極道恋事情

一園木蓮

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ダブルトロア

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「うっは! ケーキじゃん!」
 おそらく機内で食べたいだろうと思い、離陸直前に鐘崎が密かに買い出していたのだ。
「ウィーンで買ってきたザッハトルテもあると思ったが、どうせ土産にするとか言って封は開けないだろうと思ってな」
「うはぁ……さっすが遼!」
「さっきな、氷川と一緒に見繕ってきたんだ。愛を感じるだろ?」
 半分は照れ隠しの為か、悪戯そうな笑顔で鐘崎が言う。
「おう! 超感じるぅー! さすがは俺たちン旦那だぜ!」
「ホントですねー! しかもセレクトがまたすごいですよ! 紫月さんの大好物の生チョコケーキにホワイトチョコとラズベリーのムースまで!」
 紫月の十八番はもちろんのこと、まるで周と自分の名にちなんだケーキまであると言っては、冰も感激の眼差しを細めてみせる。キャッキャとはしゃぐ二人を横目に、周と鐘崎の旦那組も嬉しそうに微笑み合ったのだった。



◇    ◇    ◇



「帰ったら花見の準備でもするかぁ!」
「もうそんな時期ですね! 去年は鐘崎組の皆さんと屋形船に乗せていただいたんですよねー」
 月日が過ぎるのは本当に早いものだと冰が感嘆の溜め息を漏らしている。
「今年はウチの庭で野点でもしたらいいんじゃねえか?」
「お! いいねぇ」
 鐘崎組の中庭は日本情緒あふれる庭園である。季節毎の花々をつける樹木もとりどりに揃っていて、もちろんのこと桜も見事な大樹に育っているのだ。誰もが花見の季節を待ち焦がれるようにやわらかな笑みに湧いたのだった。
「楽しみだなぁ。鐘崎組のお庭の桜、すごく立派ですもんねぇ!」
 冰が言葉通りワクワクと瞳を輝かせている。
「桜の次はツツジが咲くぜぇ! 冰君、そっちも見に来てくれよなぁ!」
「うわぁ、ツツジも綺麗ですよね! ありがとうございますー!」
「その前に藤だ」
 はしゃぐ紫月と冰の側で鐘崎がニッと笑む。
「ウチの藤棚はまだ若い方だが、ここ数年でなかなかに見事な花をつけてくれるようになったんでな」
 鐘崎が少々得意げに言った傍らでは、周もまたニヤっと不敵な笑みを瞬かせてみせた。
「そいつぁ、アレだろ? カネがガキの時分に親父さんの僚一にせがんで植えてもらったっていう例の藤棚だろ? 藤にもいろいろ種類があるが、紫色の花をつけるやつがいいっつってカネが是が非にと希望したとか」
 実はそうなのだ。それは鐘崎が中学に上がる少し手前の頃だったろうか。庭に椿と藤の花を植えたいと父の僚一にせがんだのだそうだ。
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