極道恋事情

一園木蓮

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ダブルトロア

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「曹来! ライ! 起きてください」
 声をひそめながらも膝で曹の身体を突いて呼び掛ける。
「……ん、あ……?」
「ライ! 気が付きましたか! 緊急事態です!」
 緊急という言葉に反応したわけか、曹もカッと瞳を見開いた。
「鄧浩……? どうした」
「驚かないで聞いてください。どうやら私たちは何者かに拉致されたようですよ」
「……なに……ッ!?」
 慌てて身を起こそうとした瞬間、曹もすぐに後ろ手に縛られていることを察知したようだ。
「……どういうことだ……俺たちはオペラを観ていたはずだが」
「気が付いたらここに連れて来られていたんですよ。おそらくは睡眠薬でも盛られたんでしょう。それより美紅さんがいません!」
「なんだとッ!?」
「しッ! 大声を出さないでください! 今は外で一服中ですが、見張りが二人ほどいます。美紅さんは……彼女だけ別の場所で拘束されていると思われます」
 その話し声で起こされたのか、紫月と冰にも意識が戻ったようだ。鄧は今しがた耳にした男たちの会話の内容をかいつまんで皆に聞かせた。
「じゃあ俺たちは誰かに拉致られてきたってわけですか?」
 紫月が周囲を見渡しながら声をひそめて訊く。
「そのようですね。おそらくは食事に睡眠薬が混入されていたのかも知れません。劇場に着いた時点では自覚できなかったので、盛られたのは鈍行性の薬物でしょう」
「そういえば俺も開演して割とすぐに眠くなってきちゃって……。せっかく白龍が桟敷席まで取ってくれたのに申し訳ないって思ったことまでは覚えています……」
 冰もそう振り返る。
「俺もいつ寝ちまったのかは思い出せねえけど、そういえば演目のことは殆ど覚えてねえから、やっぱ始まってすぐだったのかも」
 紫月も同様のようだ。
「で、犯人はいったいどんなヤツなんです?」
「それが、私が聞いたのは見張りだという男二人の会話だけですから詳しいことは分かりませんが……」
 鄧は彼らの話していた内容から、犯人の中に香港からやって来た男がいるということと、見張りの男たちはアジア人の女に指示されてここにいるだけのようだと説明した。
「会話はドイツ語でしたから、現地の者でしょうね。あの男たちは拉致の実行役として雇われただけではないかと」
「ってことは、黒幕はアジア人の女ってことか。曹さんと鄧先生は心当たりありますか?」
 紫月に訊かれて、曹と鄧が考え込む。
「香港絡みなのは間違いないでしょう。私よりもライ、あなたの方が詳しいのでは?」
 鄧はここ何年も汐留住まいだから、確かに曹の方が事情には詳しいだろう。
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