極道恋事情

一園木蓮

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ダブルトロア

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「それも悪くねえが、この骨董品の山がただのガラクタだった日にゃ目も当てられねえだろうが。掻っ払ったところで、上手く捌けなけりゃクズ同然だ」
「それもそうだな。やっぱりコイツらの身に付けてた宝飾品の方が無難か」
 どうやら男たちは今回の報酬について話しているようだ。内容は鄧にしか分からないので、彼は声をひそめて皆に通訳して聞かせた。
「骨董品に日本刀――ね。優秦が黒幕なら親父さんの収集物を勝手に持ち出してきたってところかもな。楚大人は骨董品集めが趣味だったからな」
 このことからますます優秦の仕業である可能性が高くなってくる。
「のんびりしている場合ではないな。すぐにも奥方の無事を確かめんと!」
「そうですね。仮に日本刀ってのが本物なら、そいつを手に入れられれば言うことなしです」
 紫月は剣術に長けているから、相手が見張りの二人以外にいたとしてもなんとかなりそうだ。縄を切ることも可能だろう。
「じゃあとにかく俺がトイレに行かせて欲しいと言って様子を見てみましょう。やわに見える俺ならば、相手も暴力に出る可能性は低いでしょうし」
 もしもその時点で暴力沙汰になるようならば強行突破しかない。紫月と曹は体術が使えるし、最悪は足だけで応戦するしかない。一同は早速作戦に出ることを決めた。



◇    ◇    ◇



 一方、美紅の方は皆とは別棟の地下室で囚われていた。見張り役は香港からやって来た楚の元部下の男である。
 国立歌劇場での観劇ということもあって、ドレッシーなイブニングドレスという出立ちの美紅は、さすがに寒くて目が覚めたところだった。季節は冬ということもあり、ドレスに合わせた丈の短い毛皮のコートを羽織ってはいたものの、深夜の時間帯は寒さも厳しい。比較的暖かな香港の気候に慣れている彼女にとっては堪えるものだった。
「よう、気がついたか?」
 突如聞き慣れない男の声で美紅はハタと瞼を開いた。
「……? ここ……は?」
 オペラを観ていたはずが見知らぬ男と二人きり、薄暗がりの部屋では驚くのも無理はない。
「意外に早く目が覚めたな。あの睡眠薬、本当に強力なのか?」
 男は薄ら笑いと共にそんなことを口にする。
「睡眠薬……? じゃあ私は……」
 起き上がろうとするも、縄で腕を縛られていて身動きが取れない。次第に意識がはっきりしてくれば、見覚えのある男の顔に驚かされた。
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