極道恋事情

一園木蓮

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紅椿白椿

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 その数日後、またしても辰冨がやって来て、今度は娘の旅行の護衛を頼みたいと言ってきた。二泊三日で京都だそうだ。
 これには鐘崎も清水もさすがに躊躇させられる。先日の買い物の時でさえあの調子なのだから、泊まり掛けの旅行などといったら何をしでかすか分かったものではない。
「そのご旅行にはご家族で行かれるのですか?」
 即断るのも申し訳なく思えて、鐘崎はそう訊いた。ところが返ってきた答えは案の定――だ。
「いえ、私と妻は大使館関係の用事でいろいろと雑務がございましてな。せっかく日本に帰って来ているというのに毎日何かと会食や顔合わせの用が入っておりまして……。あのにも不憫な思いをさせているものですから」
 一人で旅行に行かせるのは心配だが、先日のように鐘崎が同行してくれれば安心だと言う。是非にと頼まれるも、さすがに受けられることとそうでないことがある。鐘崎は恐縮しながらも丁寧に断りを口にした。
「たいへん申し訳ございませんが、当方には女性の組員がおりません。お嬢様お一人に男連中だけで泊まりとなると、如何に警護とはいえあまり望ましくないのではと思われます。そこで、女性のエージェントを派遣できる警備会社などでしたらご紹介をさせていただくことは可能です」
 例えば以前に仕事を組んだ六条女雛ろくじょうの めびなことメビィなどだったらちょうどいいのではと思う。彼女の事務所にはしょっぱなから嵌められたりとゴタゴタもあったものの、それがきっかけで今では向こうも非常に反省して、いい関係が築けている。メビィなら年頃も近いし体術面でもなかなかに腕がいい。まあメビィに限らずだが、他にも付き合いのある事務所ならいくらもあるし、鐘崎組からの紹介ならば充分に満足のいく対応で引き受けてくれるはずである。
 だが、辰冨にとっては納得がいかないようであった。
「……そうですか。私としては遼二君にお願いできればと思っておったので……他の方となるとあのも気を遣って寛げないでしょうし……」
 鐘崎が同行できないのなら意味はないといったふうに肩を落とす。
「ご要望にお応えできず恐縮です」
 鐘崎が丁寧に頭を下げるのを見て、これ以上は無理かと思ったようだ。
「残念ですが仕方ありませんな。その代わりといっては何ですが、こちらのお邸へ遊びに寄せていただくことは構いませんか? そういえば鐘崎さんのお邸にはたいへんご立派なお庭がありましたな? 実はあのもガーデンに興味を持っておりましてな。私の公邸の庭の水やりなども進んで行ってくれていたくらいでして」
 あの鞠愛が本当に自ら進んで庭いじりを手伝っていたとは思えないが、一度や二度水やりをしたというのは事実なのだろう。娘を良く見せたい辰冨の気持ちは痛々しいほどだが、まあ父親ならそれも当然なのか――。庭を見に来るくらいなら致し方ないといったところだろう。あれもこれも断るのではさすがに悪いかと思ってうなずくしかない。
「仕事で出掛けていることも多ございますが、組員はおりますので――」
 さりげなくそう言うも、『でしたら伺う前に遼二君がいらっしゃる日のご都合をおうかがいさせていただきます』と笑顔を見せる。どうあっても鐘崎がいる時がいいというのが見え見えだが、命の恩人でもあることだし、そのくらいは付き合うべきかと思う鐘崎だった。
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