極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
801 / 1,212
ダブルトロア

13

しおりを挟む
「うむ……アジア人の女に香港から来た男か。ひとつ心当たりがあるが……まさかまたあの楚優秦が絡んでいるんじゃあるまいな……」
 楚優秦――、その名前には紫月も聞き覚えがあった。
「優秦って……確か風兄ちゃんの結婚が決まった時に美紅姉ちゃんを拉致して手篭めにしようとしたあの女ですか?」
 その事件の時は紫月も周や鐘崎と共に香港を訪れていて、美紅の救出に一躍買ったのでよく覚えていた。
「あの時は世話になったな。ちょうど紫月君たちを空港へ迎えに行った帰り道だった。運良く救出が間に合ったから良かったものの、少し遅れていたら大惨事になるところだった」
 曹は礼を述べると、その後の経緯をザッと説明した。
「彼女の一家はあの事件の後、周直下を抜けてヨーロッパに移り住んでいる。俺が聞いた移住先は確かフランスだったはずだが、その後にまた引っ越したか、それともわざわざこの計画の為にウィーンまで出向いて来たのかも知れんな」
 優秦の起こした事件のことは鄧も概要だけは聞いていた。
「かれこれもう二年以上になるな。では今回、風老板がこのウィーンに来ることをどこかで聞きかじって、それでこの計画を思いついたと?」
「かも知れん。本当に優秦が犯人ならば目的は風の奥方だろう」
 曹は優秦が未だに風への想いを諦め切れていないのかと驚いているようだ。
「とにかく奥方の無事を確かめないと!」
「おそらくは香港から来た男というのが、我々とは別の場所で美紅さんを見張っていると推察できます」
「仮に優秦が黒幕だとすれば、その男ってのは以前楚の組織にいた者かも知れんな。もしかしたらあの事件の時、奥方の手篭めに加わっていた内の一人とも考えられる」
 そうであれば事は一刻を争う。皆はすぐに彼女を捜し出す手順を考えることにした。
 一番最初に案を口にしたのは冰だ。
「こういうのはどうでしょう。この中で一番弱そうに見えるのは俺です。見張りの人たちが帰ってきたら、俺がトイレに行かせて欲しいと言うんです。その間、皆さんはまだ眠ったふりをしていていただいて、俺だけがトイレに連れて行ってもらい、隙を見て相手の鳩尾にでも肘を入れれば……」
 冰自身がきっかけを作ると言う。見た目がやわに見える自分なら、相手も警戒しないだろうと言うのだ。
「名案かもな。だったら俺が密かに冰君たちの後をつけて、まずは一人を沈めよう」
 紫月がその役を引き受け、残るもう一人は曹と鄧で押さえてもらうという作戦だ。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...