石を加工してくれている馴染みの業者が手配してくれたものだ。兄の風たちとは宿泊先のホテルで現地集合になっている。彼らの方が半日ほど遅れてやって来るそうなので、食事がてら街中を散策して歩くことにした。
「うわぁ……すごい建物ばかり……!」
 冰が感嘆の声を上げている。本格的な観光は見本市が終わった後で周らも一緒に回れるというので、今日はホテルの近場で買い物や食事などを楽しむこととする。
 メイン通りをブラブラと歩けば、目にするもの何もかもが華やかで、中世ヨーロッパの香りが漂う建物から街角の花屋やカフェに至るまで異国情緒にあふれている。一行は街中を見渡せる一軒のカフェへとひとまず腰を落ち着けた。せっかくなのでテラス席を希望する。ヨーロッパでよく目にする光景に紫月と冰の二人は大喜びだ。
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