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ダブルトロア
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帰りの車中では曹が周風に頭を下げていた。
「周風、ひとつお前さんに謝らねばならんことがある」
そう言ってちらりと美紅を見やる。すると彼女も愛する亭主に肩を抱かれながら、気恥ずかしげに頬を染めた。そんな二人の様子に首を傾げながら風は難しそうに眉根を寄せた。
「謝らねばならんこととはいったい何だ」
「大事なことだ。本来お前さんが一番に知るべき大切な報告を、非常事態とはいえ我々が先にうかがってしまったことを謝りたい」
「俺が一番に知るべきこと?」
風には何がなんだかさっぱり分からないようだ。それは奥方から聞いてくれと、曹が美紅に視線をくれる。
「メイ、貴女も何か知っているのか?」
だったら早く教えて欲しいと顔を覗き込む。美紅はますます頬を染めると、可憐な声を震わせながら瞳を細めた。
「貴方。実は私……赤ちゃんができたようですの」
「ふむ、そうか。それは良かった……って……」
え……!?
風は大きく瞳を見開いたまま、固まってしまった。
「赤……ちゃん……? まさかメイ……」
「ええ。私もウィーンに着いてから確信しましたの。ここ二ヶ月ほど、もしかしたらと思っていたんだけれど」
「俺たちの子か……! メイ、本当に?」
「ええ、本当よ」
「……おお……おお、そうか……そうか! メイ……!」
風はガバリと妻の華奢な身体を抱き締めた。
「なんてめでたいんだ……! メイ、ありがとう。本当に……」
「貴方……」
「こんなに嬉しいことはないぞ! 香港の両親も大喜びすることだろう」
風はひとしきり興奮に声を震わせると、次には逸ったように妻の身体を気に掛けた。
「そうだメイ! 体調はどうだ? 具合の悪いところはないか? その……なんだ。男の俺にはよく分からんが……女性にはしんどいことも多いのだろう?」
つまり、つわりなどで辛くはないのかと思ったようだ。まるで右往左往と落ち着きのなく気に掛ける。
「ええ、大丈夫よ。特に具合の悪いことはないわ」
「そ、そうか……。だったらいいが、くれぐれも遠慮や我慢などしないのだぞ。貴女と俺は一心同体の夫婦だ。辛いことも嬉しいことも何でも分かち合いたい!」
「貴方……。ありがとう。でも本当に平気よ。妊った初期は体調的にお辛い方もいらっしゃると聞いていたけれど、私は今のところ具合はまったく悪くないの」
有り難いことねと言いながらも、きっと貴方の子供だから私を思い遣ってくれているのでしょうと微笑む妻に、風の方は歓びを抑え切れないといったふうに気もそぞろだ。早速に名前はどうしようかと考え込んだり、産着や乳児用の家具なども思い巡らせているふうである。
まるで少年に戻ってしまったような亭主に、美紅はクスクスと可笑しそうに笑ってはとびきりの笑顔を向けたのだった。
「周風、ひとつお前さんに謝らねばならんことがある」
そう言ってちらりと美紅を見やる。すると彼女も愛する亭主に肩を抱かれながら、気恥ずかしげに頬を染めた。そんな二人の様子に首を傾げながら風は難しそうに眉根を寄せた。
「謝らねばならんこととはいったい何だ」
「大事なことだ。本来お前さんが一番に知るべき大切な報告を、非常事態とはいえ我々が先にうかがってしまったことを謝りたい」
「俺が一番に知るべきこと?」
風には何がなんだかさっぱり分からないようだ。それは奥方から聞いてくれと、曹が美紅に視線をくれる。
「メイ、貴女も何か知っているのか?」
だったら早く教えて欲しいと顔を覗き込む。美紅はますます頬を染めると、可憐な声を震わせながら瞳を細めた。
「貴方。実は私……赤ちゃんができたようですの」
「ふむ、そうか。それは良かった……って……」
え……!?
風は大きく瞳を見開いたまま、固まってしまった。
「赤……ちゃん……? まさかメイ……」
「ええ。私もウィーンに着いてから確信しましたの。ここ二ヶ月ほど、もしかしたらと思っていたんだけれど」
「俺たちの子か……! メイ、本当に?」
「ええ、本当よ」
「……おお……おお、そうか……そうか! メイ……!」
風はガバリと妻の華奢な身体を抱き締めた。
「なんてめでたいんだ……! メイ、ありがとう。本当に……」
「貴方……」
「こんなに嬉しいことはないぞ! 香港の両親も大喜びすることだろう」
風はひとしきり興奮に声を震わせると、次には逸ったように妻の身体を気に掛けた。
「そうだメイ! 体調はどうだ? 具合の悪いところはないか? その……なんだ。男の俺にはよく分からんが……女性にはしんどいことも多いのだろう?」
つまり、つわりなどで辛くはないのかと思ったようだ。まるで右往左往と落ち着きのなく気に掛ける。
「ええ、大丈夫よ。特に具合の悪いことはないわ」
「そ、そうか……。だったらいいが、くれぐれも遠慮や我慢などしないのだぞ。貴女と俺は一心同体の夫婦だ。辛いことも嬉しいことも何でも分かち合いたい!」
「貴方……。ありがとう。でも本当に平気よ。妊った初期は体調的にお辛い方もいらっしゃると聞いていたけれど、私は今のところ具合はまったく悪くないの」
有り難いことねと言いながらも、きっと貴方の子供だから私を思い遣ってくれているのでしょうと微笑む妻に、風の方は歓びを抑え切れないといったふうに気もそぞろだ。早速に名前はどうしようかと考え込んだり、産着や乳児用の家具なども思い巡らせているふうである。
まるで少年に戻ってしまったような亭主に、美紅はクスクスと可笑しそうに笑ってはとびきりの笑顔を向けたのだった。
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